『第15回 歯科プレスセミナー』を開催
2024年10月29日、一般社団法人日本私立歯科大学協会は『第15回 歯科プレスセミナー』を開催しました。テーマは「我が国の地域歯科医療の偏在と将来」で、歯科医師数の減少や地域偏在、無歯科医地区の増加が取り上げられました。基調講演では、地方で問題となっている歯科医師不足とその影響が報告され、健康維持の重要性が強調されました。パネルトークでは、地域で活躍する歯科医師が、地元での歯科医療環境の実情や訪問歯科診療の普及に向けた意見を交換しました。また、次世代の人材確保の重要性と、多職種連携の必要性についても議論が行われました。参加者からは、歯科医療提供体制の地域格差を改善するために、政府と協力して取り組むべきとの声が上がりました。
2024年11月6日
一般社団法人 日本私立歯科大学協会
~「このままで大丈夫?!我が国の地域歯科医療」をテーマにした講演とパネルトーク~ 『第15回 歯科プレスセミナー』を開催
■基調講演:「健康寿命延伸に影響する歯科医療提供体制の偏在問題について」
■パネルトーク:「地方の歯科医師が語る、歯科医療の偏在と地域歯科医療の将来」
◇日時: 10月29日(火) 13:30~15:45
◇登壇者: ビデオメッセージ 公益社団法人 日本歯科医師会 会長 高橋 英登 氏
基調講演 公益社団法人 日本歯科医師会 日本歯科総合研究機構 主任研究員 恒石 美登里 氏
パネルトーク 【コーディネーター】
一般社団法人 日本私立歯科大学協会 専務理事 櫻井 孝
【パネリスト】
岩井歯科医院院長 (函館歯科医師会会長) 岩井 宏之 氏
医療法人 里山会 澄川歯科医院、匹見歯科診療所院長 澄川 裕之 氏
渋谷歯科診療所 院長 (長崎県歯科医師会会長) 渋谷 昌史 氏
一般社団法人 日本私立歯科大学協会 会長 羽村 章
一般社団法人 日本私立歯科大学協会 専務理事 櫻井 孝
一般社団法人 日本私立歯科大学協会(所在地:東京都千代田区、会長:羽村 章)は、2024年10月29日(火)に、アルカディア市ヶ谷(東京都千代田区)および、オンラインで『第15回 歯科プレスセミナー』を開催いたしました。
一般社団法人日本私立歯科大学協会は、皆様の健康的な生活を考え、サポートすることを目指し、歯科医療に関するテーマを取り上げて「歯科プレスセミナー」を開催してまいりました。
15回目となる今回は、歯科医師数が減少に転じ、地方では歯科医師不足が叫ばれるなど歯科医療の偏在が問題視されていることを背景に、「このままで大丈夫?!我が国の地域歯科医療」をテーマにしたセミナーを開催しました。当協会会長・羽村 章の挨拶と、専務理事・櫻井 孝による歯科医師の現状についての説明の後、公益社団法人 日本歯科医師会 会長 高橋 英登氏のビデオメッセージの上映、基調講演とパネルトークを行い、約70名の報道関係等の皆さまに、我が国の地域歯科医療の現状をお伝えすることができました。
基調講演では、歯科医師数が減少し、地方では無歯科医地区が増加していることが報告され、歯科医療提供の体制維持の重要性が語られました。パネルトークでは、地域に根差した医療に取り組む歯科医師3名に、地方ですでに進行している歯科医師不足の実態や課題点についてお話しいただくとともに、これから更なる普及が期待される訪問歯科診療や、次世代の人材確保に向けた意見交換を行いました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202411069440-O3-7UwwiBL1】
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左:基調講演(恒石 美登里氏)
右:パネルトーク(左から櫻井 孝、岩井 宏之 氏、澄川 裕之 氏、渋谷 昌史 氏)
<開会の挨拶>
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202411069440-O5-9Aiy1Dcm】
本セミナーの冒頭で当協会会長・羽村 章が登壇し、開会の挨拶を行いました。今回のセミナーのテーマになっている「歯科医師の不足と偏在化」が生じた背景として、2006年当時の厚生労働大臣と文部科学大臣間の歯科医師養成数抑制に関する確認書による「歯科医師国家試験合格者数と歯学部入学定員の抑制措置」の影響があることを説明しました。そして、日本全国、どこに住んでいても、良質な歯科医療を受けることができ、長生きができるような国にするために、「歯科医師国家試験を競争試験から本来の資格試験に戻すことと歯学部入学定員抑制措置の見直し・撤廃を、日本私立歯科大学協会を代表して、強く、政府に要望する」と話しました。そして、国民の皆様が安心して歯科医療が受けられるよう、私立歯科大学は引き続き優秀な歯科医師の養成に努めていく意向を伝えました。
<ビデオメッセージ>
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202411069440-O6-DG48z1y8】
本セミナーの開催にあたり、公益社団法人 日本歯科医師会 会長 高橋 英登氏のビデオメッセージが上映されました。
高橋氏は、冒頭で「日本の歯科界は変革期にある」と語り、2022年の調査で歯科医師数が減少に転じたことや、ご高齢の歯科医師の離職、歯科医療提供の地域偏在と無歯科医地区の増加、歯科医師を目指す若者の減少といった問題点を指摘し、国民の歯科医療が守れなくなることへの危機意識を示しました。このような状況に対応するため、日本歯科医師会は歯科大学との協議の場を設けるなどの取り組みを進めており、若い人たちが夢を持って歯科医師を志していただけるよう、国民から評価される歯科界を作るために努力をしていく方針を伝えました。
<基調講演>
【表:https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M104318/202411069440/_prw_OT1fl_v1kGs6Gh.png】
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202411069440-O8-R8fj8P31】
歯や口腔の健康は、認知症をはじめとするさまざまな全身疾患に影響を与える。健康な歯を残しオーラルフレイルを防ぐことで、健康寿命延伸に貢献が可能
歯科では、8020運動に加えてオーラルフレイル対策に取り組んでいる。なかでも8020運動は年々達成率が上昇しており、2016年には51.2%に達した。
歯の健康はさまざまな疾患に影響することが近年の研究で判明しており、例えば、歯数・義歯使用と認知症発症に関係があり、歯を失い義歯を使用していない場合は認知症発症リスクがわずか4年間で1.9倍になる。また、医療費の面から見ても、歯が残っている人ほど医科医療費が少ない傾向にあることがわかっている。歯科医療は、国民の健康寿命の延伸に貢献するものであり、今後は介護状態になる原因疾患の第一位である認知症や脳血管疾患、骨折・転倒の予防を視野に入れた医療提供が重要になると考える。
日本の歯科医師の数は約10万5,000人で、過去40年で初めて減少に転じた。歯科診療所の開設者または法人の代表者の数が減少し、勤務医の歯科医師が増加
2022年の「医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、歯科医師数は105,267人で、2020年と比較して2,176名(約2.0%)の減少となった。1982年の集計開始以降、歯科医師数は増加し続けており、減少に転じたのは今回が初である。また歯科診療所数は2016年の6万8,940カ所をピークに減少傾向にある中で、今回の統計では、歯科診療所の開設者または法人の代表者の数が5万6,767名で、2020年と比較して2,100名減少していていることが判明した。なかでも73~75歳の年代での減少が顕著であった。一方、診療所の勤務者数は568名の増加となった。歯科医師を性別で見ると、女性の歯科医師数は増加傾向にある。女性は開設者よりも勤務者が多いことが特徴で、女性の歯科医師が働きやすい環境づくりも今後の課題の一つである。
歯科診療所の減少とともに、次世代への継承も課題になっており、歯科診療所の開設者に将来の継承の予定について尋ねた調査(地域包括ケアシステムにおける「かかりつけ歯科医師が果たす今後の働き方等」)では、約9割が「候補者はいるが不明、予定なし」と回答している。
歯科医療提供の地域偏在が進行。歯科診療所数が増える都道府県がある一方、無歯科医地区の数が増加に転じ格差が拡大
このように、歯科医師数と歯科診療所数が減少する中、地域偏在の傾向も強まっている。2000年から2020年までの20年間で、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)では人口も歯科診療所数も増加しているが、東北(青森・秋田・福島)や山陰(島根・鳥取)地方では人口も歯科診療所数も減少している。歯科医療機関を容易に利用できない無歯科医地区(※)の数が、2022年には増加して784カ所になっていることも危惧すべき点である。
※無歯科医地区:歯科医療機関のない地域で、当該地区の中心的な場所を起点として、おおむね半径4㎞の区域内に50人以上が居住している地区であって、かつ容易に歯科医療機関を利用することができない地区のこと。
「歯や口腔の疾患」の患者数は、「高血圧症」の患者数を上回る。国民の健康を支えるために、歯科医療体制の維持は重要
歯科保健をライフステージごとに見ると乳幼児歯科健診に始まり就学時に定期的な健診が続くが、それ以降は任意の受診となる。国民の健康を守るために、国民皆歯科健診のような切れ目のない歯科健診制度が求められる。また、それに基づくPHR(個人の健康情報)の蓄積も重要である。
高齢者の受療率を見ると、入院などの理由により、高齢者の歯科医療の機会が失われる傾向がみられる。「もっと早くから歯の健診・治療をしておけばよかったと思うか」という質問に75.7%が「そう思う」(「そう思う」「ややそう思う」の合計)と回答しており、定期的な健診や、身近な歯科医療機関のあることが重要であることが推測される。
2020年の「患者調査(症状小分類別総患者数)」によると、「歯や口腔の疾患」の患者数が最も多く1,579万人で、「本態性(原発性)高血圧(症)」の患者数を上回っている。この患者数の実態からわかるように、歯科医療体制を維持することは喫緊の課題である。
歯科医師は“自分の口で食べる”ことをサポートする重要な役割を担っている。食べることは、すべての国民の楽しみであり、それを支える歯科医療提供の体制維持は、ますます重要になると考える。
<パネルトーク>
【表:https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M104318/202411069440/_prw_OT2fl_EL6gf0u3.png】
地域に密着した歯科医療を展開する歯科医師3名が登壇。北海道と島根県、長崎県と地域は異なるが、歯科医師の高齢化とリタイアの問題に直面し、無歯科医地区の増加や歯科医師の減少を危惧
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202411069440-O10-Tn4SIo9R】
冒頭で、登壇者は自己紹介を行い、それぞれの地域における歯科診療の状況について語りました。
無歯科医地区が日本で最も多い北海道で開業し、函館歯科医師会会長を務める岩井氏は、同歯科医師会の2割強を70代以上の高齢の歯科医師が占めている実態や、偏在や歯科医師不足により歯科診療所の予約が取りにくくなっていること、北海道全体で無歯科医地区がさらに増える見込みであることを説明しました。島根県で2カ所を拠点に広範なエリアで歯科医療を提供している澄川氏は、島根県の中山間地域に立地する診療所が大幅に減少するという予測データを紹介。その予測がくつがえることなく、減少に向かっているという実情を語りました。 長崎県歯科医師会会長を務める渋谷氏は、離島が多いという地域特性はあるものの、現状は歯科医師数の大きな減少は見られないと説明。人口・歯科医師数の減少は時代の流れであり、今後は地域偏在の解消や無歯科医地区発生の防止など、行政と連携した活動が必要になると話しました。
歯科医療は、治療から予防・管理の時代へ。今後さらに増えていく高齢者に向けた医療提供体制が必要
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202411069440-O12-8v0ok83u】
次に近年の歯科医療のニーズの変化について、トークが展開されました。
岩井氏は、口腔衛生への意識の高まりから、むし歯の患者が減るなど疾病構造が変化し、予防・管理の割合が増していることを指摘しました。このほか、特徴的な変化として、患者さんが歯科医師に要望を伝え質の高い治療を望むようになってきたこと、患者さんの多国籍化が進んでいることをあげました。澄川氏も、疾病構造の変化を実感しており、歯を削る外科的な治療から内科的な治療へと変化しており、高齢の患者さんがご自分で食べられるよう、口腔の筋力のサポートをすることも歯科医師の重要な役割であると話しました。渋谷氏も、レセプト数が増加していることから、治療ではなく予防・検診で受診する患者さんが増えていると推測。予防や管理をサポートする歯科衛生士が不足していることも課題として指摘しました。
「訪問歯科」の普及に向けて、窓口開設やAI導入などさまざまな施策が進展
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202411069440-O13-eGJG6tJv】
続いて、通院が難しい患者さんのための「訪問歯科診療」について意見交換を行いました。岩井氏は、北海道では通院できない方の相談窓口として開設された「在宅歯科診療連携室」をとりあげ、歯科衛生士が一次的に相談にあたって訪問診療につなげていくシステムについて説明。患者さんを取りこぼさない仕組みとして成功しているが、対応する協力歯科医師など人員が不足しており、体制整備が急務であると話しました。
澄川氏は、通院が難しい方を歯科医療につなげる仕組みとして、試験中の「AIによる簡易診断サポート」を紹介。口腔内の画像データをもとに迅速な判断を行うことで疾病の早期発見・治療に結び付けたり、歯科医師ではなく歯科衛生士が管理するなど、柔軟な対応が可能になると話しました。 渋谷氏は、長崎県歯科医師会が運営する、インターネットや電話で訪問診療の申し込みを受け付ける「長崎デンタルネット」を紹介しました。さらに、同歯科医師会では巡回歯科診療車も運営しており、今後は利用対象者の範囲をさらに拡大したいと話しました。
歯科医師の偏在は、政治や行政が取り組む課題。歯科衛生士など多職種も含めて次世代の人材確保が急務
これまでの意見交換をもとに、今後求められる取り組みや提案について伺いました。
澄川氏は歯科医師の偏在は、政治や行政が取り組む課題で、そのための基礎資料や知見において大学の協力が必要であると話しました。渋谷氏は、地域にある歯科大学において若い世代の研究者のポストが少なく県外に流出してしまう現状を指摘。今後は歯科診療所だけでなく病院や施設など歯科医師の働く場所の選択肢が増えると推測し、そのための人材育成の仕組みを国が主導して整備してほしいと話しました。
最後に地域での歯科診療を継続するにあたり、次世代の人材確保についてお話を伺いました。
岩井氏は、歯科医師は、医師や多職種と連携して医療提供を行っており、歯科医師だけでなく、歯科衛生士、歯科技工士も含めて人材を確保する必要性があることを訴えました。
澄川氏は、自分のような上の世代の歯科医師が、次世代から見て憧れる存在になるよう努力することで、次世代との連携を進めていきたいと話しました。渋谷氏は、歯科医師は子供から大人まで、あらゆる世代に接し、喜ばれるやりがいのある仕事であることを若い世代に伝えていきたいと話しました。そして、歯科医療に限らず地方に関心を持ってもらえるように、若い世代に向けて各地域の魅力を発信していくことを提案しました。
【開催概要】
日 時 : 10月29日(火) 13:30~15:45
主 催 : 一般社団法人 日本私立歯科大学協会
内 容 : <ビデオメッセージ>
公益社団法人 日本歯科医師会 会長 高橋 英登氏
<基調講演>
テーマ:健康寿命延伸に影響する歯科医療提供体制の偏在問題について
講師:公益社団法人 日本歯科医師会 日本歯科総合研究機構 主任研究員 恒石 美登里 氏
<パネルトーク>
【コーディネーター】 一般社団法人 日本私立歯科大学協会 専務理事 櫻井 孝
【パネリスト】 岩井歯科医院院長 (函館歯科医師会会長) 岩井 宏之 氏
医療法人 里山会 澄川歯科医院、匹見歯科診療所院長 澄川 裕之 氏
渋谷歯科診療所 院長 (長崎県歯科医師会会長) 渋谷 昌史 氏
【ご参考】
一般社団法人 日本私立歯科大学協会について
日本私立歯科大学協会は、昭和51年に社団法人として設立しました。歯科界に対する時代の要請に応えられる有用な歯科医師を養成していくため、全国17校の私立歯科大学・歯学部が全て集まりさまざまな活動を展開しています。また、加盟各校では、私立ならではの自主性と自由さを生かして、それぞれに特色を発揮しながら歯科医学教育を推進しています。
日本の歯科医学教育は、明治以来、私立学校から始まったもので、現在も歯科医師の約75%が私立大学の出身者であるなど、加盟校は歯科界に大きな役割を果たしてきました。本協会ではこのような経緯を踏まえながら、今後とも歯科医学教育、研究および歯科医療について積極的に情報提供を進めてまいります。
<加盟校>
日本全国の全ての私立歯科大学・歯学部(15大学17歯学部)が加盟しています。
○北海道医療大学歯学部 ○岩手医科大学歯学部 ○奥羽大学歯学部
○明海大学歯学部 ○東京歯科大学 ○昭和大学歯学部
○日本大学歯学部 ○日本大学松戸歯学部 ○日本歯科大学生命歯学部
○日本歯科大学新潟生命歯学部 ○神奈川歯科大学 ○鶴見大学歯学部
○松本歯科大学 ○朝日大学歯学部 ○愛知学院大学歯学部
○大阪歯科大学 ○福岡歯科大学
【所在地等】 〒102-0074 東京都千代田区九段北4-2-9 私学会館別館第二ビル2階
TEL.03-3265-9068 FAX.03-3265-9069
E-mail:jimkyoku@shikadaikyo.or.jp
URL:https://www.shikadaikyo.or.jp
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