<仙台育英・須江航監督インタビュー4:最終回>
謹賀新年。日刊スポーツ東北6県版ではお正月特別企画として、18年から仙台育英(宮城)を指揮する須江航監督(41)のインタビューを全4回にわたりお届けします。
22年夏には東北勢初となる甲子園優勝、翌夏は同準優勝に導きました。昨年7月の新チーム始動からここまでの取り組みを始め、3月に卒業を控える3年生へのメッセージや競技人口減少問題についても語ってもらいました。【取材・構成=木村有優】
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仙台育英(宮城)・須江航監督(41)の新春インタビュー連載、最終回は野球が直面する競技人口減少の問題について聞いた。
夏の甲子園は1915年に第1回が豊中グラウンドで開催され、昨夏で106回を迎えた。1世紀を超える歴史を誇るが、日本高野連の加盟校数(硬式)は05年度の4253校が24年度は3798校、部員数は16万5293人が12万7031人。20年で学校は約10%、部員は約25%も減少した。休部や廃部、連合での大会出場など、取り巻く環境は年々厳しくなっている。
少子化だけが原因ではないと、須江監督は考える。
「野球そのものの人気がなくなっているわけではなく、野球の楽しみ方や理解、子供に野球をやらせると『こんないいことがある』ということを伝えられていないのが問題だと思います。子どもたちに対して罵声や怒声とかではなく、競技への向き合い方、そもそものルール、小学校のうちにどんなことをやっておくと中学校や高校で力を発揮できるとか。そのまま野球を頑張ってもいいし、中学校から違うことしたいなと思った時にやっておくといいんだよと。小学校の時に野球をやれば、考える力がつくよとか、お友達との協調性が身につくよとか。スポーツの入り口として、教育の入り口として、子どもたちの心身を育んでいく入り口になると思います。これらの説明をしっかりとする運営をしていけば、今までと違う層も興味を示し始めてくれると思います」
「入り口」について、詳しく聞きたい。
「競技としては難しすぎるんです。捕る、投げる、打つ、走るというほとんどの運動動作が入っているので。しかも、投げるというのは運動動作の中で最も難しいことですから、その投げることも含めて、1つのスポーツで、ここまで多くの筋肉を使うものはない。ということは、小学校のうちに野球を経験しておけば、中学でどんな競技にも転向できるわけです。蹴るということに関しては野球はないですけど、体をさばく、タイミングを合わせる、走るということは野球に含まれてますから。イコールにはならなくても、小学校で野球をやっておけば、バドミントン、バレーボール、サッカー、バスケットなど、子どもの興味関心や長所に合わせてなんだって転向できます。スポーツをやる醍醐味(だいごみ)、運動特性を考えたら(野球は)素晴らしいスポーツだと思います」
難しいからこそ、入り口に適しているという逆転の発想だった。ただ、環境の変化は少子化にとどまらない。中学の部活動を、学校からクラブチームなどへ移す地域移行が進む。
「部活動と切り離した時にどっちに出るか。結局はオールクラブチームってことなので、なんとなく始めてみようぜっていう子が減っちゃうのを懸念しますね。頑張りたい子はシニアやボーイズでやってるわけですから。そうじゃなくても、なんとなく中学校から野球やってみようかなとか、そこまで自分の人生をかけて野球やろうなんて思ってないけど野球が好きという層の子がいなくなっちゃうのかなと思います。上を目指すような頑張りたい子のチームだけではなく、どの年代であっても手軽に始めることができて、楽しんでプレーできるような環境も提供するなど、野球をもっと身近なものにすることが大事かなと思います」
中学の指導経験もある須江監督の率直な意見だった。【木村有優】(おわり)