
阪神前川右京外野手(21)が「敵の塩バット」で再浮上する。直近の出場6試合で23打数1安打。復調のできっかけを求める中、巨人吉川尚輝内野手(30)に依頼して同選手の新品バットを入手。7日の試合でさっそく使用した。感触がいいため、中日戦(甲子園)が雨天中止になったこの日も練習で手にとった。上位陣は軒並み好調。6番打者が調子を戻せば、手のつけられない打線が完成する。巨人が負けたため、単独首位に浮上した。
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中日戦が中止になり、前川は室内練習場でじっくりと打ち込んだ。右へ、左へライナーを飛ばす。1球も無駄にしてなるものかと気迫がみなぎった。引き揚げる際、白木に黒のツートンカラーのバットを大事そうに抱えていた。このバットは2日前に手元に届いたばかり。「送り主」はライバル巨人の吉川だった。
「どんなバットを使っているのかなと前から気になっていて、お願いしました。すごく感覚がいいです」
悩んでいた。直近の出場6試合で23打数1安打。ゆうに3割を超えていた打率も2割5分1厘に。4日のヤクルト戦(甲子園)では2度のチャンスで凡退。「自分が打っていれば勝っていた」と責任を痛感した。
東京ドームでも思うように結果が出ない。6日の巨人戦は4月1日以来、2度目のスタメン落ち。同期入団で捕手登録の中川に「左翼」の座を譲った。その中川は好守連発、プロ初安打もマーク。前川の尻に火がつく結果となった。
必死にもがく中、自ら動いた。吉川と親交の深い木浪に頭を下げ、7日の試合前に渡された。フリー打撃で感触の良さを実感すると、スタメン復帰した試合でも全打席で使った。
1四球無安打と目立った結果は出なかった。それでも「バットを持っている感じがあって『構えている感』がめっちゃあります」。ヘッドの重みを感じられる形状が自分にフィットした。今後については「試行錯誤しながらですね」と未定ながら、再浮上のきっかけにはなりそうだ。
近本、中野、森下、佐藤輝、大山と続く上位打線は流れがいい。とくに森下、佐藤輝の3、4番が得点源になっている。後ろに控える6番前川が本来の力を出せれば鬼に金棒。吉川は打率がリーグ上位と好調。敵から送られた貴重な“塩”は無駄にしない。【柏原誠】