2025年はドジャースの大谷翔平投手にとって、今世紀初となるワールドシリーズ連覇が目標です。本人もどんな個人成績や記録より「連覇したいというのが一番」と語っています。
かつて、1901年からフィラデルフィア・アスレチックスで50年間も指揮を執った知将コニー・マックが「1度や2度ペナントを勝ち取るのではなく、3年連続で優勝してこそ真のチャンピオンだ」と言いました。メジャーの長い歴史において、そんな真の王者はいくつもありません。
最も有名なのは49~53年のヤンキースで、不滅のワールドシリーズ5連覇を達成しました。最近では98~2000年に、同じくヤンキースが3年連続で世界一に輝きました。ちょうど、元ロッテの伊良部秀輝投手が活躍した時代です。
しかし、今世紀に入って連覇したチームは1つもありません。04、07、13、18年とレッドソックスが4度も世界一に輝き、ジャイアンツに至っては10、12、14年と5年間で3度も世界一になりながら、3年どころか2年連続で世界一になったチームすらありません。なぜなら、世界一への道のりが、長く険しくなっているからです。
昔はア、ナ両リーグとも優勝すれば、あとはワールドシリーズで勝つだけでした。それが69年両リーグとも球団数拡張に伴い、東西2地区制を導入。各地区優勝チーム同士でプレーオフ(5回戦制)を行うようになりました。85年からプレーオフが7回戦制となり、94年には両リーグともさらなる球団数拡張に伴い、東、中、西の3地区制を採用。3つの地区優勝チームにワイルドカードも含めた地区シリーズ(3回戦制)を新たに増やしました。
さらに12年から、両リーグともプレーオフ進出チームを5球団に拡大しました。各地区優勝チームを除いた勝率上位2球団が、ワイルドカードゲームを開催。22年にはポストシーズンの出場チームを10球団から12球団に増やし、ワイルドカードシリーズ(3回戦制)として行うようになりました。それによって、ワイルドカードシリーズに始まり、地区シリーズ(5回戦制)、リーグ優勝決定シリーズ(7回戦制)、そしてワールドシリーズ(7回戦制)と、最大22試合で13勝しないと世界一にたどり着けなくなりました。
その結果、ブレーブスは94年の長期ストライキによるシーズン打ち切りを除き、91~95年までプロスポーツ史上最長の14年連続で地区優勝したにもかかわらず、世界一に輝いたのは95年の1度だけ。18~23年に6年連続地区優勝もしましたが、世界一は21年の1度だけでした。
17年以降、アストロズは8年連続でプレーオフに進出しています。うち7度の地区優勝、4度のリーグ優勝と黄金時代を築き、ワールドシリーズも17、22年と2度制覇。ただし、17年はサイン盗み騒動があり、実質1度だけとも言えます。
ドジャースは13年以降、12年連続でプレーオフに出場しています。うち11度も地区優勝、4度もリーグ優勝。20年のコロナ禍による短縮シーズンを除き、19~23年まで4年連続100勝以上と圧倒的な強さを発揮しています。それでも、昨年、ようやく14年間で4年ぶり2度目の世界一になったぐらいです。
そこで大谷も「それだけ特別な難易度だと思っていますし、そこが一番やりたいこと」と、新たな野望を抱いています。悲願の世界一を達成しても歩みを止めず。今年は1918年レッドソックスのベーブ・ルース以来、投打二刀流での世界一を目指します。【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)