健康リスクが高いのは「製造業」「医療、福祉」「運輸業、郵便業」
2023年9月14日
株式会社ドクタートラスト
https://doctor-trust.co.jp/
株式会社ドクタートラスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役:高橋雅彦、以下「ドクタートラスト」)のストレスチェック研究所では、ストレスチェックサービスを利用した累計受検者163万人超のデータを活用し、さまざまな分析を行っています。
今回は2022年度にストレスチェックの実施を受託した1,162の企業・団体における集団分析データをもとに、[高ストレス者率][健康リスク]の業種別ランキングを算出しました。
YouTubeで解説動画公開中
【解説】健康リスクが高いのはあの業種!1,162の企業・団体のストレスチェックデータを徹底分析!専門家がわかりやすく解説します!(解説:ストレスチェック研究所 チーフアナリスト 服部恭子)
【動画:https://www.youtube.com/watch?v=jpj-Mh2sv-4】
調査結果のポイント
【高ストレス者率の高い業種】
「製造業」、以下「宿泊業、飲食サービス業」、「卸売業、小売業」
【健康リスクの高い業種】
・ 総合的な健康リスク:「製造業」「医療、福祉」
・ 「仕事の負担」で健康リスクが高い:「宿泊業、飲食サービス業」、「教育、学習支援業」
・ 「仕事のコントロール」で健康リスクが高い:「医療、福祉」、「運輸業、郵便業」
・ 「上司・同僚からのサポート」で健康リスクが高い:「運輸業、郵便業」、「製造業」
はじめに
ストレスチェック制度は、従業員のメンタル不調の予防やその気付きを促すこと、また、ストレスが高い人の状況把握やケアを通して職場環境改善に取り組むことを目的として制定され、2015年12月以降、従業員数50名以上の事業場で年1回の実施が義務づけられています。
今回の調査では、2022年度にドクタートラストでストレスチェックを受検した方のうち、410,352人の最新結果を分析しました。
高ストレス者率ランキング
高ストレス者率とは、実際に受検をした人のなかで、高ストレス者と判定された人がどれくらいいるかを示した割合で、2022年度にドクタートラストでストレスチェックを受検した企業・団体の高ストレス者率の平均は15.5%でした。
<高ストレス者とは>
・ ストレスの自覚症状が高い人
・ ストレスの自覚症状が一定程度あり、かつ仕事の負担と周囲のサポート状況が著しく悪いと判定された人
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202309149601-O4-Q43mEcSh】
表1は高ストレス者率を業種ごとに算出したもので、高ストレス者率が高い順に示しています。
高ストレス者率が高い業種は「製造業」、以下「宿泊業、飲食サービス業」、「卸売業、小売業」と続きます。
高ストレス者率が最も高かった「製造業」は、全業種平均と比較すると3.9%高い結果となりました。また「製造業」の高ストレス者率は2020年度以降、増加傾向が続いています。(表2)
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202309149601-O8-cvV11VRA】
健康リスクランキング
1. 最も総合健康リスクが高い業種は「製造業」、「医療、福祉」
ストレスチェックの結果を部署や、事業場ごとに分析した集団分析では、集団の「健康リスク」が示されます。健康リスクとは、企業や団体の中で仕事のストレス要因から起こり得る疾病休業などの健康問題のリスクを、標準集団の平均を「100」として示す指標です。たとえば、健康リスクが「120」の集団は、その集団で健康問題が起きる可能性が、平均より「20%多い」ことを示しています。
総合健康リスクを業種別に算出、リスクの高いものから順に並べたものが「表3 業種別・総合健康リスクランキング」です。「総合健康リスク」は、「仕事の負担・コントロール」リスク、および「上司・同僚からのサポート」リスクという 2つの指標をかけ合わせた数値です。2つの指標への意味の理解と「現状の数値から何を読み取ることができるのか」が健康リスクを扱ううえでは、非常に重要なポイントです。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202309149601-O6-PkcEIZ40】
表3のとおり、総合健康リスクが最も高かった業種は「製造業」「医療、福祉」で、以下「運輸業、郵便業」が続きます。
表1で見たように、「製造業」は高ストレス者率が最も高い業種でしたが、健康リスクも最も高いことがわかります。
総合健康リスクが同率トップである「製造業」と「医療、福祉」のうち、「製造業」は「上司・同僚からのサポート」において、「医療、福祉」は「仕事の負担・コントロール」において高いストレス負荷がかかっていました。さらに、「運輸業、郵便業」は「上司・同僚からのサポート」において、全業種の中で最も高いストレス負荷がかかっていました。
2. 健康リスクが高い上位3業種、前年度より改善がみられる
表4は、総合健康リスクについて、2022年度と2021年度を比較したものです。2021年度より総合健康リスクが高くなった場合は赤、低くなった場合は青で示しています。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202309149601-O7-ThVfX093】
2022年度の健康リスクが高い「製造業」と「医療、福祉」と「運輸業、郵便業」を2021年度と比較するとリスク値は下がり、改善がみられました。
3. 「仕事の負担」で最も健康リスクが高い業種は「宿泊業、飲食サービス業」、以下「教育、学習支援業」
総合健康リスクを算出する1つ目の指標「仕事の負担・コントロール」リスクとは、個人ごとの仕事量の負担と、仕事量をいかにコントロールできているか、そのバランスがストレスに及ぼす影響を示しています。
たとえば、仕事の量が多かったり困難な業務内容であったりしても、自分なりのやり方やペース配分で行うことができればストレスは高くならず、リスク値は低く算出されます。ところが仕事の負担はそれほどではなくても、順番ややり方が固定され、自らの裁量が生かせない状況では、ストレスは高まり、リスク値は高く算出されます。
「仕事の負担・コントロール」のうち、「仕事の負担」リスクを業種ごとにランキング化したものが、「表5 業種別・仕事の負担ランキング」です。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202309149601-O1-t0Rb7y2q】
表5は、数値が大きいほど「仕事の負担が多い」ことを意味し、ストレスチェック設問のうち、次の3問への回答から導出します。
1. 非常にたくさんの仕事をしなければならない
2. 時間内に仕事が処理しきれない
3. 一生懸命働かなければならない
このように仕事の量・処理速度・熱量などを問う設問から構成されており、数値が大きいほど仕事の負担が大きい、すなわち不良であることを示しています。
1位は「宿泊業、飲食サービス業」、2位「教育、学習支援業」、3位「卸売業、小売業」でした。
この分野で最も健康リスクが高かった「宿泊業、飲食サービス業」は、コロナ禍で大きなあおりを受けた業種の一つですが、行動制限の解除や、国による旅行支援施策など需要回復に向けた取り組みもあったことから、仕事量の増加を感じたのではないかと推察されます。
4. 「仕事のコントロール」で最も健康リスクが高い業種は「医療、福祉」、次いで「運輸業、郵便業」
次に「仕事の負担・コントロール」のうち、「仕事のコントロール」リスクを業種ごとにランキング化したものが、「表6 業種別・仕事のコントロールランキング」です。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202309149601-O2-I424sKMx】
表6は、数値が小さいほど「仕事のコントロールがしづらい」を意味し、ストレスチェック設問のうち、次の3問への回答から導出します。
8. 自分のペースで仕事ができる
9. 自分で仕事の順番・やり方を決めることができる
10. 職場の仕事の方針に自分の意見を反映できる
仕事をする際に個人がどれくらい仕事をコントロールできるか、または、自分で決めた順序や方法でしてよいか、その自由度が問われており、コントロールが困難な業種ほど上位にランキングされています。
1位は「医療、福祉」、2位「運輸業、郵便業」、3位「製造業」でした。
1位の「医療、福祉」は、患者に対し医療行為を行ったり、施設の利用者から求められることに迅速に応じたりすること、次に続く「運輸業、郵便業」は時間通りの運行や配達が求められることなど、業務の性質上、仕事を進める際の自由度が低いことが考えられます。
5. 「上司からのサポート」で最も健康リスクが高い業種「運輸業、郵便業」、以下「製造業」、「医療、福祉」
総合健康リスクを算出する2つ目の指標「上司・同僚からのサポート」リスクとは、職場の上司や同僚とのコミュニケーションがストレスに及ぼす影響を示しています。一般に仕事量が多く、裁量権が少ない職場でも上司や同僚からのサポートが得やすい職場はリスク数値が良好傾向にあり、逆に仕事量が少なく、自分のやり方で仕事を進められても、上司や同僚からのサポートが得られにくい職場はリスク数値が不良傾向になります。
「上司・同僚からのサポート」のうち、「上司からのサポート」リスクを業種ごとにランキング化したものが、「表7 業種別・上司からのサポートランキング」です。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202309149601-O5-i7nr6Rb7】
表7は、数値が小さくなるほど「上司からのサポートが少ない」を意味し、ストレスチェック設問のうち、次の3問への回答から導出します。
47. 次の人たちはどのくらい気軽に話ができますか?/上司
50. あなたが困った時、次の人たちはどのくらい頼りになりますか?/上司
53. あなたの個人的な問題を相談したら、次の人たちはどのくらいきいてくれますか?/上司
1位は2020年度、2021年度に続き「運輸業、郵便業」、2位「製造業」、3位「医療、福祉」でした。
6. 「同僚からのサポート」で最も健康リスクが高い業種「運輸業、郵便業」、以下「製造業」、「学術研究、専門・技術サービス業」
次に「上司・同僚からのサポート」のうち、「同僚からのサポート」リスクを業種ごとにランキング化したものが、「表8 業種別・同僚からのサポートランキング」です。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202309149601-O3-0oXu6VfE】
表8は、数値が小さいほど「同僚からのサポートが少ない」を意味し、ストレスチェック設問のうち、次の3問への回答から導出します。
48. 次の人たちはどのくらい気軽に話ができますか?/同僚
51. あなたが困った時、次の人たちはどのくらい頼りになりますか?/同僚
54. あなたの個人的な問題を相談したら、次の人たちはどのくらいきいてくれますか?/同僚
「上司からのサポート」と同様、1位は「運輸業、郵便業」、2位は「製造業」でした。3位には「学術研究、専門・技術サービス業」が続きます。
「運輸業、郵便業」は3年連続1位、「製造業」は2年連続2位となっており、トラックやバス、タクシー運転手や配達業務など、業務を1人で担うケースや、製造工程での品質管理や安全上の問題からコミュニケーションをとることが難しい状況であることが考えられます。
まとめ
以上のように、「製造業」が高ストレス者率と総合健康リスクともに最も高い業種でした。「製造業」においては業務を1人で担うケースがあることや、業種特性上、コミュニケーションをとることが難しい状況であるためと考えられます。
また、オフィスワークと異なり立ち仕事であることや、扱う製品によって温度や騒音などの物理的な作業環境によるストレスから、疲労感やイライラ感などの身体的な負担につながっている可能性もあります。こうした点が高ストレス者率などに表れているのではないかと考えられます。
この「製造業」のように、負荷がかかりやすいポイントやストレスの傾向は、業務上の特性が大きく関わっているため、業種ごとに異なる結果が見られます。
業種を問わず大切にしていただきたいのは、業務の特性上、結果が不良であったとしても、決して諦め感を抱かないことです。業務特性や傾向を理解したうえで、「改善できるポイントはあるか?」という視点をもち、自社の実態に即した職場環境の把握と改善に取り組んでいただきたいです。
調査対象
調査期間:2022年4月1日~2023年3月31日
調査対象:ドクタートラスト・ストレスチェック実施サービス 2022年度契約企業・団体の一部
企業・団体数:1,162
有効受検者数:410,352人
※ 本件の業種分類は「日本標準産業分類」に準拠しています。受検法人数が一定数に満たない業種は評価していません。
ドクタートラストについて
株式会社ドクタートラスト https://doctor-trust.co.jp/
株式会社ドクタートラスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役:高橋雅彦)は企業ではたらく人の健康管理を専門に受託している会社です。産業医(国内第1位※)や保健師などの医療資格者が企業を訪問の上、健康診断結果に基づく健康指導、過重労働者面談を行います。また、163万人超のビッグデータに基づく職場環境改善コンサル「STELLA」や、 外部相談窓口サービス[アンリ]もご好評いただいております。その他 ストレスチェック、健康経営セミナー、 衛生委員会のアドバイスなど、さまざまな業務を実施します。
※帝国データバンク調べ
ストレスチェック研究所 https://www.stresscheck-dt.jp/stella/
ストレスチェック研究所は、ドクタートラスト内に設置された研究機関です。ストレスチェックで得られた膨大なデータの分析を行うとともに、ストレス耐性が高く組織の強みである人材を「STELLA(ステラ)」と名づけ、これら人材を活用した強固な組織作りを目指す職場環境改善コンサル業務を行っています。
ストレスチェックサービスに関するお問合せ
株式会社ドクタートラスト 健康経営推進本部 担当:田野、宇和野
TEL:03-3464-4000(代表)
企業さま用お問合せフォーム:https://www.stresscheck-dt.jp/sc_form/
<参考>100名あたり6万円~(専門コンサルタントによる集団分析結果フィードバックなども、料金内でご提供いたします)
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