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ペロブスカイト太陽電池向け新材料


同じ結晶相の酸化チタンが創る「エネルギーの階段」が高性能化に有効



2026年9月30日

岐阜大学



ペロブスカイト太陽電池向け新材料 ~同じ結晶相の酸化チタンが創る「エネルギーの階段」が高性能化に有効~



 



 



本研究のポイント



・ペロブスカイト太陽電池の電子輸送層(光で生じた電子を効率よく電極へ運ぶ膜)として、エネルギー準位の異なる2種類の酸化チタンを積層し、電子輸送に適した「エネルギーの階段」を形成しました。



・異なる材料や結晶相を組み合わせることなく、同じルチル相 注1)の酸化チタンを積層して「エネルギーの階段」を創る新たな材料設計です。



・技術の要は、50 ℃と60 ℃のわずかな合成温度の違いによって微細構造と電子物性の異なる酸化チタンを作り分ける低温化学合成と、それらの分散液をスピンコート法で塗布・熱処理して積層膜を形成する連続プロセスです。



・作り分けた分散液の塗布順を変え、高性能化につながる条件を見いだしました。単層構造や逆の積層構造と比べて発電効率が相対的に約10~14%向上しました。



 



【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202609286799-O3-Z88klwm0】



(図1) ペロブスカイト太陽電池用酸化チタン薄膜材料の設計概念



 



 



研究概要



 近年、再生可能エネルギー分野において、「ペロブスカイト太陽電池」が注目されています。新たな材料開発や界面設計が進む中、酸化スズや酸化チタン等の金属酸化物半導体は、ペロブスカイト層が光を吸収することで生じた電子の取り出しや輸送を担う代表的な材料として知られ、その高機能化は現在も重要な研究課題です。これまで、薄膜を形成するこれらの酸化物の微細構造や電子物性(エネルギー準位等)を制御する研究が数多く行われてきました。



 岐阜大学工学部の萬関一広准教授の研究グループでは、独自の化学合成をもとに、酸化チタンをエネルギー創出技術へ応用する研究に取り組んでいます。今回、低温化学合成(50~60 ℃)と熱処理を組み合わせ、形状と電子物性の異なる酸化チタン微粒子を作り分けました。特に重要な成果は、2種類のルチル型酸化チタンが示す比較的小さなエネルギー準位の差を利用し、これらを薄膜として積み重ねて「エネルギーの階段」を創る材料設計です。



 異なる半導体材料や結晶相のエネルギー準位の違いを利用する材料設計は、ペロブスカイト太陽電池を含む様々な研究分野で検討されてきました。今回、この積層構造をペロブスカイト太陽電池に導入したところ、積層する順序によって発電性能が変化し、適切な積層構造では他の構造と比較して高い発電性能を示しました。これは、異なる酸化物半導体(酸化スズ/酸化チタン等)や異なる結晶相(アナターゼ型/ルチル型酸化チタン等)の組み合わせを利用せず、同じ結晶相の酸化チタンを積み重ねてエネルギー配置を設計するペロブスカイト太陽電池用の独自技術です。



 本研究成果は、日本時間2026年9月22日に英国の国際学術誌『Journal of Materials Chemistry C』のオンライン版で発表されました。



 



 



研究背景



 ペロブスカイト太陽電池は、桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授らによる先駆的研究を起点に発展してきた日本発の太陽光発電技術です。現在、その社会実装に向けた取り組みが加速する中、将来の普及拡大に貢献するさらなる機能材料やデバイスの研究開発が求められています。このような光エネルギー変換技術の多様化と高度化を目指し、研究グループでは、化学の力で新しい材料を創り出すことを基盤として、酸化物半導体の「ナノ構造エンジニアリング(微細構造と電子物性の制御)」に関する研究を進めています。



 



 



研究成果(図1参照)



●低温化学合成と熱処理の組み合わせにより、酸化チタン微粒子の特徴的な構造変換を発見し、同じ結晶相の酸化チタンでも異なるエネルギー準位を示すことを明らかに



 透過型電子顕微鏡(TEM)等を利用し、反応温度を変えて合成した酸化チタン微粒子を観察しました(合成には、研究グループがこれまで開発した「チタンオキソクラスター」注2)からナノ粒子を形成する独自の縮合反応を利用しました)。その結果、50 ℃で合成した束状の酸化チタン微粒子は、500 ℃の熱処理によってロッド状粒子へと構造変換する一方、60 ℃で合成した粒状の酸化チタンは、粒子同士が集まってつながった構造へと変化することが分かりました。いずれも同じルチル型結晶相をもちながら、合成時の形態の違いを起点として、熱処理後に異なる微細構造が形成されることを明らかにしました。



 紫外光電子分光法(UPS)、光吸収スペクトル測定、電気化学測定であるMott–Schottky測定等を組み合わせて電子物性を評価した結果、2種類のルチル型酸化チタンのエネルギー準位に違いがあることが示されました。これにより、異なる材料や異なる結晶相を組み合わせることなく、同じルチル型酸化チタンがもつエネルギー準位の違いを利用して、「エネルギーの階段」となる積層構造が設計可能であることを示しました。



 



●積層する順序によってペロブスカイト太陽電池の発電性能が変化



 2種類の酸化チタンを異なる順序でFTOガラス基板上に積層して電子輸送層とし、FAPbI₃(ホルムアミジニウム鉛ヨウ化物)を光吸収層として用いてペロブスカイト太陽電池を作製したところ、発電性能が明確に変化しました。特に、「エネルギーの階段」となるように2種類の酸化チタンを配置した構造では、19.20%の光電変換効率を示し、逆の順序で積層した構造(17.37%)や単層構造よりも高い発電性能が得られました。なお、本研究では酸化チタン電子輸送層の効果を明確に比較するため、ペロブスカイト光吸収層には文献に基づく標準的な作製条件を用い、その条件を統一して評価を行いました。また、別途緻密な酸化チタン層を設けることなく、作製した酸化チタン積層膜を電子輸送層として直接用いています。



 これらの結果から、同じ結晶相の酸化チタンでも、微細構造と電子物性の異なる材料を適切な順序で積層することが、電子輸送および界面設計を通じた太陽電池の高性能化に有効であることを示しました。



 



 



今後の展開



 今後、酸化チタンの微細構造や積層構造をさらに精密に制御し、光吸収材料に応じて電子の流れを最適化できる電子輸送層の開発を進めます。同じ結晶相の酸化チタンの組み合わせに着目して示した「エネルギーの階段」という材料設計を発展させることで、ペロブスカイト太陽電池のさらなる高性能化に加え、光吸収材料の選択肢を広げ、多彩な次世代太陽電池への展開につながることが期待されます。また、本研究で得られた材料設計の考え方は、酸化チタン以外の酸化物半導体材料への展開も期待されます。



 



 



研究支援



 本研究は、小川科学技術財団、国際クラブ、民間企業との共同研究促進事業、科学研究費助成事業の基盤研究(C)24K08492の支援を受けて実施したものです。



 



 



用語解説



注1) ルチル:酸化チタン(TiO₂)の代表的な結晶構造の一つ。他にアナターゼやブルッカイト等が知られている。



注2) チタンオキソクラスター:低温化学合成を利用して酸化チタンのTi–O–Ti結合を形成するための原料



 



 



関連する過去のプレスリリース



異なる酸化チタン結晶種を同一溶液中で連続成膜:世界初の成功(2025年8月5日)



https://www.gifu-u.ac.jp/news/research/2025/08/entry05-14518.html



 



 



論文情報



雑誌名:Journal of Materials Chemistry C



論文タイトル: Spatially Modulated Energy Alignment in Single-Phase Rutile TiO₂ Bilayer Electron Transport Layers for Perovskite Solar Cells



著者:Kazuhiro Manseki*, Shinapol Toranathumkul, So Yokoyama,



Daisuke Takemoto 



(*)Corresponding Author 



DOI: 10.1039/D6TC01828A



 



 



 



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