<ワールドシリーズ:ヤンキース6-7ドジャース>◇第5戦◇30日(日本時間31日)◇ヤンキースタジアム
MVPに輝いても、ド軍フレディ・フリーマン内野手(35)はステージ上で大歓声を浴びながら、後方でキラキラと輝く、本当の「宝物」を見つめた。「MVPのトロフィーではなく、あの優勝トロフィーこそが我々にとってすべてなんだ」。個人の名誉とチームの世界一は、比較すべき対象ではなかった。大きくうなずく同僚に満面の笑みで応える姿こそ、フリーマンの生き様だった。
第1戦からWS史上初となる4戦連発、タイ記録となる12打点で、文句なしのMVPを獲得した。それでもヒーローは事もなげに言った。「12打点ということは、それだけチームメートが出塁したということ」。右足首捻挫が完治していない中、この日も一塁から三塁へためらうことなく激走。全身全霊をかけてプレーする姿は、最後まで不変だった。
グラウンド上だけでなく、ファン、チーム、家族をこよなく愛する人格者としても知られる。ド軍移籍後3年が経過しても、今年9月、古巣アトランタ遠征の際には、鳴りやまないスタンディングオベーションで迎えられた。厳しく律して統率するのではなく、だれからも愛される存在として有形無形の一体感を生み出せる選手は、そう多くはない。
メジャー15年目の大ベテランにとっても、過去に経験のない特別なシーズンだった。昨オフ、プロスポーツ史上最高契約の大谷、投手史上最高額の山本らを補強。開幕前の予想では、世界一の最有力候補に挙げられ、そのままゴールにたどり着いた。「これが今季が始まった時の脚本通りだとは思わない。ただ、チームが一丸になると、時々こういうことは起こるもの。この連中は特別なグループなんだ」。ド軍の中心にいた大谷を「兄貴分」として支え続けたフリーマンは、誇らしげに胸を張った。