世界デジタル政府ランキング2024年版公開
早稲田大学総合研究機構電子政府・自治体研究所は、2024年の世界デジタル政府ランキングを発表しました。今回のランキングでシンガポールが7年ぶりに1位を獲得し、デンマークは3位にランクダウンしました。日本は昨年同様11位に留まり、トップ10入りを逃しました。ランキングはデジタル政府の進捗度を多角的に評価し、デジタル技術の利活用が国民生活にどのように寄与しているかを分析しています。特に、AIの活用とデジタル格差への対応が重要なトピックとなり、日本にはデジタル庁の権限強化やAI活用による効率化が求められています。
2024年12月4日
早稲田大学
早稲田大学総合研究機構電子政府・自治体研究所
世界デジタル政府ランキング2024年版公開
詳細は、早稲田大学HPをご覧ください。
発表のポイント
●シンガポールが2017年以来の1位に。昨年まで3年連続で1位だったデンマークは3位で、サウジアラビアとタイがデジタル先進国トップ20の仲間入り
● 日本は昨年に引き続きトップ10に及ばず11位。市民中心の行政サービス、標準化、高齢化対策などSDGsの遅れが目立つ
● ランキング上位国はより効率化や生産性の向上、国民のデジタル格差対応に資する行政サービスを重視する特徴がある
早稲田大学総合研究機構電子政府・自治体研究所(東京都新宿区、所長:加藤篤史。以下、「当研究所」)はこのたび、「第19回早稲田大学世界デジタル政府ランキング2024」を発表しました。本研究調査分析では、デジタル先進国66か国・地域を対象に、国民生活に不可欠なデジタル政府の進捗度を主要10指標で多角的に評価しており、デジタル社会推進へ貢献しています。当研究所は国連、世界銀行、アジア太平洋経済協力(APEC)、OECD、EU、国連大学をはじめ世界の官民関係機関と協力しています。
2024年度調査結果(世界デジタル政府ランキング2024 総合ランキング)
当研究所のランキングはデジタル政府の潮流を理解する上で十分なビッグデータを有しています。今回は、前年度に引き続き66か国・地域を対象にし、評価しています。19回目を迎えた2024年度のランキング総合順位は表1の通りです。
今年はシンガポールが7年ぶりに1位に返り咲きました。デンマークは3年連続で保持してきた1位の座をシンガポールに明け渡し、3位にランクダウンしました。2位は昨年3位から順位を一つ上げた英国、4位は米国、5位の韓国は2年前から順位を一ランクずつ上げています。トップ5か国のデジタル化進捗度の差は縮み、上位5位までがスコア100点中92以上を死守しています。6位のオランダも市民参加、行政改革が昨年以上に評価され8位から順位を2つ上げました。7位にエストニア、8位は今年大躍進のサウジアラビア、9位にドイツ、10位にニュージーランドがランクインしました。残念ながら日本は昨年18年目にして初めてトップ10位圏外となり、今年も圏内に戻ることができず、昨年度と同じ11位に止まりました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202412031025-O1-o19dJQhq】
これらの進捗度の差異をもたらす多様な要因は、当研究所のHP(https://idg-waseda.jp/ranking_jp.htm)に掲載中の報告書にまとめています。報告書は、日本語版、並びに約280頁の英語版を公開しており、後者はデジタル政府を分析する際に作成した上位25か国の国別評価レポートを含め各国の諸課題を多面的に分析しています。このほか、報告書には、ランキング内容を解説するだけでなく、過去19年間にみる世界のデジタル政府の進展、総合ランキングの推移、主要国のデジタル政策、注目の新潮流や提言などのテーマをまとめています。
報告書の概要
本報告書は、官民のDXとデジタルエコノミーの双方に関するさまざまなデータと情報を提供します。世界的にDX・AIの情報提供が加速する中、デジタル先進国と後進国の格差、並びにイノベーションの格差が拡大していることに警鐘を鳴らしています。
2024 年の本ランキングは、政府活動におけるデジタル技術の利活用の重要な傾向を示しています。報告書の分析では、これまでもAI登場など特筆すべきいくつかの新しいイノベーション傾向を見出してきました。今年度はAIの利活用がより現実味を増し、効率性、生産性のみならず、信頼性、透明性の確保といったデジタル政府のガバナンスの根幹を改めて見直す転換点になっています。
2024年最大のトピックは生成AIの実装です。2023年と比較し、開発競争がさらに激化し、文章から画像にまで対象が拡大していることが、変化として挙げられます。2024 年はAIの主要国行政への応用事例を論述しています。生成AIの活用が議論展開される中で、透明性やガバナンスに寄与するデジタル政府の取り組みに注目が集まっています。ランキング上位国はより効率化や生産性の向上、国民のデジタル格差対応に資する行政サービスを重視する特徴がみられます。各国の政府部門は、デジタル格差の縮小にむけてトップを走るデジタル先進国のDXに学び、そのレベルに追随する傾向は昨年以上に進んできました。
上記の重大ハイライトに加えて、今回はデジタル政府に関する以下の解決すべき3 項目のグローバルな社会・経済・政治的課題を取り上げています。
(1) 高齢社会や少子化等の人口問題対応
(2) 都市と農村の地域差異や年代層などローカルのコミュニティに見られるデジタル・リテラシー格差
(3) 不足するデジタル人材の育成と最適配置
加えて、国連 SDGs2030には、17部門の達成目標があります。2030年まで残り6年となり、目標達成に向けてより一層の努力と目標必達が求められる中、デジタル政府の利活用については残念ながら高評価とは言い難いのが現状です。デジタル政府は、各SDGs部門に必要なスムーズなDXを積極的にサポートしていくべきです。
本報告書では次の点についても分析、論究しています。
(1) 英語版はデジタル対象66か国・地域のスコア、並びに約280頁に及ぶトップ25か国の国別評価レポート
(2) 19回の発表に基づくデジタル政府の歴史的推移の特徴
(3) デジタル政府の新潮流や経済・社会に与える影響を「DX」、「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」、「ヘルスケア」、「生成AI」、「個人情報保護」、「スマートシティ」、「IT人材」、「サイバーセキュリティ」、「SDGs」分野などを切り口に解説
日本の課題
日本の課題と構造的弱点は、次のように総括できます。
① 司令塔機関としてのデジタル庁の権限の実効性に課題が残ります。重複投資の温床となる官庁間の縦割りの弊害、遅れる行政DXやスピード感の不足は継続案件です。
② 本来、効率性追求、人手不足を解消するはずのAIを必要とする小規模自治体での財政、デジタル格差は、行政運営の機能や継続性に影響を及ぼしています。一時しのぎの支援策ではなく、国はサステナブルな自治体運営をどうすべきか、特に地方の課題解決が急務です。
③ マイナンバーカードの最大の課題は、安定的稼働とユーザビリティの確保。したがって、利活用率の維持促進のためヒューマンエラー解消など行政の信頼は必須です。
④ 急増するサイバーセキュリティ・トラブル対策及び関連するリテラシー向上のための国民各層への教育訓練は不可欠です。
日本への提言
デジタル政府の最優先事項として次の2項目の提言が挙げられます。
① 日本のデジタル政府が誕生してまだ20年余しか経過していません。進捗に差こそあれ、世界もほぼ同じ歴史を辿っています。本報告は19回に及ぶ研究調査分析の集大成ですが、19年間の時系列分析から得た貴重な歴史的変遷を評価分析しています。将来のデジタル政府像(モデル)を予見するうえで必要な施策を多面的に論述しています。確実に急成長続けるAIが人類社会に挑戦する2030年代に前倒しの“シンギュラリティ”事象を歴史的教訓から早期に学ぶべきと思います。
② 今やるべきことは、世界に類を見ない日本の少子・超高齢・人口減少社会を見据え、デジタル活用による官民連携やイノベーションの推進による行財政のコスト削減や効率化、積極的且つ最適なデジタル投資です。すなわち、直面するデジタル社会と超高齢社会の融合によって、AI政府創生へスピーディな行財政改革と市民中心の行政サービスの実装が求められます。
早稲田大学世界デジタル政府ランキングを創設した小尾敏夫名誉教授が貢献してきた国連ITU、OECD、APEC、ユネスコ、国連経済社会局など国際機関はDX、デジタル・イノベーション指向に大きく舵を切っています。本報告書が描くグローバルな未来AIデジタル社会へのチャレンジがスタートしています。
「早稲田大学世界デジタル政府ランキング」とは
デジタル対象国66か国のデジタル政府の進捗度を主要10指標で多角的に評価する本研究調査分析は、2005年に始まり、今年で19年目を迎えました。
各10指標「デジタル・インフラ整備」「行財政最適化」「アプリケーション」「ポータルサイト」「CIO(最高情報責任者)」「戦略・振興」「市民参加」「オープン政府データ・DX」「セキュリティ」「先端技術」ごとのベンチマークで分析しています。
隔年発表の国連調査では4項目のベンチマークを指標として使用していますが、本調査では前述の計 10 項目の部門別指標を活用し多岐詳細にわたる19回に及ぶ分析実績があります。当研究所の総合性、厳格な中立性、高度な学術的分析力が世界中から評価されています。とりわけ、最近出色であるDXやAI活用もランキング分析の評価指標に追記し分析力を向上させています。
本評価モデルは研究所初代所長の小尾敏夫名誉教授によって開発され、ランキング手法が確立されました。当研究所は国際機関APECのデジタル政府研究センターも兼務しています。本研究調査では最新で、かつ最も正確な情報を得てデータ分析及び評価するために、NPO法人国際CIO学会(理事長/早稲田大学電子政府・自治体研究所研究院教授:岩﨑尚子)の世界組織であるInternational Academy of CIO傘下の提携大学を代表する専門家による合同研究調査チームを編成しています。
連携大学は、北京大学(中国)、ジョージ・メースン大学(米国)、ボッコーニ大学(伊)、トルク大学(フィンランド)、タマサート大学(タイ)、大統領連邦政経大学(ロシア)、ラサール大学(フィリピン)、バンドン工科大学(インドネシア)、それに統括拠点の早稲田大学(日本)です。
研究調査プロセスでは専門家チームが意見交換し、さらに各国政府デジタル部門、国連、OECD、世界銀行、APEC、EU、G20等国際機関との意見交換を重視しています。最終的に岩﨑教授の指導の下に完成させています。
電子政府・自治体研究所はデジタル社会の世界的連携と発展に向けてデジタル政府活動を具体的指標にて分析し、また当研究所は国連本部とSDGsテーマなどへの課題解決フォーラムを共催しています。
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