1999年一橋大学卒業後、日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)入行。
新生銀行(現SBI新生銀行)を経て、2005年メンバーズ入社。
2006年11月の株式公開を始めとし、リーマンショック後の全社変革プロジェクト、人事制度改革、中期経営計画の策定・実行、ミッション・ビジョンの策定・浸透プロジェクト、働き方改革、東証一部上場など全社的な重要プロジェクトの推進を数多く担う。
2011年執行役員、2016年に常務執行役員、2018年に取締役就任。
2023年4月より現職
企業の脱炭素DXを推進するデジタルビジネス運用支援事業を展開。取引先企業ごとの専任チームが伴走型支援で成果の最大化を追求します。
2030年の目指す姿であるVISION2030では、「日本中のクリエイターの力で、気候変動・人口減少を中心とした社会課題解決へ貢献し、持続可能社会への変革をリードする」を掲げ、事業を通して社会課題を解決することを目指しています。
1995年設立。東証プライム上場。
社長のこれまでの変遷について
私は大学を卒業後、大手金融機関である日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)と当時外資系ファンドの傘下でベンチャー気質の強かった新生銀行(現SBI新生銀行)の2社を経験いたしました。この二つの銀行での勤務経験を通して、二つの組織の大きな違いを感じ取りました。一方は金融危機の中で今後の銀行のあり方を模索している中で業界再編し統合した銀行、もう一方は戦略が明確でリスクを取り急成長を遂げる銀行でした。前者で働いている時も周囲の現場の個々の社員が非常に優秀であると感じていましたが、組織として成果を上げて大きく成長していたのは後者でした。これらの経験から、戦略性とリーダーシップの重要性を強く認識しました。
その後、もともと興味を持っていた経営に近い仕事をしたいと考えメンバーズに入社し、IPOに向けて新設された経営企画室に配属となりました。ライブドアショックの中でどうにか上場しましたが、すぐに上場後2年連続赤字という経営危機に直面し、多くの社員が会社を離れていきました。
自分の意志でチャレンジングなベンチャー企業にきたにも関わらず、ここで諦めるわけにはいかないと思い、当時の若手幹部を中心にメンバーを集め「プロジェクトX」という会社の再生プロジェクトを実行したことが、私が経営に近いポジションについたきっかけです。
その後、この再生プロジェクトもなんとか成功し経営も安定してきた際に、さらなる成長や社会への価値貢献を目指し、2014年に2020年の目指す姿である「VISION2020」という中期ビジョンを策定し、このビジョンを組織に浸透させるために「Project G2G」というプロジェクトを推進しました。
この「G2G」というのは「Good to Great」を略したもので、「ビジョナリーカンパニー2」という書籍の原題であり、良い会社から偉大な企業に飛躍するのだという意思を込め、自社が情熱を持って取り組めること、世界一になれる領域に集中することが主題でした。
このVISION2020の策定やさまざまな取り組みを通じた成果により、現在の私たちのミッション・ビジョンをベースにした経営が確立されていきました。
社長の一番感銘を受けた書籍とその理由
私のキャリアに最も影響を与えた書籍はこの「ビジョナリーカンパニー2」です。新卒2年目の時に初めて読み、これが私が追求したいキャリアの方向性を明確にしました。私は起業家気質はあまりないものの、組織を成功させること、成長させることに情熱を感じています。特に、この本で紹介されている「第5水準のリーダーシップ」は、カリスマ性よりも謙虚さと一貫性を重視するスタイルで、私の理想とするリーダーシップ像です。
また、大学時代に野球部で選手兼監督を務めていた時に読んだ「勝ち続けるために何をすべきか: 強い集団は、こう作る」からも大きな影響を受けました。この本の著者である森 祇晶 監督(西武ライオンズ監督在任9年間で、チームを8度のリーグ優勝、6度の日本一に導く)の姿勢は、「第5水準リーダーシップ」に通じるものがあり、勝利に向けて着実かつ一貫して取り組む姿勢を学びました。
これらの本は私の経営戦略やリーダーシップにおける指針となっています。特に戦略に迷った時や、自分の経営スタイルを再確認する際には何度も読み返しています。各読書で得る学びは時期によって異なり、常に新たな発見と成長の機会を提供してくれます。
読んだ書籍をどう仕事に生かしてきたのか
私が読書から得た教訓の中で特に仕事に影響を与えていることは、成功した時こそ深く反省することの重要性です。多くの場合、失敗や敗北を経験した時には、その原因を振り返り、分析するものですが、その原因は比較的明白であり、分析してもポジティブな結論にはなりにくいことが多いです。
しかし、私は成功した時こそ、その成功の理由を深堀りすることを重要視しています。なぜ成功したのかを理解し、その要因を組織や個人の知識として蓄積することが、長期的な成功への鍵だと考えています。成功した事実だけに満足するのではなく、その成功のための知見を積極的に収集し、蓄積することで、成功を再現可能なものに変えていくのです。
実際、私は部下に「なぜうまくいったのか」を問いかけることが多いです。そうすると、多くの人は、うまくいったのになぜそんなことを聞くのかと、困惑します。しかし私の質問をきっかけに、成功の理由を考えてみると、成功の理由を説明できる人はそう多くはありません。このようなコミュニケーションを繰り返すことで、徐々に将来の成功へのノウハウが蓄積されるような組織になっていくと感じています。
社長が経営において重要としている考え方
私の根底にある考えは、すべての関係者が幸せであることです。誰かを犠牲にして利益を得ることは、私の経営哲学に反するものです。
私は学生時代から気候変動や温暖化といった問題に対する認識があり、これらは人類にとっての危機であると感じてきました。このような社会的な問題に対して、私たちの役割と貢献について深く考える課題意識が私のモチベーションの源泉となっています。
その上で経営において重要としていることは、「人間としての正しさ」と「人間的な成長」です。業績の向上はもちろん大事ですが、それと同時に、どのように社会的価値を高めるかにも重きを置いています。そのためにはどうしても組織の成長、さらには個人の人間的な成長が不可欠なので、この価値観は経営において常に影響を与えているものです。
思い描いている未来構想や従業員への期待について
私たちの会社は、気候変動や日本社会の人口減少といった重大な課題に対し、自分たちがリードし、解決へ貢献することをミッションに掲げています。理念を掲げ、実現へ向けて実践的な取り組みを進めているのが私たちの特徴です。デジタル技術を駆使することで、ライフスタイルの転換や、例えば日本の人口減少や働き手不足に対して生産性を向上させるといった課題解決を進めることができます。当社は積極的な対応を進めており、これからも社会課題解決に大きく貢献している存在になりたいと考えています。
社員への期待についてですが、組織全体としては、共通の理解や風土を浸透させ、より強化していくことを重視する一方で、このような変化の激しい環境の中で、社員一人ひとりには、自身のビジョンに基づき、自律的に行動してほしいと期待しています。指示待ちではなく、自分自身の役割を理解し、それに沿って積極的に動くことが重要です。企業としても現場に権限を委譲し各社員が主体的に活動できる風土や体制を整えています。将来の理想像に向けて、社員一人ひとりが全力で努力するための支援は惜しみませんので、これからも日本社会の課題解決に貢献するという私たちのミッションのもとに精進していきたいです。
- 氏名
- 髙野 明彦(たかの あきひこ)
- 会社名
- 株式会社メンハ?ース?
- 役職
- 代表取締役社長