<ラグザス presents 第3回WBSCプレミア12:侍ジャパン0-4台湾>◇24日◇東京ドーム
「勝つ気あるのか!!」。11月の宮崎キャンプ第2クール初日の朝だった。侍ジャパンの首脳陣が一気に慌ただしくなった。今大会1次ラウンドで同グループになった韓国とキューバがソウルで行う強化試合の日程が、2連戦2試合目の朝になって判明。井端監督が10月下旬韓国視察に行った際、同行したスタッフに日程の把握を一任したはずが、初歩的な情報管理不足を露呈した。
韓国-キューバのライバル同士の戦いを、大会前に視察ができれば生きた情報になる。事前に分かっていれば監督自身が現地視察も可能。少なくとも、信頼できるコーチ派遣はマストだった。急きょ宮崎からコーチ派遣も検討したが、デーゲームで間に合わず、あえなく断念。ただでさえ極端に情報の少ないキューバだけに、怒気のこもった声が指揮官から出るのは当然だった。
試合をやるのは選手であり、ベンチから送り出すのは監督、コーチの役割。試合が始まれば技術、体力、戦術すべてを駆使して目の前の敵と戦うことに死力を尽くす。それまでの過程には、綿密な準備とサポートが不可欠。結果的に8戦全勝で決勝まで勝ち上がったものの、結果オーライでは済まされない。緻密なサポート体制が整っていたのだろうか。
今大会メンバー発表後、侍関係者が言った言葉が今も忘れられない。「これだけ招集できない選手がいると厳しい」。シーズンを終えた直後に、メンタルとコンディション両面で想像以上にきつい作業になる。招集に応じなかった選手が0ではない現実は依然としてある。所属チームでのパフォーマンスを優先する選手や、今回は「自信がない」という選手もいたという。
ただ、選ばれた選手は日を重ねるごとに1つになっていった。侍ジャパンのユニホームを着ることへの「誇り」は、世界一になった23年WBCを経て、選手の中で確実に大きくなっている。けがによる辞退となった巨人岡本和は、侍でのプレーを意気に感じて心待ちにしていた1人だった。
次回26年3月開催予定のWBCに、今回のメンバーから何人選ばれるかはわからない。メジャー組を考えれば、ほんの数人かもしれない。それでも異国の地のマウンドで投げ、シーズン中では味わえない重圧の中で打席に立つことは、間違いなく選手としての引き出しを増やし、今後の選手生活における財産になるはずだ。選手として1段階も2段階も成長するきっかけやヒントが落ちている。それが「日本代表」という場所であり、プレミア12の存在意義だと思う。【侍ジャパン担当=栗田成芳】