Bリーグ1部(B1)のチャンピオンシップ(CS)ファイナルは5月23日から26日にかけて横浜アリーナで行われ、西地区1位の長崎ヴェルカが同3位の琉球ゴールデンキングスを2勝1敗で破り、初優勝を果たした。Bリーグ参入5年目、B1昇格3年目という短期間で、日本一にまで上り詰める快挙を達成した。
3試合とも、両チームの得点が60〜70点台にとどまるロースコアとなった今回のファイナル。特にレギュラーシーズンの平均得点がリーグトップの91.2点だった長崎にとってはきわめて低い数字だったが、強固なディフェンスで琉球を上回った。
創設10年目を迎えた今シーズンをもって、現行制度での運用が終了したBリーグ。サラリーキャップの導入、オンザコートルールの変更などを伴う「B.革新」により、B1は来シーズンから「Bプレミア」に移行する。
長崎は大型センターのいないポジションレスバスケ、参入5年目、地方拠点など、特徴が多い。このようなチームが節目のシーズンで頂点に立ったことは、Bプレミアにどうつながっていくのか。

モーディ・マオールHC「一人一人が役割理解」
長崎は見事なディフェンスだった。
特に72-64で勝利したファイナル第3戦。スクリーンを巧みに使う琉球の岸本隆一やヴィック・ローらハンドラーに対し、素早いスイッチでズレを作らせず、ショーディフェンスからのブリッツも駆使して自由にさせなかった。
結果、琉球は外からの苦しいシュートが増え、成功率が上がらなかった。ジャック・クーリー、アレックス・カークのビッグマンは外のシュートが得意ではないため、長崎はそこにボールが落ちるように仕向けた印象だ。1対1の場面でも馬場雄大やスタンリー・ジョンソンらがさまざまなタイプを守り、大きな存在感を放った。
リバウンドの本数は32本対53本と大きく水をあけられた。オフェンスリバウンドについては、琉球が26本を奪取。しかし、取られた後も高い集中力で各選手がブロックに飛び、琉球の最大の強みであるセカンドチャンスポイントを13点のみに抑えた。
オフェンスでは主力の7人全員が得点を記録。ハーフコートでは5アウトの陣形を取り、オフボールでスクリーンを使いながら巧みにフリーを作ったイヒョンジュンはゲームハイの23得点を挙げてCS・MVPに輝いた。ジャレル・ブラントリーがミスマッチを突いたり、ジョンソンが単独速攻でフリースローをもらったりと、それぞれの個性が生きた。
モーディ・マオールHCは「一人一人が役割を理解して、全員のピースが一つになったと思っています。それは、全員が誇りに思えていると思います。自分たちは1年間を通してベストなチームでした」と語り、総合力の高さを誇った。

「ポジションレス」で勝ち切った意義
今季の長崎で平均出場時間が二桁を超えた主力7人のうち、最も身長が高かったのはアキル・ミッチェルの206cm。それに続くのがヒョンジュンとブラントリーの201cmであり、際立ってサイズのある選手はいなかった。これまでの機動力重視のスタイルをさらに追究した形だ。
ただ、残りの4人については、173cmでポイントガードの熊谷航を除けば、馬場、ジョンソン、山口颯斗は195〜198cmであり、ウイング陣の基準で言えば「大きい」とも言えるチームだった。幅広いタイプとマッチアップできる選手をそろえた布陣が、スイッチとショーディフェンスを組み合わせた強固なディフェンスを具現化した。
オフェンスではジョンソンとヒョンジュンという吸引力の高い2人が加入したことで、スペーシングを重視する5アウトオフェンスが高いレベルで機能。走れる選手が多く、ファストブレークポイントもリーグトップだった。
個々の運動量、スピード、フィジカルを生かした「ポジションレスバスケ」で頂点に立ち、馬場は「モーディHCが自信を持って、時間をかけて指導してくれていたので、正直自信がありました。今までのBリーグはビッグマンがゲームを支配する機会が多かったと思うので、僕たちがこういうバスケで優勝したことによって、新しい可能性を日本のバスケットボールリーグに示すことができたかなと思います。そこはすごく自信を持っています」と振り返った。
「HAS IT!」(Hard、Aggressive、Speedy、Innovative、Togetherの頭文字)という言葉を掲げ、日本一のチームを構築した伊藤拓摩GMも満足げに語る。
「ヴェルカは立ち上げ時から『HAS IT!』というスタイルを掲げ、B3時代からスピードやポジションレスを持ち味にしてきました。私や前田健滋朗(前HC)がヘッドコーチを務め、たくさんの方々が労力を費やし、最終的にモーディHCが素晴らしいオフェンス、ディフェンスを作ってくれました」
来シーズンからは、外国籍選手の登録人数は3人で変更はないが、同時にコートに立てる人数は2人から3人に変わる。いわゆる「オンザコートフリー」だ。外国籍選手はジョンソンやブラントリーのように、200cm前後でフィジカルの強さと機動力を兼ね備えた選手も多いため、今回の長崎のような布陣を敷き、ポジションレスバスケを志向するチームは増えるかもしれない。

首都圏から地方へ移るチャンピオンリング
Bリーグはこの10年で、9回のCS(2019-20シーズンはコロナ禍で中止)を行った。歴代優勝チームを見ると、顕著な変化がある。首都圏から地方へチャンピオンリングが移っていることだ。
2016-17シーズンで宇都宮ブレックスが初代王者となったことを皮切りに、CS5回目の2021-22シーズンまではアルバルク東京、千葉ジェッツと、いずれも優勝チームは首都圏のクラブだった。親会社やスポンサーの資本力の大きさも影響していただろう。
一方で、2022-23シーズンに琉球ゴールデンキングスが優勝して以降は、広島ドラゴンフライズ、宇都宮、そして今回の長崎と、地方を拠点とするチームの存在感が明らかに高まっている。
特に長崎については、2020年の創設から、まだ6年しか経っていない。B3、B2を立て続けに制して最短でB1に昇格し、2024-25シーズンから「夢のアリーナ」のハピネスアリーナをホームコートとしている。親会社である通販大手のジャパネットグループが積極的な資金投入をしているとはいえ、この成功事例は、他チームにも大きな刺激を与えたはずだ。
伊藤GMに今回の優勝が持つ意義を聞くと、こう答えた。
「Bリーグが地域創生リーグという風に言っているのは、やはりスポーツの力が地域を元気にする部分があると思います。バスケットという魅力あるコンテンツを使って、街を盛り上げる。そして、何らかの社会問題にも取り組み、地域の皆さんにチームを知ってもらう。他のクラブもやっていることですが、ヴェルカも徹底してやりたいなと思っています」
戦力バランスについての答えではなかったが、伊藤GMが言うように、Bリーグの各チームが、徐々に地域に根付いてきていることは間違いない。今シーズン、仙台89ERSや佐賀バルーナーズも勝率5割を超え、夢のアリーナの盛り上がりや大型補強は地方チームでも目立つようになってきている。
Bプレミアでは、戦力均衡を目的に上限8億円の「サラリーキャップ(選手の報酬総額)」が導入される。全体のレベル向上とともに、すでに優勝チームは分散してきているが、さらに王者に名を連ねるチームが増える可能性がある。
バスケスタイルの多様化や勢力図の変化が見られるBリーグ。さまざまな制度設計が変わる「B.革新」により、どのようなリーグに変貌していくのか。目が離せない。

(長嶺真輝)
