ドジャースが、ロッテからポスティングされた佐々木朗希投手と正式契約を結びました。当初から本命視されていたドジャース入りとなり、メジャーでは本来のエースナンバーとされる背番号11に決まりました。1929年、メジャーで初めてヤンキースが背番号を採用。当初は野手が1桁、投手が10番台の背番号を付けました。ヤンキースはレフティ・ゴーメッツ、ジャイアンツはカール・ハッベル。後に殿堂入りする大投手が11をつけ、エースナンバーと位置付けられました。
ドジャースは佐々木にとって最高のチームと言えます。2013年以来12年連続プレーオフ出場、うち世界一2度の常勝軍団。1995年、日本人大リーガーのパイオニア野茂英雄以来、日本人選手の歴史があります。ロサンゼルスは米本土で最大の日本人コミュニティーを誇り、気候も抜群です。
そのうえ、62年に本拠地ドジャースタジアムが開場して以来、投手有利な球場の特性を生かし、伝統的に投手王国を築いて来ました。また、メジャー30球団中断トツの18人も新人王を輩出。昔から若手育成にも定評があります。
しかしながら、近年は投手陣に故障者が続出し、2年続けて162イニングの規定投球回に達した投手がいませんでした。さらに、昨年はチームが98勝したにもかかわらず、10勝以上を挙げた投手が不在。先発投手はブルペンゲームを含め、実に16人も起用するありさまでした。
そこで今年はさらに先発投手陣を補強し、デーブ・ロバーツ監督は、けがのリスクも防ぐため先発6人ローテーションを示唆しています。大谷翔平投手が右肘手術から復帰を目指し、昨年山本由伸投手が18試合の先発で1度も中4日の登板がなかったことを考えても、理にかなっていると言えます。
現時点で先発候補はサイ・ヤング賞2度の新戦力スネルを筆頭に、大谷、山本、タイラー・グラスノー、佐々木にトニー・ゴンソリンの6人。さらにダスティン・メイ、ランドン・ナック、エメット・シーハン、ボビー・ミラーら。それに現在FAのクレイトン・カーショーと再契約すれば、12人ぐらいとなります。
したがって、ドジャースのアンドリュー・フリードマン編成本部長が「先発投手に積極的に余分に休養を与え、間隔を空けて起用し、うまく管理してきた」と言うように、今季も余裕を持ってローテーションを回すことが可能です。これが佐々木にとって、最大のメリットと言えそうです。
また、ドジャースは、佐々木をいきなりエース級と考えていません。まずは先発5番手ぐらいで試しながら使える余裕があります。それによって、最初から多大なプレッシャーに押しつぶされることもなく、登板間隔に注意しながら投げることができます。
フリードマン氏は「あらかじめ登板数を決めない」と言いましたが、実際はパイレーツのポール・スキーンズが1つの目安になると思います。23年7月にドラフト全体1位指名でプロ入り。昨年23試合で11勝3敗、防御率1.96の成績を収め、ナ・リーグ新人王に輝いた22歳の剛速球投手です。
昨年スキーンズは中4日での先発登板が1度もなく、133イニング、マイナーでの成績を合わせても169回1/3イニングだけ。1先発平均5.8イニングで、100球以上投げたのは9試合だけ。そのうち最多でも107球でした。
ロッテ時代の佐々木は、22年に最多の20先発で129回1/3イニング。10月のポストシーズンを見据えると、レギュラーシーズンは同じぐらいの先発登板と投球回が予想されます。
いずれにせよ、ドジャースは先発ローテーションの位置付けといい、先発候補が10人以上という豊富さで酷使されない状況といい、佐々木が成長する上で最適なチームを選んだと言えます。【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)