阪神が日本の野球振興に一層力を入れる。来年1月1日付で、球団に新たな部署の「野球振興室」を設置。同室長を務める嶌村聡球団本部長(57)が取材に応じ、今季限りで現役引退した秋山拓巳投手(33)をベースボール・アンバサダー(BA)とし「旗振り役」を任せることを明かした。
野球振興事業により本腰を入れ、推進を図る狙い。嶌村本部長は「野球人口は、少子化のペース以上に落ち込んでいる。本当に大きな課題として取り上げて、注視してやっていきます」と説明。そのシンボルをBAと命名し、阪神一筋15年の右腕に白羽の矢を立てた。
「(秋山氏は)普段の野球教室でも受けがいい。気が優しくて、力持ちみたいなイメージがあって。(野球振興に)非常に興味のある子。野球振興室の旗振り役というか、イメージキャラクターのように」
初仕事は来年1月、小学校を訪れる「ゲストティーチャー」を予定。連携を続ける独立リーグチームの指導や、女子チーム「阪神タイガースWomen」の指導など、年間を通してさまざまな活動を行っていく。
「野球振興室」は女子野球、アカデミー、普及振興事業の3部門で構成。具体的な施策として「ゲストティーチャー」の実施回数を増やし、中学生の大会「タイガースカップ」は四国、北陸まで広げて出場チームを増やすことも視野に入れる。独立リーグ球団との連携もより強化していく。
今年、日本海L・石川に派遣され、監督を務めた岡崎太一プロスカウト(41)は、来季も指揮官を継続する。「選手が『岡崎さんを監督に呼んでくれてありがとう』と球団社長に言ってくれているみたい。他のチームさんにも、どんどんコーチ派遣をやっていきたい」。嶌村本部長は効果を喜びつつ、派遣先を広げていく考えを明かした。
今回の事業プランを聞いた藤川監督も「大事なことです」と前向きな姿勢を見せてくれたという。「90周年を契機にしてやっていこうというのは当然あります。野球の楽しさを、もっともっと分かってもらいたい」。日本球界を代表する1つのチームとしての責任感を胸に、野球振興に全力を尽くしていく。【磯綾乃】