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【記者の目】9年ぶりJ2降格の札幌、フロントと現場間のミスマッチ 取材で覚えた違和感


北海道コンサドーレ札幌は今季、9年ぶりにJ2降格という苦境に立たされました。その背景には、フロントとペトロビッチ監督の間にミスマッチがあったとされています。夏の大型補強にも関わらず監督が既存選手を重視する方針を貫き、新加入選手を積極的に起用しなかったことからも、その溝が伺えます。さらに、フロントがシーズン前から今季限りの退任を示唆していたにも関わらず、監督の続投にあたって「選手の想いを再確認しました」との表現に選手内でも疑念が広がりました。長年のチーム作りを担当してきたペトロビッチ監督にとって、「集大成」という言葉は現実と乖離していたのです。これらの要因が混じり合い、チームの士気を揺るがす結果となったことが降格に影響を与えたと考えられます。

札幌対柏 最終戦セレモニーであいさつする札幌ペトロビッチ監督(撮影・黒川智章)

<記者の目>

<明治安田J1:札幌1-0柏>◇8日◇第38節◇プレド

北海道コンサドーレ札幌がなぜ9年ぶりにJ2降格することになったのか。今季取材を通して覚えた違和感がいくつかあった。そのうちの1つは、フロントと現場間のミスマッチだ。シーズン中は世に出すことを控えたペトロビッチ監督の言葉を紹介する。

記者は今季、一度ペトロビッチ監督とのやりとりでピリついたことがある。9月1日川崎フロンターレ戦後の会見だ。8月24日、夏の大型補強で7選手が加わった戦力での後半戦の巻き返しについての思いを聞いた。その時にも、次に紹介するコメントと内容的には同じことを話していたが、会見場で逆指名を受け、その時の質問をもう1度この場でするように言われた。そしてこう答え始めた。

「私は常に大事にしていることは、これまでともに戦ってきた選手と戦うスタンスということ。戦争に行くのに部隊を編成するなら、ともに戦ってきた人と戦う。信頼のある人と戦うという思いが強い」

既存の選手を重視するという考えを示した。実際、新加入選手で主力として起用したのはDF大崎玲央、パク・ミンギュのみ。その他の外国人ストライカーらは、実力で勝ち取れなかった部分もあったが、終盤試合に絡むことはなかった。

夏の補強で、指揮官が容認した選手もいたようだが、獲得ができなかった。監督の根本的な考え方と、補強で現状を打破しようとしたフロントの方向性は、そもそも完全に合っていなかったと感じる。

5月29日のクラブによるペトロビッチ監督の今季続投と「集大成」という言葉で今季限りの退任の表明。このような声明には監督へシーズン中の解任はないと安心させる要素と、最後のシーズンだから力を出し切って欲しいと願う要素があるはずだ。だが、6月1日に取材に応じたペトロビッチ監督は「まだ22試合残る。どこまで自分がやるのか。今後どうなっていくのかサッカーの世界ではわからないことが多い」と、フロントを信じ切れていないと捉えられる話しぶりだった。

もともとシーズン始めからフロントはミシャ体制7年目をもって区切りという方針を視野に入れていた。いくら前半戦で低迷したからといって、残留に成功すれば続投もあるという可能性を示さなかったのは疑問だ。選手内では、クラブが今季続投決定の理由に「選手の想いを再確認しました」と、表現したことに疑問を抱く声もあった。

毎年育てた主力の引き抜きがありながら何とかチームづくりをしてきた指揮官にとっては「主力が今も残ってプレーしているチームなら『今年が集大成』と言ってもいいけど、今の状況で集大成というのは、あまりにも現実からかけ離れている」と嘆くしかなかった。あの声明によってペトロビッチ監督の士気が下がったとは感じないが、士気を高めてあげる方法はあったのではないか。【北海道コンサドーレ札幌担当=保坂果那】

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