
45歳の偉大なおじさんが21歳下のルーキーに投げ勝った。ヤクルト石川雅規投手(45)が6回6安打1失点。阪神ドラフト1位伊原陵人投手(24)との左腕対決を制し、今季2勝目を挙げた。新人から24年連続勝利の偉業を達成した4月9日と同じく甲子園の阪神戦で103球の粘投。主力に故障者が相次ぐ中、24年目のベテランがチームの連敗を3で止めた。
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“21歳差”対決を制した。心地よい疲労をまといながら、石川が勝利のハイタッチを交わした。高津監督から、すれ違いざまに左肩をポンとたたかれた。「グラウンドに立つと年齢関係ないですけど、伊原投手もすごくいい投球をしていたので、僕も引っ張られた。何とか先に降りないようにという思いがありました」と静かに汗を拭った。プロ入りした02年春、阪神伊原はまだ1歳。その虎のドラ1左腕に投げ勝った。
経験値を生かしつつ、強気に攻めた。同点の6回2死一、三塁、前川に結果球を含め4球中3球、内角シュートを選択。右飛に封じた。プロ2年目だった03年に生まれた左打者に対し、「いい風が吹いていたので、引っ張られても、あまり長打はないだろうとの思いで投げました」と強い浜風を利用。詰まらせた上、打球は右翼から中堅方向に吹く風に押し戻された。
ピンチを脱すると、直後に援護が待っていた。7回1死一、二塁の好機で打順が巡ってきた。自身の代打で打席に向かう増田にベンチから「任せた」と一声。思いを託した後輩が決勝打を放ち、白星が付いた。
キャンプでは“104歳バッテリー”で初心を思い起こした。59歳の古田敦也臨時コーチにブルペンで投球を受けてもらい、ルーキー時代を回顧した。当時、何度も言われたのが「けがをしないのが大事だぞ」。その心構えは「僕自身ぶれずに大事にしているところ」。今もグラウンドの外でも時間があれば、ストレッチで体をほぐす。初めてブルペンで古田氏に受けてもらったボールは今も、秋田の実家に飾る。ルーキー時代の経験があり、大きな故障のない24年間がある。
チームの連敗も3で止めた。「投げる試合は全部勝つ気持ち。いろいろなことは考え過ぎず、自分の投球を心がけ、連敗が止まって良かった」。2回途中6失点だった4月23日広島戦から修正し、役目を全うした。チームは村上、塩見、長岡ら主力が戦列を離れる。苦しい戦いが続く中、球界最年長の左腕が頼もしく通算188勝目を積み重ねた。【上田悠太】
▽ヤクルト高津監督(石川の投球に)「チームが連敗中で、いろいろな重圧もあったと思うが、素晴らしいピッチングだった。グッと歯を食いしばりながら、我慢しながら投げた姿は本当に褒めてあげたい。非常に大きなゲームだった」