
<センバツ高校野球:沖縄尚学6-3青森山田>◇19日◇1回戦
昨春ミラクル勝利の再現とはならなかった。青森山田は沖縄尚学に3-6で敗れ、初戦で敗退した。0-1の5回に一挙5失点でリードを許した。0-6の6回から3番手でエース下山大昂投手(3年)が登板し、3回無失点。打っては7回2死満塁で2点適時打を放つなど意地を見せたが、逆転はならなかった。
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導かれるように打席が回ってきた。3点を追う9回2死走者なし。下山の打球は相手中堅手のグラブに収まった。「自分が打って、次につなげたかったです」と悔やんだ。昨春のようなミラクルは起きなかった。
それでも、意地は見せた。虎谷、菊池統、下山の3投手リレーが青森山田の勝利パターン。練習試合でも3人で計36回を投げ、2失点と好感触を得ていた。だが、この日は5回までに虎谷、菊池統で6失点。旗色が悪い中、下山は6回から兜森監督に「エースとして任せたぞ」と送り出された。その思いに応えた。真っすぐは自己最速タイの144キロをマーク。変化球も織り交ぜ、緩急で3回1安打2奪三振無失点。エースナンバーにふさわしかった。
バットでも応えた。「任されたからにはピッチングだけではなく、バッティングでも引っ張っていこうと思いました」と、7回2死満塁で2点適時打を放った。後も続き、この回3得点。追い上げムードが漂い、1年前の再現を期待させた。その昨春センバツ、チームは2回戦で広陵(広島)に延長10回タイブレークの末、サヨナラ勝ちで8強入り。初戦の京都国際戦に続く2試合連続サヨナラ勝利だった。
その光景を、下山はボールボーイ席から見ていた。学校初となるセンバツ8強も、ベンチには入れなかった。「1年前はすごく悔しい思いをしました」が正直な気持ち。それを糧にエース番号をつかみ取った。成長には続きがあるはずだ。昨夏から甲子園では17回無失点。「ここに来ると楽しんで投げることができます」と好調のわけを語った。「この負けを忘れず、また甲子園という舞台で試合をつくって投げきりたい」。一回りも、二回りも大きくなって、また帰ってくる。【木村有優】
◆下山大昂(しもやま・だいこう)2007年(平19)5月5日生まれ、青森県出身。三輪BBCで野球を始め、五所川原第三中野球部に所属。青森山田では2年春青森大会で初のベンチ入り。最速144キロ。身長170センチ、体重81キロ。右投げ右打ち。趣味は料理。
○…初の甲子園マウンドはほろ苦かった。3投手による「勝利パターン」を務める虎谷朔ノ助投手(3年)は昨夏はベンチ入りも、3人のうち唯一、出番がなかった。「気持ちが高ぶりすぎました」と先発で3回1失点。「歓声や応援とか甲子園の景色を目に焼き付けたので、夏にまた戻ってきて、次こそ勝ちたいです」と前を向いた。
○…合宿の合間をぬって、強豪サッカー部が応援に駆けつけた。全国大会の応援はごくまれ。正木昌宣監督(43)は「本当に貴重な。私も初めて来た。行きたい場所だったので良かったです」と野球の聖地をかみしめながら「1、2年の野球部のクラスはサッカー部のコーチが担任なので、頑張ってほしいよね」とエールを送った。青森山田イレブンも熱い声援を送り、ナインの健闘に刺激を受けていた。