心を伝える景づくり〜創るから造るまで、手で想いをカタチに〜
積水ハウス株式会社
住宅街を歩いていると、季節感に触れたり、美しい緑に癒された経験はありませんか。国土交通省が掲げる景観づくりの基本理念によれば、美しい景観は私たち国民にとって、現在と未来における共通の宝であり、それを形成するには保全だけでなく、新しい魅力を生み出すことも欠かせません(※1)。
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※1:国土交通省 都市・地域整備局 公園緑地・景観課 景観・歴史文化環境整備室「景観まちづくりの制度について」
https://www.mlit.go.jp/crd/townscape/gakushu/data1/demaekouza_all.pdf
信頼関係を育んだ質へのこだわり
このような人々の財産である「まちの景」に、新たな刺激や目標を指し示すデザインと緑の豊かさを表現したのが、積水ハウスデザインオフィス関西(阪和支店)のエクステリアデザイナー、福本真也です。今回は、福本が手がけた和歌山市内の中心部で、閑静な住宅街に佇むH様邸をご紹介します。
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積水ハウス デザインオフィス関西 福本 真也
H様は、第一に、この閑静な住宅街にふさわしく、ご家族や見る人全てが素敵だと感じる平屋を建てたいとお考えでした。
「私はH様の家を以前にも担当させていただいたということもあり、信頼関係のもとお任せ頂く部分も多く、提案や準備には、より丁寧に、そして今回は特に「調和と質」にこだわりました。敷地が変形した土地ということもあり、外構計画、デザインにも工夫を凝らし、ご家族皆さんが美しさや愉しさを感じて頂けるよう努めました。」(福本)
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H様邸外観
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美しい外観(夜景)は地域の個性と新たな創出につながる景観となります
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お孫様と非日常感を楽しんでいただけるプールと、
H様と一緒にショールームへ行きコーディネートしたアウトドアリビング
打ち合わせがスタートし、H様から「積水ハウスさんと一緒に仕事をお願いしたい職人さんがいる」とのご相談がありました。この計画がスタートする直前にテレビにもご出演され、全国的にも有名な左官職人の久住有生さんです。偶然にも、久住さんは、営業担当や福本にとって憧れの存在でした。
「いつかチャンスがあれば一緒に仕事をしたいと思っていて、ずっとファンでした。H様のご要望もあり、オファーさせて頂きましたが、お忙しい中快く引き受けて頂き、夢が叶った瞬間でした。」と福本は言います。
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左官職人の久住有生さん(左(左から2番目))久住さんの外部左官壁(右)
当初、久住さんにはリビングと和室の壁を依頼していましたが、久住さんが手掛けられた、とあるレストランの作品を見られたH様は、その卓越した仕上がりに感動され、廊下と天井も追加でご希望されました。福本からも和室から見える庭の壁を室内との一体感を演出できるようにご提案し、H様には快くご承諾をいただき、久住さんが手掛けることになりました。
玄関前に広がる北向きの庭は、日差しは控えめですが、まるで深い森の中に隠された「神秘的な石壁」のようです。そこにはモチノキ、シロダモ、ヒサカキ、ヤブツバキなどが植えられ、アカシデやコナラが自然に芽生えている「照葉樹の森」の風景が、石のアートとともに創り出されています。
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玄関正面の神秘的な石壁 思い出の富士景を魅せるアート
東側の富士の石壁は苦労したデザインのひとつですが、H様のご家族にとって特別な意味を持ちます。実はお子様が大学時代に過ごした静岡から望む富士山がH様のお気に入りだったことから、富士の表情を美しく魅せることができるようトレースしアートにしました。素材にもこだわり、関ケ原の石材メーカーに何度も足を運び、多くの中からカットの箇所や空間に調和するよう検討を重ね選びました。「今回、このような自然石のアートにしたのは、久住さんの土を使った壁との調和も考えたからです。」と福本。
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石のトレース作業をする様子(上)自然石を使った玄関のファサード(下)
今回の植栽は、アカマツ、ヒサカキ、イロハモミジなど「5本の樹」の在来種を中心に、40~50種類を植栽。これにより、花だけでなく、落葉の季節には赤い実なども楽しむことができます。また、シロダモやイヌガシなどのクスノキ科にはアオスジアゲハも訪れ、四季折々の楽しみが広がり、自然の美しさを満喫できるようにしました。
赤茶のグラデーションが印象的なリビングの左官の大壁は圧倒的です。そこに続く庭は緑々しい木々よりも、山の稜線に点在する錆びた岩肌の中にあるアカマツ林の風景がより相応しいと考え、アカマツとツツジを使い、自然に溶け込む「アカマツの自然林」を再現しました。
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グラデーションが美しい大壁(上)庭の石、砂利、タイルも赤茶に統一(下)
一方、和室に続く庭は、久住さんの左官壁のその力強さや美しさに呼応するよう、特徴的な形のアカマツを配し、趣と迫力のバランス、調和を魅せる景を創りました。丸窓の向こうや窓辺にモミジやツツジを植えることで、季節感をほんのり感じさせ、足元には鉄灯篭を置き、「和の心に触れる景」を創出しています。
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久住さんの左官壁と印象的なアカマツ(上、左下)、鉄灯篭「和の心に触れる景」(右下)
自分は現場のシェフ
「現場の造園職や植木職、木々を生産する方、山から木々を掘り出す方など多くの方々の“手”が、私やお客様の想いをカタチにしてくれます。私自身も現場で土に触れ、築山を造り、石を据え、植木を植え、砂利をまくなど、職方さんと一緒に“手”を使って造ります。まさに、『創るから造るまで、手で想いをカタチに』しています。」と福本は言います。
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仲間の「手」が全て、信頼できるメンバーの皆さん
シェフが「次のパーティーでどんな素材を使って料理をしようか」とメニューを考え材料を選ぶように、どんな品種やどのくらいの大きさの植物を使って、どんな景色を創るかを決めていきます。圃場や石場で新しい材料を発見した際には「こんな材料があったのか、使ってみたい!」と思うのも楽しみの一つだそうです。
「現場に運ばれた材料を前にして、『さあ、どう料理しようか!』といつも期待に震えます。もちろん不安もありますが、美味しい料理ができあがるのと同じように、美しく、カッコイイ景色が出来上がると早くお客様にお見せしたくなります。外構、造園、植栽と、頼れるプロの仲間たちがいることは何よりも心強く、皆さんと協力し合ってチームで“闘う”という気持ちで、私が厨房と考える現場の中心となり、『手で描いたイメージ』をカタチ、景色にすることがとても大切だと考えています。」と福本。
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作業の朝に材料を決める様子(左、中)造園の細かい作業は手で仕上げる(右)
今回のプロジェクトは、国内外で著名な左官職人、久住有生さんとのコラボレーションということもあり、協調し共鳴する“景の創造”に注力しました。久住さんの土という自然素材を使った左官の色や形にどう応え、調和するデザインを展開し、植栽と景観をどう組み合わせるかが重要な課題でした。
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石のアート提案時のスケッチ(左)完成した石のアート(右)
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プラン提案からディティールまで「手」で描いたスケッチとストーリー
「お客様のご要望のさらに先にあるモノ・コトを、デザイナーとしての役割や在り方を大切に、期待を超える発想と提案をさせて頂くことを使命としています。芸術家ではなく「デザイナー」ということを意識し、自分よがりにならず、建物や景観、室内、そして何よりお客様の想いとの調和を図り、便利で無駄のない、お客様の期待に寄り添った『Best以上』の答えを常に心がけています。」
最後に、福本は造園に対する熱い思いを語ります。
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「造園は『手で描き、創り、手で造るもの』という強い信念を持っています。現代でも、手描きによってイメージと想いを伝えることを大切にしており、自ら描くことにより、その美しさやイメージを確かめるのです。植栽を決める際にも、高さや樹種、品種を考慮し、スケッチを描きながら進めます。手で描いてこそイメージが伝わりお客様の想いとマッチするのです。お客様がご自宅に戻り、私の描いたイメージをご家族の皆さんとゆっくり鑑賞し、感じ、期待感を抱いて頂ける、そんな想いやストーリーが込められていることを伝えたいと思っています。」
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202312224695-O16-Sz56C6eM】
今回のPJメンバー 左から設計 清水 海、営業 中西 和男、エクステリア担当 福 本真也、
設計 西尾 有平、インテリアコーディネーター西村 和歌子、建築 池田 秀樹
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