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雪国の国立大に隠れた“逸材”がいる。関甲新1部リーグに所属する新潟大の田西誓(たさい・ちか)捕手(3年=小松)が、今後の進路を「プロ1本」に絞ることを明かした。2年秋に捕手、3年春には三塁手としてベストナインを獲得した、まさに多彩な男。高い打撃力を売りにするスラッガーは、初の新潟大からNPB入りへ。大学ラストイヤーに全てをぶつける。
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田西は1度きりの夢を追い続ける。「プロ1本で決めました。育成でも何でもNPBの世界に。出す方向でいます」と現時点での今秋のプロ志望届提出方針も明言。「今しか、できんことじゃないですか。失敗もできるうちに、やれることをやりたいんです」。言葉に力がこもった。
まさしく多才な男だ。2年秋には捕手として、後にドラフト2位で日本ハム入りした進藤勇也(22=上武大)を差し置いて、ベストナインを獲得。3年春は三塁手に挑戦しながらも、最多安打(17安打)の打撃タイトルとともに、打率5割4分8厘とリーグ2位の好成績を残した。別ポジションで2季連続のベストナインをかっさらった。昨秋には独立リーグのスカウトも視察に訪れるなど、注目もされつつある。
「(3年)春の成績が良くて。上を目指す1つのきっかけになった」
そして、もう1つ。弟の称(とな)内野手(2年)の存在もきっかけだった。小松大谷の「3番三塁」として、昨夏甲子園で16強入り。兄と同じく高い打撃力を武器に、弟も今秋のドラフト候補に挙がる。「あんだけ活躍されると…。負けられないと思ったし、そこから(プロを)意識しました」。自分の残した数字以上に、弟の活躍に心が震わされた。
プロには「捕手で勝負したい」と心に決め、オフ期間はさらなる打撃強化を図っている。「長打、特に本塁打にはこだわりたい」。リーグ通算4本塁打のパンチ力を生かした「打てる捕手」としての存在価値を高めていく。
「当時は全くプロとか考えなくて」と1年間の浪人をへて、新潟大農学部に進学。既に卒業必須単位は履修済みで、残すは卒論だけだ。大学ラストイヤーは「野球に全力を尽くす」覚悟でいる。プロ入りとなれば同大史上初。それでも「国立から、とか関係ない。だいぶ厳しい世界ではあるけど、可能性がある限り勝負したい」。田西の運命の1年が始まる。【大島享也】
◆田西誓(たさい・ちか)2002年(平14)4月27日生まれ、石川・小松市出身。今江小3年から今江野球クラブで始める。松陽中では軟式野球部。小松高では3年夏に独自大会で16強。憧れの野球選手は同郷の巨人喜多隆介捕手。好きな芸能人は今田美桜。181センチ、92キロ。右投げ左打ち。