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【少年野球特集】軟らかくするだけがグラブの「型付け」じゃない! 竹内職人に聞いた6割仕上げ


グラブの型付けは、硬い新品のグラブを柔らかくし、使用者の手に合った形に調整する重要なプロセスです。この作業は、グラブ専門職人である竹内佑さんが手がけ、高い技術で需要を担っています。竹内さんは、手のサイズやプレイスタイルに基づき、ひもを抜いて再編するなど、依頼者の希望に沿うようにグラブを仕上げます。グラブの型付けは、革の状態を考慮しながら、スチームや水、手もみでの調整が行われ、徐々に使用者に馴染ませていく方法が推奨されます。竹内さんのグラブは、硬さをある程度残しながら使い方のガイドとなるよう設計されており、選手が自分の手に合った形に育てていくことが重要とされています。竹内さんは野球を長く続けてもらうことを目指し、グラブ型付けを「守備の方程式」として選手の成長をサポートしています。

今回、仕上げ作業で型付けをしたATOMS026型(左)。同社で最も人気モデルの内野手用。左手に持つのは竹内さんの監修ブランドTakeのTY6型。捕球面の広い内野手用

新しいグラブやミットを購入すると「型付け」が必要です。お店に依頼する人、自分で施す人などそれぞれですが、そもそも「型付け」って何だ? 革が柔らかくなればいいんじゃないか? プレーを左右する「型付け」の考え方を、グラブ仕上げブランド「REAL FOAM」の竹内佑さん(31)に聞きました。新しい相棒を手にする前に、参考にしてみてください。【取材・久我悟】

◆グラブの型付けメモ 一般的にスポーツ店や野球ショップで新品ではめても硬くて開閉できないグラブを、動くように処理したり、希望の形に調整すること。手でもんだり、木づちのようなパンチャーや機械でプレス。スチーム器で革を軟らかくする場合もある。

多くがその場で対応して、購入即持ち帰れるが、水や湯につけて軟らかくしてから成形するなどした場合、乾燥やオイル処理など時間が必要なため1~2週間、店が預かる場合もある。グラブと別料金が発生するが、サービスで「型付け無料」とする店もある。依頼せず、すべて自力でなじませてもいいが、メーカーやグラブによっては、専門家の処理が必須なものもある。

【クセや傾向確認】

「REAL FOAM」の竹内さんは7年間、都内の人気野球ショップに勤務して型付け技術などを身につけた。独立した現在は「グラブ仕上げ職人」として、昨秋のドラフト会議で上位指名された野手を含む、プロ、社会人、大学野球など多くの選手のグローブやミットの型付け、型直し、修理などを手掛ける。2年前から野球メーカー「ATOMS」が東京・浅草橋に構えた東京店店長としても、接客をしている。

依頼を受けると、手のサイズとともに、これまで使ってきたグラブと、実際にはめた形、動きなどから依頼者のクセや傾向を確認、野球をやる頻度などを聞き取って作業する。新品の構造と依頼者の希望を擦り合わせて、仕上げていく。

【ひもを抜き、組み直す】

作業は1度ひもを全部抜き、依頼者の希望や傾向に合わせて、組み立て直すことから始まる。工場で見栄えよく組まれていても、依頼者の手に合わなくては意味がない。力加減や角度など、ひもの通し方だけでグローブは形が変わるという。組み直すと、革の状態や天候に合わせてもんでいく。スチームや水、湯を使う場合もあれば、手もみだけの場合もある。

 竹内さんが仕上げた直後のグローブをはめたことがある。硬くて開閉は少しだけで、試合で使うには程遠い状態だ。依頼があればさらに動くようにするが、特に中学生や高校生は「60~70%ぐらい」で渡している。革のダメージを考慮して、ハンマーなどでたたく回数も少なくするという。

【使い方のガイドのみ】

「ある程度硬さを残して、使い方のガイドになる動きだけつけてます。そこから打球の角度に合わせて、できるだけノックやゴロ捕球をして自分の手の形になじませて欲しいです。硬いグラブで捕球するには、力を抜いて体全体で受け止める必要があるので、その状態でなじませるのがいいんです。手の形は千差万別ですし、革製品だから使ううちに状態が落ちていきます。高価な買い物ですから、100%が長く続いて落ちていくのが理想。毎日練習する高校野球なら、1カ月ぐらい使ってもらって100%にするイメージです」

【例えるなら「虫捕り網」】

トップ選手のグラブを触るうち「自分の経験してきた野球と別競技だ」と思うようになったという。

「上手い人は指をふわっと使っています。曲がるべき関節が曲がるのが軟らかいのであって、革がふにゃふにゃになったのとは違う。グラブ本来の形が残っているんです。例えるなら『虫捕り網』。針金が入った枠の部分に当たる指先から親指、土手、小指が硬くて、捕球面が軟らかい。捕る道具は同じなんです」

【グラブを方程式に】

守備の上達に意欲的な選手には、グラブの出し方や送球までの一連のプレーをヒアリングして、反映したグラブや型付けを勧めることがある。

「数学でも方程式を学んで答えを導くように、上手な人のグラブの形を方程式にして、守備が上手になって欲しいです。僕は病気で野球を断念しました。野球をやれる人たちが1日でも長く野球人生を送ってもらうための、お手伝いをしたいんです」

 今オフ引退した東芝の松本幸一郎内野手(34)は5年前から顧客だった。

 「『最後の5年間はエラーが減った気がする。ありがとう』って言ってもらいました。憧れの選手でもあったので、何よりうれしかったです」

 力のこもった作業を終えた竹内さんは、汗びっしょりだった。

【「REAL FOAM」「ATOMS TOKYO」】

 ◆竹内佑(たけうち・たすく)1993年(平5)11月26日生まれ、長崎県新上五島町出身。上五島高時代に野球部に所属したが、持病のためプレーを断念。駒大進学後の2013年冬から都内の野球ショップで7年間勤務。20年春に独立して「REAL FOAM」を立ち上げ。SNSのダイレクトメッセージなどを通じて依頼を受け、作業料金は1万1000

円(税込み)。独自監修ブランド「CAWS」「Take」「CPRE」のグローブ、ミットを各取扱店で販売している。並行して23年春から「ATOMS TOKYO」の店長を任されている。

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