<秋季高校野球関東大会:健大高崎10-3佐野日大>◇29日◇準々決勝◇等々力球場
健大高崎(群馬)の右腕・石垣元気投手(2年)が秋季関東大会で、2年生としては歴代最速となる158キロをマークした。19年4月、高校生史上最速となる大船渡(岩手)の佐々木朗希投手の163キロを現場で目撃した記者が、石垣の158キロにも巡り会った。
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等々力球場のスピードガンは「速い」との噂があった。すでに甲子園で154キロを出していた石垣がこの日155キロを出す確信はあり、試合初球で153キロを投げた時点で、その上さえも覚悟した。
158キロもピンチのフルカウントから投じた球だった。その前が緩いカーブ。「次の球が間違いなく最速になる」と予感させ、左打者の胸元に投げ込んだ。それがやはり「158」と表示された。予想はついたので、思ったよりもビックリはしなかった。
レンズ越しながら佐々木の163キロを目撃し、ロッテ入団後も担当記者として実に350球以上の「160キロ台」を目撃してきた。石垣と比較する。
スカウト陣のスピードガンではこの日は最速152~153キロが多く、石垣本人の肌感覚も「153キロか154キロか」というところ。佐々木の163キロと比べると、衝撃度のレベルはそう高くはなかった。
情緒的なところで言うと、佐々木の163キロはネット裏がざわつくどころか、立場を越えて、知人かどうかも関係なく、両隣の人と話したくなるほどの衝撃度だった。石垣の158キロは「うわっ、出た」と口には出たものの、興奮にまでは至らなかったのが事実だ。
佐々木は右足を高く上げることで、位置エネルギーを巧みに使って球速増につなげる。一方で石垣は178センチ、75キロと、ドラフト候補の高校生投手としては平均か、もしくは平均より少し小さいか。
佐々木や大谷翔平のように背や体が格別に大きいわけではない。足を高く上げることも、個性的な動きもない。それでも150キロ台を投げる。日本ハム坂本スカウトは「だからこそ、石垣君は希有な存在なんです」と驚く。
石垣本人は「下半身のトレーニングであったり、バランス良く投げることを意識しているので、それで球速が出ているのかなと思います」と推理する。関係者の中には軸足の蹴りや、指先感覚の良さを挙げる声もある。
各校とも速球対策はしており、この日のようにある程度の安打は打たれるものの、引っ張りの安打はなかなかない。佐野日大側からは「重い」の証言もあった。角度や迫力では佐々木がかなり上を行くと感じるものの、緩急も交えた2年生時点での完成度では石垣も十分に魅力的。あらゆるスピードガンで当たり前のように150キロ台後半、あわよくば160キロを計測するようになった頃、どんな組み立ての投手になっているか楽しみだ。【金子真仁】