自動車にブロックチェーン技術を活用する動きが活発化する中、ブロックチェーン技術を基盤とするWeb3の新たな可能性のひとつとして、「分散型自動車データネットワーク」が注目されています。本記事ではモビリティ社会で重要な役割を果たすと期待されている理由や、最近の事例、投資動向をレポートします。
分散型自動車データネットワークとは
分散型自動車データネットワークは、主にコネクテッドカー(※)で収集した車両データを共有するためのブロックチェーンです。モビリティ社会への移行やWeb3の発展とともに活用方法が多様化しており、現時点においては以下のようなメリットが期待されています。
(※)車両状態や周辺状況などのデータをセンサーにより取得し、通信センターに送信できる自動車のこと。
【1】ユーザーが車両データを収益化できる
通常、車両データは自動車メーカーなどが活用しています。Web3やトークンを活用すれば、自動車の所有者が自分の車両データを第三者に共有することで、インセンティブを得ることができます。
【2】労力とコストを大幅に削減できる
自動車の購入には登録や名義変更、保険などの手続きが必要です。このような一連のデータを分散型自動車データネットワーク上に保管すれば、消費者やディーラー、メーカー、保険会社などで必要に応じてデータを共有しやすくなり、労力とコストの削減も期待できるでしょう。
【3】カーシェアリングの透明性と利便性が向上する
たとえば、Web3上でカーシェアリング用のプラットフォームを構築し、自動車の所有権をNFT(※)化して車両に紐づけることにより、透明性と信頼性に優れたカーシェアリングのエコシステムを築くことができます。
(※)ブロックチェーン上に記録された、唯一無二のデジタルデータのこと。非代替性トークンとも呼ばれる。
分散型自動車データネットワークの最新事例
次に、分散型自動車データネットワークを活用した最新事例を見てみましょう。
【1】車両データの民主化を目指す「DIMOネットワーク」
Digital Infrastructure(デジタル・インフラクチャ)は、コネクテッドカーの所有者が同社の分散型車両データプロトコル(※)であるDIMOネットワークとDIMOトークンを利用して、車両データの収集や共有、収益化ができるエコシステムを開発しています。
専用のデバイスを設置すると、あらゆる自動車がDIMOネットワークにアクセス可能になります。ユーザーは車両データと引き換えにDIMOトークンを獲得し、創出した価値に応じてネットワークの所有権を得ることが可能です。
(※)通信機器同士が通信するためのルールのこと。
【2】トークン化されたテスラに投資できる、分散型カーシェアリング「Polkadot」
マルチチェーンプラットフォームのPolkadot(ポルカドット)がウィーンのカーシェアリングスタートアップEloop(イーループ)、同暗号資産のレイヤー1ブロックチェーンPeaq(ピーク)と進めている共同プロジェクトは、分散型カーシェアリングサービスを収益化するというものです。
Eloopが100台のテスラにPeaqの自己主権型ID(※)を発行したことで、ユーザーは世界で初めてトークン化されたテスラに投資することできるようになり、収益の一部を得ることができます。全ての取引きは、契約を自動化できるスマートコントラクトを通じて行われます。
(※)特定のプロバイダーに依存せず、自身の意思で管理できる分散型のIDのこと。
投資対象としても注目
分散型自動車データネットワークは、今後、ベンチャー投資の対象としても注目されている領域です。最近ではDigital InfrastructureがシリーズAの資金調達ラウンドで1,150万ドル(約16億9,050万円)を調達し、Eloopが2023年9月のシードラウンドで160万ドル(約2億3,520万円)を獲得しました。
今後、サービスの普及が進むに伴い、さらなる資金の流入が期待されます。
今後の課題は?
分散型自動車データネットワークは自動車産業に大きなチャンスをもたらす可能性がある一方で、実用化に向けていくつかの課題があります。特にセキュリティやプライバシーの確保は、重要な課題です。一方で、技術の進歩やユーザビリティ、互換性、法的整備など、Web3が直面している課題の影響を受ける可能性もあります。
まとめ
分散型自動車データネットワークは、さまざまなチャンスを生み出す可能性を秘めているだけではなく、データの透明性の向上や経済効果が期待できる領域です。自動車産業の未来を構成する要素でもあり、さらに開発が進むことが予想されます。Wealth Roadでは、今後もブロックチェーン市場の動向をレポートします。
※為替レート:1ドル=147円
※本記事はブロックチェーン技術や暗号資産に関わる基礎知識を解説することを目的としており、ブロックチェーン関連資産等への投資を推奨するものではありません。
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