Bリーグ1部(B1)のチャンピオンシップ・セミファイナル(CS・SF)が5月15日と16日に行われ、西地区3位(ワイルドカード2位)の琉球ゴールデンキングスはホームの沖縄サントリーアリーナで同4位(同3位)の名古屋ダイヤモンドドルフィンズと対戦した。
第1戦が85-65、第2戦は90-74で、いずれも琉球が勝利し、5季連続5回目のファイナル進出を決めた。今季で創設10年目を迎えたBリーグにおいて、ファイナル進出5回は過去最多となる。
レギュラーシーズンの直接対決では、ディフェンシブレーティングトップの名古屋Dに多くのターンオーバーを誘発されるなどして、2戦全敗を喫していた琉球。また、名古屋Dは負傷により大黒柱のスコット・エサトンを欠いてCSを戦ったが、クォーターファイナル(QF)では優勝候補の宇都宮ブレックスを敵地で破って勢いに乗っていただけに、琉球ホームとはいえ、勝敗予想が難しいカードだった。
琉球が難敵をスイープした最大の要因は、ホームの大声援を背に、名古屋Dがモメンタム(流れ)を作る芽をことごとく潰したことにある。どのようにして徹底したのか。
5〜6点にとどまった名古屋Dの「最大ラン」
象徴的な数字がある。試合中の最も多い連続得点を示す「最大スコアリングラン」だ。
この2試合で、名古屋Dは第1戦が5点、第2戦が6点にとどまった。加藤嵩都らの活躍により、最大の武器である高い位置からの激しいディフェンスでモメンタムを作り、宇都宮に2連勝したQFは第1戦から順に14点、12点。いかに琉球戦で勢いを醸成できなかったかが分かる。
琉球戦においても、バックコートから相手ハンドラーに積極的にトラップを仕掛けたり、得点源である岸本隆一やヴィック・ローらに対してディナイを張って簡単にボールを持たせなかったりと、持ち味の激しいディフェンスを徹底した名古屋D。しかし、琉球はそれに動じることなく、相手の流れを断ち切り続けた。
第1戦で、その我慢が実を結んだのが、第3クォーターの残り5分を切った場面だ。
スコアは51-47で琉球がリードしていたが、岸本が高い位置で加藤にスティールをされ、単独速攻からレイアップシュートを許す。ここぞとばかりに、加藤と今村佳太がバックコートで岸本にダブルチームを仕掛けた。しかし、スクリーンに行っていたジャック・クーリーを経由して突破すると、岸本が即座に3ポイントシュートを入れ返した。
ここからローとデイミアン・ドットソンがフリースローを獲得し、相手の速攻につながりそうな場面では脇真大がファウルで止めるなど、逆に琉球がモメンタムを作って9-0のランで二桁得点差に広げた。
ディフェンスでは守備職人の小野寺祥太が齋藤拓実に徹底してプレッシャーをかけ、パスを振られても素早くローテーションして隙を見せず、じわじわと点差を離して快勝した。

賢いファウルと後半のディフェンス修正
第1戦の琉球のターンオーバーは15回。ターンオーバーからの得点も15点を許し、いずれも決して低い数字ではない。それでも、ランで引き離した場面に象徴されるように、高い集中力ですぐに得点を返したり、賢くファウルを使って相手の速攻を止めたりして、全クォーターで名古屋Dのスコアを上回った。
先勝した後、桶谷大HCは以下のようにゲームを評した。
「名古屋Dはスクランブルでトラップに来るチームで、それに対して14個のターンオーバーをしてしまっているんですけど、平常心を保ち、簡単に切れるんじゃなくて、ちゃんと『次のプレー、次のプレー』と言っていました。一気にモメンタムを持っていかれることは少なかったと思います。宇都宮は名古屋Dにそこで負けていて、僕たちにはそういう材料があったので、本当にみんなが集中して最後までやり切ったと思います」
前半はペイントエリアに進入された時の寄りが遅く、2ポイントシュートを中心に41点を許したが、後半は修正して24失点に抑えた。その点についても、指揮官は「前半は(カバーのディフェンダーが)ウィークサイドにへばり付き過ぎて2対2でやられたりしましたが、後半は第一にペイントエリアを守りに行けたことが良かったです」と述べ、修正力の高さに及第点をつけた。
第4クォーターでは大きく差が開いたが、集中力が切れることはなかったという。残り約5分であった、ベンチでの岸本とのやり取りを明かす。
「20点くらい離れた時に隆一が僕のところに来て、『桶さん、宇都宮は20点差くらいから負けてるから、オフィシャルタイムでもう一回締めてもらっていいですか?』と言いました。『考えが同じ』って思いました。やっぱり、そういう選手がいる、そういう話ができることが今のキングスの強さだと思います。相手にエサトンがいようがいまいが、自分たちの力を発揮するという雰囲気があったと思います」
プラスマイナスがチームで2番目に高い「+18」に達した小野寺も「前半はペイントエリアで高確率で得点されましたが、後半はチームとしてヘルプサイドの寄りなどができたと感じています。今日はファストブレイクを簡単にやられる部分が少なかったので、そこの部分をチームとして共通理解ができていたなと思っています」と手応えを語った。

強烈なホームの優位性…成功率40%超の3ポイントシュート
第2戦では、前日はビッグマン2人で試合に入った名古屋Dがアーロン・ヘンリー、アラン・ウィリアムズ、カイル・リチャードソンの3ビッグでスタートした。それに対し、琉球はローとジャック・クーリーの2ビッグだったが、開始1分過ぎですぐに佐土原遼とアレックス・カークを交代し、サイズを合わせて応戦した。
名古屋Dが第1戦と同様に高い位置から圧力をかけ、齋藤がよりシュートの積極性を増して先行したが、ここでも琉球は動じない。ペイントエリアを徹底して守るチームディフェンス、相手の速攻を切るファウル、岸本やローらのピック・ロールを起点に着実に得点を決めるオフェンスなど、やるべきことを徹底して、すぐに前に出た。ボール運びへのプレッシャーに対しても、引き続きクーリーとカークがスクリーナーやパスの中継役としての意識を高く保ち続けた。
結果、またも全4クォーターで名古屋Dのスコアを上回った琉球。この試合もターンオーバーは11回に上ったが、モメンタムを作られる場面はほぼ皆無だった。
2試合とも二桁得点で安定したパフォーマンスを見せた岸本は、オフェンスにおいて「この2日間はあまりボールを1カ所に留めないことを意識していました。ボールが動くことによって名古屋Dは的を絞りづらくなると思っていたので、それがハマった印象です」と振り返った。それを踏まえた上で、「相手のモメンタムを切るところだったり、チームディフェンスの部分だったり、レギュラーシーズンでうまくいかなかったことが、この2日間にとても生きたんじゃないかと思います」と語った。
2連勝を果たした要因としては、いずれも武器のリバウンドで上回ったほか、強烈なホームコートアドバンテージがあったことも見逃せない。
大ブーイングにさらされた名古屋Dのフリースローは、成功率が第1戦から順に44.4%(9本中4本成功)、68.6%(16本中11本)にとどまった。レギュラーシーズンの平均がリーグ23番目の31.4%だった琉球の3ポイントシュート成功率は2試合とも40%を超え、桶谷HCは「ホームでみんなが気持ち良くバスケをさせてもらっているというのは間違いなくあります。これこそがキングスの団結の力であり、CSで勝たせてもらっている、ファイナルに5年連続で行ける要因だと思います」と笑みを浮かべた。

岸本「キングスに関わった人が報われるような」
これで5シーズン連続でのファイナル進出となった琉球。頂上決戦の相手はレギュラーシーズン全体1位の長崎ヴェルカとなった。レギュラーシーズンではホームで2試合を戦い、インサイドの要であるアキル・ミッチェル不在の長崎を相手に1勝1敗だった。
長崎はスタイルやメンバーの特性こそ違えど、名古屋Dと同様に高い位置からディフェンスを仕掛け、速いペースのオフェンスにつなげていくことが持ち味だ。それを念頭に、桶谷HCはこうファイナルを展望した。
「名古屋Dはスクランブルのトラップが多く、長崎はよりスイッチングが多いチームです。なので、ターンオーバーを減らすこともそうですが、どうペイントエリアをこじ開けられるかがすごく重要になってくると思います。ズレがあるかないかでは、リバウンドからのセカンドチャンスポイントを取れるかも全然変わってくるので。あとは突進力のある選手が何人かいるので、そこをどう止めるかが重要だと思います」
毎年、決戦の地となる横浜アリーナで大勢の琉球ファンが生み出す「団結の力」を背に戦う覚悟も示した。
「モメンタムを相手に与えない、そして、自分たちがそれをどう作るかがめちゃくちゃ大切だと思っています。僕は、自分のタイムアウトでキングスブースターが盛り上がることによって、一気にモメンタムが変わるということを知っているので、それをうまく使っていきたいなと思っています」
現行リーグでは今シーズンが最後となるBリーグ。生え抜き選手である岸本は、初年度の開幕戦と、最後のファイナルでコートに立つであろうただ1人の選手となる。節目のファイナルに向け、強い意気込みを語った。
「ここに至るまで、本当にたくさんの人が力を尽くしてくれた結果が、こうして今につながっていると思います。個人的には、変わっちゃいけないことと、変えていかなきゃいけないことを、常に自分の中で自問自答しながらやってきました。ファイナルで必要以上に感情的になることはないと思いますが、今までのBリーグの歴史と、キングスに関わってきた人たちが報われるようなファイナルになったらいいかなと思います」
直近4シーズンでファイナルに進出し続けている琉球だが、優勝を飾ったのは2022-23シーズンのみ。新時代を前にした区切りのファイナルで、再び歴史に名を刻むことができるか。積み上げてきた勝負強さを武器に、タイトル奪還に挑む。

(長嶺真輝)
