J3アスルクラロ沼津の元日本代表MF伊東輝悦(50)が今季限りでの現役引退を表明した。東海大一高(現東海大静岡翔洋)から93年に清水入り。J1からJ3の全カテゴリー、計5クラブでプレーしたレジェンドの引退を受け、高校時代に指導した佐野健二元監督(62)がねぎらった。
◇ ◇ ◇
教え子の引退を受け、かつての恩師は寂しげだった。東海大一高時代にコーチ、監督として伊東を指導した佐野元監督は現在も東海大静岡翔洋サッカー部の統括部長を務めている。引退は報道で知ったといい、「やっぱり寂しいですよね。でも、50歳まで本当によくやってくれた。今はお疲れさまと言いたいです」とねぎらいの言葉を贈った。
直接会ったのは今年9月。伊東の50歳の誕生日を祝う食事会だった。伊東の夫人と長男で翔洋サッカー部所属の昊輝(2年)も誘い、4人で焼き肉を食べた。その時も引退の話はなく、サッカー談議で盛り上がったという。佐野元監督は「本当にサッカーが好きなんだと思った。引退の相談を一切してこないところもテルらしいなと思います」。
高校時代の伊東は1年時から主力として出場。「当時はドリブラー。上級生を簡単に抜いていったのには驚いた」と懐かしんだ。さらに、プレーの判断も的確だった。得意のドリブルだけでなく、味方を生かすパスや意表を突くシュートなどでチームをけん引。「その場その場で最適解となるプレーの判断ができる。長く現役を続けられたのもその能力がたけていたからだと思います」と考察した。
最も印象に残った試合はアトランタ五輪でのブラジル戦。伊東の他に、服部年宏と松原良香、白井博幸の4人が東海大一高出身だったこともあり、佐野元監督はスタンドで観戦した。「あのゴールを自分の目で見られたことは今でも忘れられない。本当に誇らしかった」。大会後には現地で買ったポスターと当時の観戦チケットにサインをもらった。「大事な宝物」は現在も学校のガラスケースで大切に保管している。
引退後については現時点で未定。伊東自身も「何も決めていない」と話していた。恩師としての思いは1つで、「何をやるのか気になりますけど、いずれにしてもサッカー界のために頑張ってくれると思う。これまでの経験は財産。そこを伝えてほしいですね」と願った。【神谷亮磨】