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使用済みリチウムイオン二次電池の簡便な容量回復技術を開発


豊田中央研究所とトヨタ自動車は、使用済みリチウムイオン電池の容量を回復させる新技術を発表しました。リチウムナフタレニド溶液を使い、電池を解体せずに容量を回復させ、リサイクルからリユースへの転換を促進します。この技術では、容量回復後も充放電による劣化がほとんど見られません。 研究は理論計算と機械学習を組み合わせて行われ、最適な回復条件が検討されました。実験では、使用済み電池が20〜25%ほど回復し、100回の充放電サイクルでも劣化がないことが示されました。

~溶液の注入による容量回復を確認~

2024年11月6日
株式会社豊田中央研究所

株式会社豊田中央研究所とトヨタ自動車株式会社は、回復剤を注入する方法で、使用済みリチウムイオン二次電池(Lithium-ion Battery、以下LiB)の容量を回復させる技術を開発しました。
本技術は、容量回復後のサイクル劣化(充放電の繰り返しによる容量の低下[※注1])も、ほぼ見られないことから、LiBを解体することなくそのままの利用が可能となるため、これまではリサイクルの対象となっていました使用済みLiBのリユース促進が期待されます。
この研究成果は、Cell Pressの論文誌Jouleに2024年3月8日付でオンライン掲載されました。当社は本技術の詳細を、11月21日に第65回電池討論会にて発表します。

【研究のポイント】
◆ リチウムナフタレニド溶液[※注2]と高誘電率溶媒[※注3]の混合溶液が、容量が低下したLiBにリチウムイオンと電子を補充して容量を回復する効果があることを発見。
◆ 理論計算と機械学習を組み合わせて容量回復のメカニズムを解明するとともに、混合溶液の最適な電位[※注4]条件を検討。
◆ 実験用のLiBにて、容量の回復とその持続効果を試験的に検証。注入前の容量に対して20~25%程度回復し、充放電を100サイクル繰り返しても、サイクル劣化がほぼ生じないことを確認。さらに車載用サイズの中古電池においても、本手法による容量回復効果を試験的に確認。

【論文情報】
タイトル:Direct Capacity Regeneration for Spent Li-ion Batteries
掲載誌:Joule
著者:荻原信宏*1、永谷勝彦*2、山口裕之*2、近藤康仁*1、山田由香*1、堀場貴裕*1、馬場健*2、大庭伸子*1、駒形将吾*1、青木良文*1、近藤広規*1、佐々木厳*1、岡山忍*2*3
*1:豊田中央研究所 *2:トヨタ自動車 *3:プライム プラネット エナジー&ソリューションズ株式会社
DOI:https://doi.org/10.1016/j.joule.2024.02.010

【補足情報】
注1)    LiBの容量低下:LiBの充電時に、主に黒鉛負極表面でおこる電子移動を伴う副反応によって動けるLiイオンが消費され、結果として電池の容量が徐々に減っていく現象。
注2)    リチウムナフタレニド溶液:Li金属とナフタレンを混合した溶液。ナフタレンはリチウムから正極への電子移動を媒介する。
注3)    高誘電率溶媒:イオンや分子を安定に溶解する溶媒。高誘電率ほど溶解度が高くなる傾向を示す。
注4)    電位:電荷が持つ位置エネルギーの大きさで、電気化学反応の方向や速さを決定する。

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