EY調査、2026年に通信業界が直面するリスクトップ10を発表
■ 通信業界が直面するリスクのトップはプライバシー、セキュリティ、信頼性。責任あるAIへの注目が高まる
■ 「新しいテクノロジーによるトランスフォーメーションが効果的に実行されていない」が2位に
■ 地政学的環境の変化が初めて5位にランクイン、業界外の不確実性が増大
EYは、通信業界に関する最新の調査「2026年に通信業界が直面するリスクトップ10 」を発行しました。本調査によると、「プライバシー、セキュリティ、信頼面における喫緊の課題の変化を軽視している」が前年同様にトップを維持し、これらの分野における課題の緊急性が依然として高いことが示されました。
EYが毎年発表する本調査によれば、責任あるAI(人工知能)に対する通信業界の取り組みは不十分であり、サイバーセキュリティ部門についても、変化し続ける脅威に対する備えが不十分とされています。さらに、地政学的環境の変化が新たな課題をもたらす一方で、デジタル主権に向けた機運を活用するチャンスも存在するようです。
EY Responsible AI Survey*1 によれば、AI関連のリスクの特定・評価・軽減に向けた堅牢な方法論を確立していると回答したのは、産業界全体では66%だったのに対し、通信業界では59%にとどまりました。AIシステムに対する信頼性を構築する具体的な方策に関しても、通信業界では他業界に比べて、内部監査やAI倫理ポリシー、第三者認証の活用が進んでいない傾向が見られます。
さらに懸念されるのは、通信業界のサイバーセキュリティ部門が、進化するサイバー脅威への対応に追われる中で、自らの役割と権限の拡張に苦慮している点です。最近のEYの調査*2 によれば、通信業界の最高情報セキュリティ責任者(CISO)が主な社内課題として挙げたのは、サイバーセキュリティへの予算が不十分(55%)、サイバーセキュリティと企業イノベーションのスピードの両立が困難(40%)、部門横断的な意思決定の場にサイバーセキュリティの視点が十分に反映されていない(36%)でした。サイバーセキュリティ部門の戦略的な影響力を高めるには、組織全体での取り組みの強化が求められます。
EYグローバル・テレコミュニケーションズ・リーダーCédric Forayのコメント:
「AIに対する信頼性を高める方策の導入に関して、通信業界は他の業界に後れを取っているようです。顧客がAIを受け入れてくれるとは限らないため、責任あるAIの枠組みに一層注力することが不可欠です。その一環として、通信企業の経営陣は、サイバーセキュリティの専門家と定期的に連携し、自社の取り組みが戦略的に妥当かどうかを確認する必要があります」
新しいテクノロジーによるトランスフォーメーションが効果的に実行されていない
新しいテクノロジーによる変革を進める難しさが今年は2位になりました。AI計画の拡大を阻む要因はいくつかあります。EY Responsible AI Pulse Survey*3 によれば、AI導入に関して通信業界のCEOが特に懸念しているのは「リソースの制約」と「効果的なガバナンスの枠組みを策定する難しさ」(ともに55%)で、これに複雑化する規制(53%)、ユースケースの優先順位付けに関する課題(40%)が続いています。こうした不確実性を背景に、企業のAIに対する対応には大きなばらつきが見られます。33%の企業が、これまでの成果を受けて今後のAI投資を加速させる予定だとしている一方、ほぼ同じ割合の企業(32%)は、今後のAI投資の縮小や再考を検討しています。
こうした課題に加えて、通信業界はレガシーITシステムや旧式ネットワーク技術の廃止の必要性にも直面しています。効率性と俊敏性を高めるには、これらの廃止が不可欠だからです。
新しいテクノロジーに関する課題は、レガシーITやネットワーク要素の廃止に対する長年の圧力が急速に高まっていることで、さらに複雑化しています。ネットワークの停止は、モバイル(2G・3Gネットワーク)と固定回線(メタル回線)の両方で進行中です。こうした移行の過程では、ネットワークの信頼性を維持し、必要に応じて顧客のデバイスやサービスのアップグレードを管理するために、リスクを慎重に管理・軽減することが不可欠です。
人材、スキル、職場文化への対応が不十分
今回のレポートでは、人材とスキルが第3位に挙げられました。ネットワークやIT機能の自動化の進歩、社内でのプラットフォーム開発、マルチベンダーテクノロジーソリューションの統合などの動きを受けて、通信業界は新たなスキルを獲得する必要に迫られています。業界調査*4によれば、こうした要因を背景に、特定のスキルに対する需要が高まっています。特に需要が高い職種・能力は、サイバーセキュリティ(67%)、AIおよび機械学習(65%)、ITインフラストラクチャ(63%)、データサイエンス(60%)です。こうした職種は人材確保が特に難しく、阻害要因としては、当該スキルを持つ人材の不足、企業による獲得競争の激化、そしてテック業界や金融サービス業界などに比べて通信業界の給与水準が競争力に欠けることなどが挙げられます。
EYグローバル・テクノロジー、メディア・エンターテインメント、テレコム(TMT)、Adrian Baschnongaのコメント:
「通信業界のスキル不足は、ますます深刻化しています。とりわけ、新たな顧客価値を創出するための適切な能力を確保しつつ、AIなどの分野で新たな成長機会を模索する事業者にとっては、喫緊の課題となっています。新たな人材獲得をめぐる競争が激化するなか、リスキリングやアップスキリング戦略の重要性がこれまで以上に高まっています。一方で、テクノロジーパートナーとの新たな連携を通じて、人材ギャップへの対応を図ることも可能です。今後、企業の各部門や事業分野において新たなスキルや能力の効果を最大化するには、連携の強化を含む職場文化の変革も不可欠です」
地政学的緊張の高まりが外的な不確実性をさらに増幅
通信業界が直面する外的圧力は、現在の地政学的環境により一層強まっており、懸念材料としてトップ10リスクの5位にランキングされています。2025年5月版のEY CEO Outlook Study*5によれば、通信企業の経営幹部の22%が、2025年の成長への脅威として「地政学的緊張」を挙げており、「マクロ経済の不確実性の拡大」(18%)、「貿易・財政政策関連の動向」(13%)を上回っています。通信業界のCEOは世界の通商問題にも敏感で、17%が米日間の緊張が自社事業に最大の影響を及ぼすと回答し、次いで米中間の緊張が13%となっています。
通信業界が直接的に受ける関税の影響は比較的小さいものの、端末メーカーやネットワークベンダーといった上流のサプライヤーには大きな影響が及ぶ可能性があります。通信業界の回答者の大多数(82%)が、価格上昇分を顧客に転嫁できると自信を示していますが、端末価格の上昇は買い換えサイクルの長期化につながる可能性があります。こうした状況を背景に、企業内での地政学的戦略行動が増加傾向にあります。EYによる別の調査*6 によれば、2025年には地政学的戦略行動の37%が組織の複数のレベルで実施されており、2021年の24%から増加しています。
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<日本の視点> EY Japanテレコムセクター・コンサルティングリーダー EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 テクノロジー/メディア・エンターテインメント/テレコムセクター ディレクター 宮内 亮
日本では経済安全保障政策の下、通信分野が重要インフラに位置づけられており、通信各社は地政学的リスクへの備えを強化しています。台湾情勢の緊迫化や米中対立の激化によるサプライチェーン遮断は、通信機器の調達・運用に大きな影響を及ぼしかねない懸念です。また、円安や金利上昇、エネルギー価格高騰といったマクロ経済の逆風も、コスト増加を通じて通信事業の収益性を圧迫するリスクとなっています。
一方、技術面では、AI活用とサイバーセキュリティに関連する新たな課題が顕在化しています。ネットワーク運用の最適化・自動化にAIを導入する動きが進む中、AIの誤作動や判断ミスによる障害発生リスクに注意が必要です。さらに、AIモデルの安全性や説明可能性(ブラックボックス問題)の課題も指摘されており、AIの判断過程が不透明では誤判断時の原因究明や改善が困難になる懸念があります。加えて、通信インフラに対するサイバー攻撃も脅威です。地政学緊張の高まりにつれて企業や政府機関への攻撃は高度化・増加し、社会インフラへの被害例も増えています。
経済安全保障推進法の施行により、通信を含む基幹インフラ事業者にはサイバー攻撃によるサービス停止リスクを最小化することが求められており、各社はAIによる異常検知やゼロトラスト化など防御体制の強化に取り組んでいます。
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EY-Parthenon EMEIAリーダー、地政学的戦略ビジネスグループのFamke Krumbmüllerのコメント:
「地政学的環境の変化はさまざまな課題をもたらす一方で、通信業界に新たな価値創出の機会を提供してもいます。国家によるテクノロジー主権確立の動きは、通信業界には追い風になるかもしれません」
Forayのコメント:
「デジタル政策がソブリンクラウドやAIインフラサービスの整備を重視する方向へと転換する中で、こうした動きは、通信業界がインフラの担い手として国家のテクノロジー分野の発展を支える、より明確な役割を果たす可能性を開くものです。レジリエンスと競争力を維持するには、通信事業者は新たな脅威を継続的に監視するとともに、今後顕在化するリスクを予測し、対応していく必要があります。リスク状況は常に変化するものと認識し、現在のリスクがどう変化するかを見極め、戦略を柔軟に適応させることが不可欠です」
2026年の通信業界のリスクトップ10は以下の通りです。
1. プライバシー、セキュリティ、信頼面における喫緊の課題の変化を軽視している
2. 新しいテクノロジーによるトランスフォーメーションが効果的に実行されていない
3. 人材、スキル、職場文化への対応が不十分
4. ネットワークの価値提案とパフォーマンスが不十分
5. 地政学的環境の変化に十分に対応できていない
6. 新たなビジネスモデルを活用する能力が欠如している
7. 外部エコシステムとの関わり方が効果的ではない
8. 顧客ニーズの変化にうまく対応できていない
9. サステナビリティへの取り組みの管理がずさんである
10. 価値創造を最大化するための事業モデルが最適ではない
リスクのトップ10をまとめたレポートの全文はこちらをご覧ください。
通信業界が直面するリスクトップ10 | EY Japan
※本ニュースリリースは、2025年10月7日(現地時間)にEYが発表したニュースリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
英語版ニュースリリース: Telco sector faces rising risks in AI, ineffective transformation and evolving geopolitical environment | EY - Global
参照記事
*1 EY Responsible AI Survey, June 2025(産業界の上級管理職975人が回答、うち通信業界は59人)
*2 EY Global Cybersecurity Leadership Insights Study, May 2025(経営幹部およびサイバーセキュリティのトップ551人が回答、うち通信業界は53人)
*3EY Responsible AI Survey, June 2025 (産業界の上級管理職975人が回答、うち通信業界は59人)
*4TM Forum “Finding skills for the future: inside the telco talent revolution”, 2024 (通信業界の上級管理職48人を対象にした調査に基づく)
*5 EY CEO Outlook Study, April 2025 (回答者に通信業界の60人を含む)
*6 EY Geostrategy in Practice Study, April 2025(全産業の上級管理職1000人を対象にした調査に基づく)
本調査について:目的と方法
2026年に通信業界が直面するリスクトップ10」は、EYが毎年発表している調査レポートの最新版で、テレコムセクターが直面しているリスクのうち、最も重要なものを特定することを目的としています。本調査では、EYのインサイトプログラムを活用し、一次調査および二次調査から得られたインサイトに、セクター専門家としての進化し続ける視点を加えて分析を行っています。
〈EYについて〉
EYは、クライアント、EYのメンバー、社会、そして地球のために新たな価値を創出するとともに、資本市場における信頼を確立していくことで、より良い社会の構築を目指しています。 データ、AI、および先進テクノロジーの活用により、EYのチームはクライアントが確信を持って未来を形づくるための支援を行い、現在、そして未来における喫緊の課題への解決策を導き出します。 EYのチームの活動領域は、アシュアランス、コンサルティング、税務、ストラテジー、トランザクションの全領域にわたります。蓄積した業界の知見やグローバルに連携したさまざまな分野にわたるネットワーク、多様なエコシステムパートナーに支えられ、150以上の国と地域でサービスを提供しています。
All in to shape the future with confidence.
EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。EYによる個人情報の取得・利用の方法や、データ保護に関する法令により個人情報の主体が有する権利については、ey.com/privacyをご確認ください。EYのメンバーファームは、現地の法令により禁止されている場合、法務サービスを提供することはありません。EYについて詳しくは、ey.comをご覧ください。
本ニュースリリースは、EYのグローバルネットワークのメンバーファームであるEYGM Limitedが発行したもので、顧客サービスは提供していません。
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