<前編>
打点の鬼になる! 阪神大山悠輔内野手(30)が新たなに任される打順「5番」に懸ける覚悟を語り尽くした。キャンプ地の沖縄・宜野座で虎のレジェンドOB鳥谷敬氏(43=日刊スポーツ評論家)と対談。前編ではすでに藤川監督から打順について通達を受けた事実を明かした上で、打点増と自身初の全試合フルイニング出場を個人目標に掲げた。2年ぶりのV奪回へ、3番佐藤輝、4番森下の後輩勢をどっしり守り抜く。【取材・構成=佐井陽介】
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鳥谷氏(以下、鳥) 今日はよろしく! 早速だけど、オフはFA宣言した上で残留。どんな感情を最優先したのかな?
大山(以下、大) よろしくお願いします! やっぱり今のチームメート、監督、コーチの皆さんと優勝、日本一になりたい気持ちが強かったです。裏方の皆さんからも「残ってほしい」と言葉をもらいつつ、僕の決断を応援するとも言ってもらえた。裏方さんのためにより頑張りたいと思えたのも1つの要因。そこが一番なのかなと思います。
鳥 FA残留後の心境の変化はありますか?
大 より覚悟が決まったというか。自分がしっかり悩んで決断したので、より一層気持ちが強くなりました。責任感もより高まったのかなと思います。
鳥 変化と言えば、藤川新監督になってチームの雰囲気は変わりましたか?
大 藤川監督はコミュニケーションをすごく大事にされる方なので、いろんな会話が増えてきているのもあります。いい距離感になってきていると思います。
鳥 監督とは打順についても話をしましたか?
大 はい、しました。監督から直接「5番で行きたい」とは言われました。監督からは「打点にこだわってもらいたい」という話もありました。
鳥 5番という打順について違和感はない?
大 それはないですね。もう5番で。(佐藤)輝明だったり森下が前を打つことも聞いている。その2人に自分のやりたいように伸び伸びやってもらうためにも、僕が5番でしっかりやらないといけない。より一層いい意味でのプレッシャーも感じているので、そこもプラスに変えていきたいなとは思っています。
鳥 大山選手自身、4番に座り始めた頃は後ろを打つ福留(孝介)さんに助けられていた。
大 僕が福留さんにやってもらったような立場になりたいなとはずっと思っていました。まだまだ実績も経験も全然ですけど、少しでも近づきたいというのはあります。
鳥 となると、一番こだわりたい数字は打点になるのかな?
大 やっぱり打点ですね。チームの勝敗に一番直結するものだと思っているので。打点にこだわっていきたい。勝利打点だったり、そういう打点を増やしていきたいですね。
鳥 そういった理想像に向けて、今年はどんな取り組みをしていますか?
大 打点を挙げるパターンを今まで以上に増やしていきたいと思っています。犠牲フライだったり内野ゴロだったり、どういう打ち方をすればその打球になるのか、より細かく見つけていきたい。バットの握り方なのか、バットの出し方なのか、足の踏み出し方なのか。そういった細かい部分をキャンプで見つけていきたいですね。
鳥 じゃあ色紙に目標を書いてもらおうか。300打点とか(笑い)。これまで自己最多は何打点?
大 22年の87打点ですかね。
鳥 じゃあ104打点にしてもらおうか! 自分の現役時代の最多打点。これは超えてほしいな。あとは…チームとしての目標は日本一、優勝になると思うけど、個人的に達成したいポイントはありますか?
大 全試合にフル出場したいですね。全試合出場はあるけど、全試合フル出場はまだない。そのためにもケガをしないように。もちろん成績も残さないといけないし、代走を出されないように体のキレ、スピードも上げていかないといけない。そういう意味でも全試合フル出場は目指したいと思っています。(後編に続く)
▼阪神の歴代5番打者 2リーグ後、先発5番で最も多く出場したのは62~72年に通算718試合の藤井栄治。62年は41試合、64年は81試合で先発し、ともにリーグ優勝に貢献した。85年は岡田彰布が124試合で5番を務め、34本塁打100打点を挙げ21年ぶり優勝の主役の1人となった。岡田は5番で通算569試合に先発、球団最多の109本塁打、339打点を挙げている。05年V時の今岡誠は全146試合で5番を任され、4番金本知憲の後でシーズン歴代3位の147打点をマークした。日本一になった23年は佐藤輝が112試合で5番を打ち、20本塁打82打点で貢献した。昨年は8選手が務め、最多は佐藤輝の55試合だった。
◆大山の今春キャンプ 攻守で充実の日々を過ごしている。打撃練習では連日、フリー打撃などで柵越えを連発。この日も51スイング中6本の柵越えを放つなど、快音を響かせた。一塁守備でも第1クール最終日の4日には木浪、中野らと早出特守を敢行。約30分間で90球、田中内野守備走塁コーチのノックで汗にまみれた。「1つ1つの行動を意味のあるものにしたい」。真摯(しんし)な取り組みで、レベルアップに励んでいる。