
親友の姿に自然と口角が上がった。7回表、三塁の守備に就く巨人中山礼都内野手(23)の視界に、中日高橋宏がベンチ前でキャッチボールを開始する姿が入った。中京大中京(愛知)の同級生は「一番仲がいい」存在で、この日は18・44メートルの距離で3打席にわたって真っ向勝負を繰り広げた。一瞬、目が合って、微笑を交わした。互いに充実感に満ちていた。
「本当に特別な存在。刺激は常にもらってる。対戦する時は、しっかり打ちたい」。2年ぶりの対決は、置かれた立場が特に気持ちを高めた。今季は開幕1軍も、打撃不振で登録抹消。降格後は2軍戦で打率4割5分をマークし、再登録可能の14日に再昇格。「2度と悔しい思いはしたくない」。5月3日DeNA戦以来の先発。打つしかない。
2回無死一、二塁の第1打席だった。「良い投手というのは分かっている」。昨季セ・リーグ最優秀防御率右腕。初球146キロカットボールにバントの構えを引いてボールにすると、サインは「打て」に変わった。「仕留める」。152キロ直球にスムーズにバットを合わせて中前に転がした。決勝点となる先制適時打。“親友打ち”で試合を決めた。
第2打席は遊ゴロ、第3打席は右飛に抑え込まれた。オフに食事にいけば、たわいもない話で盛り上がる。試合では会話はいらない。意地と意地をぶつけ、この日は中山が勝った。チームは5カードぶりの勝ち越しで、3位浮上に貢献も「今日の試合で満足はできない」。岡本が負傷離脱する中、結果を求める。「強い気持ちを持って全試合挑んでいきたい」。親友にも、スタメン争いにも負けられない。【阿部健吾】
◆高校時代の同級生対決 主なケースはPL学園の桑田真澄(巨人)と清原和博(西武)が日本シリーズで12打数7安打(3本塁打)、オールスターで8打数1安打(1本塁打)などがある。公式戦ではPL学園の野村弘樹(横浜)対立浪和義(中日=109打数35安打)、横浜の松坂大輔(西武)対小池正晃(横浜=4打数0安打)、広陵の野村祐輔(広島)対小林誠司(巨人=34打数10安打)、東海大相模の菅野智之(巨人)対田中広輔(広島=85打数18安打)、大阪桐蔭の柿木蓮(日本ハム)対藤原恭大(ロッテ=1打数無安打)など。