女子硬式野球クラブチーム「阪神タイガースWomen」の旬の話題を取り上げる連載。今回は本格派左腕として活躍する植村美奈子投手(31)にスポットを当てる。平日は警備会社で働き、二足のわらじを履く左腕が、生活ぶりや女子野球普及への思いを語った。【取材・構成=山崎健太】
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植村にはマウンドに立ち続ける理由がある。「少しでも女子野球選手が野球を続けられる世界を作っていけたらと思う」。21年のチーム発足とともに入団し、今季は投手リーダーとして若手投手のまとめ役を務めた。マウンドに上がれば闘争心むき出しで打者に向かっていく。
実績も経験も兼ね備えた植村だが、グラウンド外では野球とは違う顔持つ。21年から平日は警備会社に勤務し、書類の申請業務などを担当している。
「1年目は覚えることがたくさんあって大変でした。でも野球に支障が出ないように考慮してくださっているので感謝ですね」
その生活ぶりは多忙を極める。平日は毎朝5時に起床して職場に向かい、週3日のチーム活動日は、退勤後に約2時間練習に励む。午後9時ごろ帰宅し、家事を済ませて就寝する。息つく間もない生活を送るが、植村は充実した表情を見せた。「本当に野球が好きなので。大変だけど好きだから続けてきた。練習前はいつもわくわくします」。平日は仕事に追われる毎日でも、常に頭の片隅には野球がある。「仕事をやっている時は集中してるんですけど、昼休憩の時は『今日の練習何しようかな』とか、つい考えてしまいます」。
使命感に近い思いがある。「やっぱり仕事ありきの野球なので。後に続く後輩たちのためにもしっかり仕事して、その上で野球も頑張りたい」。後輩たちの道標になるため、まだまだマウンドに立ち続ける。