山善「第1回 ものづくり産業 業種別課題と対策調査」主要7業種 計700社の直近の課題と対策を調査
山善によると、日本のものづくり産業において、直近の課題として「人材不足への対応」が最も重大であり、その解決策として「正社員の採用対象層の拡大」がトップに挙げられました。この調査は、ものづくり産業の7大業種にわたる企業の管理職以上を対象にしたもので、直近3年間に浮上した新たな課題として「エネルギー価格高騰への対応」や「AI活用」も注目されています。しかし、対策を講じても、4割以上の企業が期待される成果を達成できていないと回答しています。大企業では特に「カーボンニュートラルへの対応」や「IT活用/DX推進」が課題として重要視され、一方で、課題達成の障壁として「人手不足」「専門人材の欠如」「資金の不足」が挙げられています。
2024年12月5日
株式会社山善
日本の産業構造を支えるものづくり産業の回復と成長に向けて ものづくり企業主要7業種計700社の直近の課題と対策を調査 山善「第1回 ものづくり産業 業種別課題と対策調査」 ものづくり産業全体で「直面している課題がある」7割以上。 課題1位は「人材不足への対応」、その対策は「正社員の採用対象層の拡大」がトップ 直近では「エネルギー価格高騰への対応」「AI活用」「人件費高騰への対応」が課題に 浮上!対策実施企業の4割以上が「成果が出ていない」 業種別では『一般機械』『電気機械』は「IT活用/DX推進」が課題1位に 企業規模・海外取引有無ごとでもギャップが浮き彫りに・・・
ものづくり商社のリーディングカンパニーである株式会社山善(本社:大阪市西区、代表取締役社長:岸田貢司)は、日本の産業構造を支えるものづくり産業の回復と成長に向けて、ものづくり産業7大業種別の直近の課題と解決策について、ものづくり産業に携わる管理職以上の責任者700人を対象に調査した「第1回 ものづくり産業 業種別課題と対策調査」の結果を発表いたします。
Ⅰ.ものづくり産業が直面する直近3年以内の課題と以前からの課題
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202412031024-O1-mEaNQyB6】
◆業界全体で、71.0%が以前から直面している課題があると回答[図1]。
◆直近3年以内に直面するようになった課題と以前から直面している課題のランキングの変化を見るとTOP3は同順位である一方、「エネルギー価格高騰への対応」「AI活用」「人件費高騰への対応」が浮上しています[図2] [図3]。
◆さらに、直近3年以内の課題に「物流費高騰への対応」(以前から直面している課題では11位)や「カーボンニュートラルへの対応」(以前から直面している課題では13位)がTOP10以内にランクインしていることが分かりました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202412031024-O2-56Yw2lE3】
【調査トピック一覧】
Ⅰ.ものづくり産業が直面する直近3年以内の課題と以前からの課題
・業界全体では71.0%が以前から直面している課題があると回答。
・課題としては直近3年以内・以前から共に「人材不足への対応」がトップ。直近3年以内では「エネルギー価格高騰への対応」「AI活用」「人件費高騰への対応」が上位に浮上。
・直近3年以内の課題に「物流費高騰への対応」(14.6%)や「カーボンニュートラルへの対応」(12.6%)がTOP10以内にランクイン。
Ⅱ. ものづくり産業が直面する直近の課題トップ5に向けた対策について
・課題1位「人材不足への対応」に向けた対策は「正社員の採用対象層の拡大」がトップに。「外国人人材・女性従業員の雇用拡大」実施企業も。
・課題2位「IT活用/DX推進」に向けた対策は「専門人材の確保」がトップに。「シニア人材の活躍」「従業員の知識・スキルの底上げ」も重要に。
・課題3位「原材料価格高騰への対応」に向けた対策は「販売製品の値上げ」がトップに。「サプライチェーンの見直し・分散」などもランクイン。
Ⅲ.「対策の成果」について
・対策を実施していると答えた企業のうち、4割以上が「成果が出ていない」と回答。
Ⅳ.「対策が実施できない理由」について
・対策実施状況については、2割以上が「対策は実施できていない/わからない」。
・実施できていない課題は「後継者不足への対応」がトップ、2位「サプライチェーンの安定化」。さらに「グローバル化」に関連した課題も対応できていないことが明らかに。
・課題への対策ができていない理由は「人手」「専門人材」「資金・予算」が足りない。
Ⅴ.従業員数別、海外取引有無別での比較
・大企業ほど「カーボンニュートラルへの対応」や「IT活用/DX推進」「AI活用」が課題に。
・海外取引ありの企業の方が「IT活用/DX推進」や「AI活用」を課題と感じている企業が多い。
Ⅵ.ものづくり産業7大業種別の課題とその対策
・『一般機械』は、直近の課題として「生産現場の環境改善」がランクイン。「IT活用/DX推進」が課題と回答した割合が全業種で最も高く約4割。
・『電気機械』は、直近の課題として「AI活用」「エネルギー価格高騰への対応」が浮上。「IT活用/DX推進」の割合が『一般機械』に次いで高い結果に。
・『輸送用機械』は、直近の課題として「原材料価格高騰」「エネルギー価格高騰」への対応が浮上。「AI活用」「カーボンニュートラルへの対応」の割合が全業種で最も高い結果に。
・『鉄鋼業』は、直近の課題として、「AI活用」「カーボンニュートラルへの対策」がランクイン。「人件費高騰への対応」も浮上し、最多の対策は「販売製品の値上げ」。
・『化学工業』は、「カーボンニュートラルへの対応」の割合が『輸送用機械』に次いで高い。一方、直近では「AI活用」「カーボンニュートラルへの対応」が浮上。
・『非鉄金属』は、「エネルギー価格高騰」「業務効率化、生産性向上」「設備関連の資金調達」の3つの課題が全業種で最多。「エネルギー価格高騰への対応」「AI活用」も浮上。
・『金属製品』は、「人材不足」「原材料価格高騰」「人件費高騰」「後継者不足」への対応を課題とする割合がどの業種よりも高い結果に。
・調査対象:全国の20~69歳の男女のうちものづくり産業(一般機械、電気機械、輸送用機械、
鉄鋼業、化学工業、非鉄金属、金属製品)に携わる管理職以上の責任者 700人
・調査方法:インターネット調査
・調査期間:2024年8月2日(金)~8月5日(月)
※構成比(%)は小数第2位以下を四捨五入しているため、合計しても100にならない場合があります。
【調査結果詳細】
Ⅱ.ものづくり産業が直面する直近の課題に向けた対策
ものづくり産業が直近3年以内に直面するようになった課題で上位5項目にについて、企業がどのような対策を実施しているのかをお聞きしました。
◆課題1位「人材不足への対応」に向けた対策
「正社員の採用対象層の拡大」がトップに。
「外国人人材・女性従業員の雇用拡大」実施企業も
直近3年以内に直面するようになった課題1位として挙がった「人材不足への対応」について、実施している対策として、「正社員の採用対象層の拡大」(36.4%)がトップとなりました[図4]。
次いで、「定年の引き上げ、シニア人材の再雇用」(30.8%)、「専門人材の確保(採用・委託含む)」(26.2%)が上位に挙げられています。また、「外国人人材の雇用拡大」(7位16.4%)や「女性従業員の雇用拡大」(9位14. 0%)を実施する企業も見受けられました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202412031024-O3-ZYw23FwL】
◆課題2位「IT活用/DX推進」に向けた対策
「専門人材の確保」がトップに。「定年の引き上げ、シニア人材の活躍」「従業員の知識・スキルの底上げ」も重要に
課題2位に挙がった「IT活用/DX推進」については、「専門人材の確保(採用・委託含む)」(35.6%)が実施している対策のトップとなりました[図5]。
「定年の引き上げ、シニア人材の再雇用」「従業員の知識・スキルの底上げ」(同率19.2%)も5位に入っており、DX推進においても人材確保が重要といえそうです。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202412031024-O4-5VqSJV0C】
◆課題3位「原材料価格高騰への対応」に向けた対策
「販売製品の値上げ」がトップに。「サプライチェーンの見直し・分散」などもランクイン
課題3位として挙がった「原料価格高騰への対応」に向けた対策は、「販売製品の値上げ」(37.1%)がトップとなりました[図6]。約4割の企業が値上げによってコスト高に対応している様子がうかがえます。
次いで「製造工程の見直し」(18.9%)、「節電・節水」(16.0%)が上位にランクインしました。また、「サプライチェーンの評価・見直し」(4位14.9%)、「原材料調達先およびサプライチェーンの分散」(6位10.9%)など、取引先についての回答も見受けられました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202412031024-O5-2k4YYH24】
◆課題4位「エネルギー価格高騰への対応」に向けた対策
「販売製品の値上げ」がトップ。「再生可能エネルギーの導入」「廃棄物削減」「消費電力の見える化」なども実施
課題4位として挙がった「エネルギー価格高騰への対応」に向けた対策は、「販売製品の値上げ」(29.1%)がトップとなりました[図7]。次いで、「節電・節水」(25.4%)、「製造工程の見直し」(18.7%)が上位に挙げられています。
その他、「再生可能エネルギーの導入」(16.4%)や「廃棄物削減」(13.4%)、「消費電力の見える化」(9.7%)など、省エネにつながるような対策も挙がっています。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202412031024-O6-YLJOGl0h】
◆課題5位「AI活用」に向けた対策
「専門人材の確保」がトップ。
「対策は実施できていない/わからない」が3割も
課題5位として挙がった「AI活用」に向けた対策は、「専門人材の確保(採用・委託含む)」(33.8%)がトップとなりました[図8]。
また、「対策は実施できていない/わからない」が3割となり、多くの企業が対応し切れていない分野であるといえそうです。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202412031024-O7-7jl0fbmh】
Ⅲ.「対策の成果」について
直近3年以内に直面するようになった課題への対策について成果が出ているかどうか聞きました。
◆4割以上の企業が「成果が出ていない」と回答
直近3年以内に直面するようになった課題について、何かしらの対策を実施していると回答した人のうち、「成果が出ていない(「あまり成果が出ていない」「全く成果が出ていない」の計)と回答した人は44.1%となりました[図9]。
対策を実施していても、半数近くの企業が成果を得ることができていない現状がうかがえました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202412031024-O8-GJo9t2d0】
ものづくり産業に特化した商社に勤務して30年以上。業界の課題解決に貢献する (株)山善 奥山 真吾による「直近3年以内に直面した課題」と「以前からの課題」の解説
「以前」から「直近」まで続く課題1位の「人手不足」については、少子高齢化による生産年齢人口の減少が背景としてありますが、実はコロナ禍前後で、新たな要因が加わったと考えます。正社員としてひとつの企業で定年まで働く終身雇用を目指す方よりも、コロナ禍後は「スキルアップのために、転職するのもひとつの方法だ」と考える人が、より増えているように感じます。優秀な人材を流出させず確保するには、やはり賃金アップが重要であり、それが6位の「人件費高騰」にも繋がっているようです。
6位から4位に上がった「エネルギー価格高騰への対応」については、ロシアのウクライナ侵攻を背景に、2022年の春ごろから法人の電気代が高騰し、経営を圧迫していることが理由であると考えます。当社でも顧客企業から省エネ設備のお問い合わせが非常に増えています。
8位から6位に上がった「人件費高騰」については、若い人材の賃金は上がっているのに中堅〜ベテラン社員の賃金が上がらないため人材が流出するケースも起きているようです。また、人材が流動的なため社員に企業文化が根付かない、企業文化が浸透しないため人材が固定しないという悪循環になることもあります。
一方、以前の課題の4位「業務効率化・生産性向上」が直近3年以内では8位に下がり、「AI活用」が7位から5位に上がってきているのは、ここ数年でAI技術が進化したことが理由です。以前は「業務効率化・生産性向上」の方策が曖昧だったところ、AI活用という対策が見えてきたと考えられます。一方で、AI活用には専門人材が不可欠であり、その確保が課題となっています。
以前は課題になっていなかったのに、直近3年以内の課題で8位に上がってきたのが「物流費の高騰への対応」です。2024年4月にトラックドライバーの労働時間の上限が規制されたことにより、輸送能力が不足する「物流の2024年問題」が起きています。それまでは、物流側よりも荷主側の立場が強かったのですが、近年は逆転しました。また、倉庫業では環境改善、省力化が進められています。
ランク外から10位に上がってきた、「カーボンニュートラルへの対応」にも注目したいところです。近年は、CO2削減やカーボンニュートラルに取り組んでいない企業は各方面から評価を得にくく、企業ブランドの低下を招くことに直結します。
具体的には、取引先からも消費者からも敬遠される、資金調達の場面で優遇されにくくなるということです。また、求職者や、在籍中の社員から「社会的責任を負わない会社だ」と判断された場合、人材の確保が難しくなります。
なお、カーボンニュートラルへの対応は、大手企業を中心に広がってきています。その理由は、欧米をマーケットにする場合はカーボンニュートラルへの対応が必須となるからです。中小企業や、アセアンでビジネスを展開している企業は、まだ対応に消極的なところが多いようです。
【担当者紹介】
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202412031024-O14-ZB988wTC】
株式会社山善 産業ソリューション事業部 戦略企画部長 奥山 真吾
1992年の入社以来、営業活動に従事した後、2021年10月より機工事業部 マーケティング部 副部長に就任。プライベートブランド商品の開発等に注力。2023年4月より現職。商品開発の他、仕入先メーカーの選定、展示会やウェビナーの企画・立案、カタログ制作、商品のプロモーション等の職務に当たっている。
Ⅵ.ものづくり産業7大業種別の課題比較
◆『一般機械』『電気機械』は「IT活用/DX推進」がトップ。「原材料価格高騰への対応」が『一般機械』と『鉄鋼業』以外の業種で2位。『輸送用機械』は「AI活用」、『金属製品』は「人件費高騰への対応」に対し、多業種と比べ課題を抱えている
業種別で直近3年以内に直面するようになった課題を比較しました。
『一般機械』『電気機械』では「IT活用/DX推進」と答えた人の割合が最も高く、その他5業種では「人材不足への対応」が最も高い課題となりました[図19]。
「原材料価格高騰への対応」が『一般機械』と『鉄鋼業』以外の業種で2位となっていますが、『一般機械』(13.0%)では7業種の中で最も順位の低い5位となっており、業種間でも差が見られます。また、『輸送用機械』では「AI活用」、『鉄鋼業』と『金属製品』では「人件費高騰への対応」が3位にランクインしています。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202412031024-O15-J29d3zFU】
■(株)山善 産業ソリューション事業部 奥山による解説
全体を見て、一般機械業種の一番の課題は「人材不足」ではなく「IT活用/DX推進」という意外な結果でした。金属製品業種の3位「人件費高騰への対応」については、これまで人件費を抑えていた中小企業が、人材確保のために改善を考え始めたことのあらわれだと思います。
全業種において「IT活用/DX推進」「AI活用」を課題だと感じている企業が多いのは、ここ数年でITやAI技術が急激に進み、業務改善に活かす可能性が広がったことによります。
※当ページは抜粋版になります。 業種別の調査結果など詳細はプレスリリース全文をご確認ください。
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