
<阪神-巨人>◇21日◇甲子園
試合直前に大粒となった雨音を、いきなり切り裂く快音が響いた。初回、まだ誰も踏み入れていない白線整うバッターボックスに、増田陸内野手(24)は足を踏み入れた。3年ぶりの先頭打者だ。
向き合う阪神ビーズリーは甲子園で5勝0敗で過去2年負けなし。巨人戦は過去7試合の登板で4勝無敗、防御率0・65のGキラー。さらに昨季は右打者の被打率は1割1分2厘と、難敵を示す数字が並ぶ。
初球、140キロのカットボールを振っていく。惜しくもファウル。持ち味の積極性は1番でも変わらない。2球目も141キロのカットボールがきた。迷いなく振り抜くと、三遊間を鋭く抜けて左前打。一塁を回り、大きく両手をたたき、右人さし指を突き上げた。
開幕2軍も、4月22日に1軍昇格。代打を主に4月に4割2分9厘と安打を重ね、さらにその役割の重要性が増したのは5月上旬。6日に主砲の岡本が左肘靱帯(じんたい)損傷のけがを負って離脱すると、翌7日から代わって一塁でスタメン出場を重ねた。
5月も試合前まで3割3分3厘。9日のヤクルト戦(神宮)では1009日ぶりの今季1号ソロ、16日の中日戦(東京ドーム)で2号ソロも放った。22年に69試合で打率2割5分、5本塁打、16打点の成績を残したが、23年は極度の打撃不振で1軍出場なし。昨年も1軍出場4試合で無安打に終わった苦境を過去のものとする活躍を続ける。
「1日1日、対戦相手のデータをしっかり頭入れる。そういう努力はしている」。2軍を率いる桑田監督の講習を受けたことで、「より考えるようになった」と今も試合前にタブレットを見つめる。
今季2度の本塁打では全速力でホームベースを回る姿があった。「高校の時から速く走れって言われてたんで。流れが来るから、と」。闘志あふれる“新切り込み隊長”が、奮起求められる打線に流れを呼び込んでいく。【阿部健吾】