初の1軍キャンプに抜てきされた日本ハム育成3年目の山口アタル外野手(25)が、オフの成長曲線をマンダラチャートに刻んでいた。カナダ生まれの「フィジカルモンスター」は、左膝の大ケガなどに苦しんできた。このオフはコンディションを整えるために私生活から見直し。支配下昇格、そして1軍の選手になるためには何が必要か-。熱い気持ちを支える緻密な計画を書き込んだ81マスを明かした。
◇ ◇ ◇
山口が中心に据えたテーマは「1軍で戦える選手になる」だった。マンダラチャートは、ドジャース大谷翔平投手(30)が花巻東(岩手)時代に取り組んでいたことで知られる。日本ハムでは育成選手に課され、シーズンオフ前などに夢への道筋を整理する。山口は「できるだけ2軍にいたくない。1日でも早く1軍に上がるために、2月のキャンプで絶対に印象を残したい」と力強く言葉を並べた。
大きな夢には日々の積み重ねがモノを言う。ケガに悩まされてきた山口にとって「健康」は必須だった。そのためにも、1日5杯飲むこともあったコーヒーは「1日2杯まで」。目標の意図は「カフェインを取り過ぎたら睡眠に良くないし、体が(カフェインに)慣れると、カフェインの効果が弱くなる」と自身で学んだ。その他にも「睡眠時間8・5時間以上」など、日常生活に関する目標が多く並ぶ。その心は「やっぱり体が大切なので、ずっとケガしてるから」。1年目の23年7月には左膝の前十字靱帯(じんたい)再々建術を受けた。身体能力を期待されながら、本領を発揮できなかった歯がゆさからの決意だった。
キャンプインを控え、オフ用のチャートに書き込んだ生活やフィジカルの課題はクリア。積極的に外部指導を仰ぎ、技術もアップデートした。「ティー(打撃)のルーティンがわかってきた。また2月に入って、1軍で戦えるようにするにはどうすべきかを考えている」と、1軍キャンプへ向けて新たな道しるべを作り上げている。
沖縄・名護では、積み重ねてきたすべてが通用するか試される。野球人生における分岐点にも「ワクワクする。もう今年はクビ(戦力外通告)か支配下って思ってるから」と、自らの可能性に感情が高ぶった。ついに本領発揮。山口が堂々と背番号2ケタの集団に飛び込む。【黒須亮】
◆山口アタル(やまぐち・あたる) 1999年(平11)5月28日、カナダ・バンクーバー出身。父は日本人、母はカナダ人。ブリタニア高から、アメリカのカンザス州にあるコルビー・コミュニティー・カレッジでプレーし、テキサス大タイラー校中退。球団ウェブページのファンコーナーに自身のプレー映像を送り、22年育成ドラフト3位で入団した。179センチ、89キロ。右投げ右打ち。