日米通算4367安打のイチロー氏(51=マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が18日に愛知・春日井市内の母校・愛工大名電で指導した。
今回はサプライズ訪問だったが、練習前にプロ顔負けの練習施設やラプソードなどデータ測定器がそろう環境に逆に驚かされた。3年生を含む野球部員45人に「見学したが、この成績はないでしょ。この施設を持つ学校、ないでしょ」といきなり辛口であいさつ。今秋の県大会は3回戦敗退だっただけに「1回戦負けと一緒。愛工大名電にとっては」とゲキを送った。
イチロー氏は走塁やキャッチボール、フリー打撃で身ぶり手ぶりでレクチャーした。ランニングでは年齢を感じさせないキレのある走りを披露し、「軽っ! 速っ!」と後輩軍団の度肝を抜いた。「ストライドが大きいというのが僕の特徴。1歩が大きいのは、股関節から(脚を)引っ張ってきて最後、膝から下(を使っている)」と助言した。
約2時間の練習後はグラウンドでミーティング。イチロー氏は「データにないことばっかりだったでしょ。感性を大事にして、みんな能力が高いから。あんまりしばられないように」と訴えかけ、「お互い長所と短所を指摘し合って、高め合ってください。また来るかもしれません。母校ですから」と笑みを浮かべた。
高校時代のイチロー氏をコーチとして指導した倉野光生監督(66)は18年ぶりに顔を合わせた。「彼ら(部員)には“野球の神様”みたいなもの」と表現。「ランニングの姿だけで圧倒されちゃったね。うちの選手、普段はもっとうまいしレベルが高いけど、基準があまりに違いすぎて。あらゆることに圧倒されてしまった。ああやって注入してもらって、響くものがあったと。母校で教えてもらえることが私たちも念願だったけど、多分イチロー君自身もそうだったと思う」と感謝し、敬意を表した。
ミーティングの最後に清水■(■は隆の生の上に一)太主将(2年)から「必ず、甲子園に行きます。甲子園に見に来てください」と力のこもった言葉とともに花束を贈呈されると、同氏は「それは無理だよ」と笑って返事。その後は記念撮影に納まり、部員たちに見送られて練習場を去った。
イチロー氏による高校野球部指導は20年から5年連続で、今年は大冠(おおかんむり、大阪)、岐阜に続いて3校目。通算では11校目となった。
母校での指導から一夜明け、米国野球殿堂の発表でイチロー氏が殿堂入り候補者に加わったニュースが届いた。