阪神近本光司外野手(30)が13日、パワースポットでタイトル奪取を誓った。5年連続となる鹿児島・沖永良部島での自主トレを公開した。同地で自主トレを開始した21年から4年連続で3つのタイトルを獲得。その要因はシーズンの始まりの地に住む子どもたちへの熱い思いにあった。島からの後押しを力に変え、今季も大活躍でタイトルを持ち帰る。
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大自然の中で近本の笑みがこぼれた。
「(沖永良部島は)地元の人との交流がありますし、のんびりしてて自由にできる。僕の中では理想的な離島ですね」
19年入団から2年連続で盗塁王を獲得。同地で自主トレを開始した21年からは4年連続でゴールデングラブ賞、ベストナインを加えた3つのタイトルを獲得し続けている。日々勝負の世界で戦う重圧を、離島の地で脱ぎ捨てることで、新たなシーズンへ向けて再び走り出すことができる。
5年連続で足を運び続ける理由がある。「離島のため、子どもたちのためにっていうのが自分自身の力になる。島の子どもたちに良い刺激を与えたい」。今季もタイトル獲得で凱旋(がいせん)帰還することが目標の1つだ。「僕自身ここに野球だけをやりに来たわけじゃない。島の人や子どもたちと交流することは野球のスキル以上に大切なことだと思っています」。シーズンを戦い抜くための活力を島から受け、大きな力に変える。
だからこそ近本なりの思いがある。「ここではユニホームも着ないですしスーパーやごはん屋さんにも普通に行く。島の子どもたちには『思ったより大きくないな』とか『プロ野球選手って普通の人なんだな』ということを伝えたいんです」。憧れの存在としてではなく「人対人」で接するからこそ後押しを力に変えられる。
今季は個人として記録ラッシュにも期待がかかる。通算1000本安打まで残り67本、200盗塁も残り32と迫るが「今の結果はまったく気にしていない。長い目で見て判断していく」と気負いはなさそうだ。近本にとってまさに力が湧き出るパワースポット。甲子園から約1450キロ離れた離島の地へ、今季も活躍を届ける。【山崎健太】
◆沖永良部島(おきのえらぶじま)鹿児島市から南へ552キロ、北緯27度線の上に位置する、隆起サンゴ礁の島。和泊(わどまり)、知名(ちな)の2町があり、人口約1万1000人。年間平均気温22度で、エラブユリやスプレーギクなどの栽培も盛ん。地底には数多くの鍾乳洞があり、「昇竜洞」は鹿児島県の天然記念物に指定されている。また、若き日の西郷隆盛が流罪とされたこともあり、その苦境で自らの思想「敬天愛人」を完成させたとされる。
○…近本が理事として参画している一般社団法人LINK UPの企画として沖永良部島の子どもたちとのランチ会を開催した。昨年同地の子どもたちをリーグ戦に招待する計画をしていたが、台風の影響で実現しなかった。その代替企画として食事をしながら学校生活や将来の夢などについて語り合った。近本は「あの時、近本にこういうことしてもらったなとか大人になった時に思ってもらえたら」と振り返った。