来春の第97回選抜高校野球大会(25年3月18日開幕、甲子園)の21世紀枠の地区候補9校が発表された。関東地区からは横浜清陵(神奈川)が県内校では初めて最終候補9校に選出され、吉報ににぎわい…がない。“沈黙”も「選出理由」の1つだった。25年1月24日の選考委員会で9校が比較検討され、センバツ出場の2校が決定する。
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ランドマークタワーも見渡せる高台の校舎は、やけに静かだった。「9校」に選ばれた横浜清陵は、ちょうど2年生が北海道へ3泊4日の修学旅行中。居残りの1年生も、練習していない。
午後3時に吉報が届いても、野原慎太郎監督(42)は1年生たちに届けなかった。彼らは今どこに?
「どこかでミーティングしてると思います」
12人の1年生は確かに教室でミーティングをしていた。笑顔はない。真顔だ。野原監督は言う。
「(修学旅行で)2年生がいなくなるのが分かっていたのに、その間の代わりの役割を決めていなかったり。あと週の最初に、1週間分の練習メニューを打ち込むんですけど、それもやっていなかったり。人任せだし、依存性が高いし。『メニュー入れてないなら(練習)やらないのね』って」
そこで特に監督から指示を受けたわけではなく、1年生が緊急ミーティングを行っていた。だから吉報も伝えていない。「喜びですか? むしろ『やばい』と思ってると思います。まだ甲子園に選ばれたわけじゃないし、たとえ選ばれてもそれくらいでいいと思います」と監督も冷静だ。
21年夏の県8強で、今秋も8強。それでも自他ともに認める「普通の県立高」だという。でも「普通」を極める。本質を見つめる。高校生って何、部活動って何?-。「ここ数年、中学を中心に部活動の問題やあり方がよく言われますよね。今まで通りの価値観ややり方では立ち行かなくなる。部活動って一体何なんだろうって考えて」。専門家を学校に呼んで、講演をしてもらったこともある。
その上での横浜清陵の野球部とは。
「ひと言では言えないんですけど、この前も役職を全部自分たちで決め直したり。マネジャーやリーダーも立候補して、公約言って、投票して、投票結果だけじゃなく話し合いもして。練習メニューも自分たちで考えて、大会でも作戦を一緒に考えますし」
旧来の“高校野球”から令和の高校野球へ。「当たり前のレベルも変わってきてしまった」と話す。
21世紀枠の“ガッツポーズ写真”を撮らなかった1年生にはこのあと、どうあってほしいか。
「こっちへの謝罪とかは全くいらないです。ここからの姿勢以外、ないですよね。僕はあんまり言葉、信用しないので。2年生への報告? それはしなきゃいけないですよね。でも彼らがどうするか。こっちが誘導するんじゃなく、高校生ならみんな分かりますから。こうなった時に何をするか、誰が前に出てくるか、誰が仕切るか」
2年生は14日、学校に戻ってくる。【金子真仁】