~新型コロナウイルス感染症と歯科医療~ 『第11回 歯科プレスセミナー』をオンラインで開催
2020年10月23日
一般社団法人 日本私立歯科大学協会
~新型コロナウイルス感染症と歯科医療~
『第11回 歯科プレスセミナー』をオンラインで開催
講演1:ウイルスに対抗する歯科の重要性
講演2:私立歯科大学・歯学部における感染対策の現状
◇日時 : 10月21日(水) 14:00~15:45
◇登壇者: 講演① 日本歯科大学附属病院口腔外科 小林 隆太郎 教授
講演② 昭和大学歯学部長・日本私立歯科大学協会常務理事
日本私立歯科大学協会附属病院感染対策協議会議長 槇 宏太郎 教授(ビデオ出演)
講演②質疑応答 北海道医療大学歯学部生態機能・
病態学系顎顔面口腔外科学 永易 裕樹 医長
一般社団法人 日本私立歯科大学協会 会長 三浦 廣行
一般社団法人 日本私立歯科大学協会 専務理事 羽村 章
一般社団法人 日本私立歯科大学協会(所在地:東京都千代田区、会長:三浦 廣行)は、2020年10月21日(水)に、オンラインで『第11回 歯科プレスセミナー』を開催いたしました。
これは、歯科医療の見地から、皆様の健康的な生活を考え、サポートすることを目指し、当協会が2010年から開催しているプレスセミナーです。毎回、口腔衛生に関するテーマを取り上げて、これからの歯科が担う役割の大きさや魅力について情報をお伝えしています。
11回目となる今回は、「新型コロナウイルス感染症と歯科医療」をテーマに、「ウイルスに対抗する歯科の重要性」と「私立歯科大学・歯学部における感染対策の現状」について、最前線の研究者が説明を行いました。
当協会会長・三浦廣行(岩手医科大学副学長・歯学部長)の挨拶と、専務理事・羽村 章(日本歯科大学教授、前生命歯学部長)による最新の意識調査結果の報告の後、世界的に猛威をふるう新型コロナウイルスの感染症予防に対して、ウイルスの侵入口である口腔のスペシャリストとして歯科医師・歯科医学界ができること及びその現状について、85名の報道関係者等の皆さまにお伝えしました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202010236149-O2-If7h0eRU】 【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202010236149-O3-9XQNh8f2】
「第11回 歯科プレスセミナー」講演風景(左:小林 隆太郎 教授 右:槇 宏太郎 教授)
< 講演内容 >
■講演 1
テーマ : 「ウイルスに対抗する歯科の重要性」
講師 : 日本歯科大学附属病院口腔外科 小林 隆太郎 教授
歯科医師と歯科衛生士は感染リスクが高い職業とされているにもかかわらず、新型コロナウイルスの感染例はゼロ
今年、新型コロナウイルスの感染拡大が広がる中で、歯科界では一般社団法人日本歯科医学会連合が「新型コロナウイルス感染症対策チーム」を設置し、エビデンスのある感染防止情報の周知にあたった。
医療従事者は新型コロナウイルスへの感染リスクが高い職種で、その中でも歯科衛生士と歯科医が1位と2位といわれている(出典:米国「GOBankingRates」の「COVID-19リスクスコア」)が、日本では、歯科診療を原因とする新型コロナウイルスの感染例は報告されていない。以前より歯科で行われてきた治療環境や機器の徹底した消毒が、感染防止につながったと評価できる。
治療環境の消毒や防護服、患者様の体調管理により感染を予防。治療中はバキュームの活用により飛沫・エアロゾルの拡散を抑制
新型コロナウイルスに限らず、感染対策の基本は「すべての患者のすべての湿性生体物質(血液、唾液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、創傷皮膚、粘膜など)は感染の危険性がある」という前提に立った標準予防策(スタンダード・プリコーション)と感染経路別予防策を講じることである。
日本歯科医師会では『新たな感染症を踏まえた歯科診療の指針』を作成し、新型コロナウイルス感染予防の指針を示している。具体的には、治療環境や医療機器を次亜塩素酸ナトリウムや消毒用アルコールで清拭し、接触の可能性が高い部分は事前にカバーすることで衛生を保っている。歯科医やスタッフは手指消毒の徹底はもちろん、個人防護具(手袋、マスク、ガウン、眼への曝露を防ぐゴーグル、フェイスシールド)により感染防止を図っている。治療中に口から放出される飛沫とエアロゾルは、治療機器の調整による放出される水量を調整し、口腔内バキュームに加えて口腔外バキュームを活用することで拡散を抑制している。
待合室・治療室・スタッフルームで3密対策を講じ、接触感染・飛沫感染を予防
医院内での「密集」「密接」「密閉」の回避のため、診療予約の間隔や使用ユニットを調整して待合室の人数を減らすほか、動線の分離、定期的な窓開けによる換気が実施されている。飛沫感染・接触感染を予防するために、受付スタッフがマスク装着を装着し、アクリル板などによる遮蔽を行い、消毒できないものは撤去している。患者様には、体温や体調の確認を行い、手指消毒のほか、治療前後のうがいのご協力をお願いしている。
院内クラスター発生の予防にはスタッフへの対策も重要で、健康管理を徹底し、診療着の適正な交換、医局での定期的な換気が実施されている。休憩時においても対策を徹底し、対面を避け食事をとるようにしている。
新型コロナウイルスは口腔内の細胞に感染する。
新型コロナウイルス感染者の重症化を防ぐためにも、「口腔健康管理」による基礎疾患の予防・改善が重要
口腔内の粘膜には、ウイルスをキャッチするACE2(アンジオテンシン変換酵素2)受容体を持つ細胞が存在し、そこに新型コロナウイルスが感染するというメカニズムが明らかになっている。症状の一つである味覚異常も、舌の粘膜にウイルスが感染することによって引き起こされると考えられており、新型コロナウイルスと口腔の関連性は深い。
また、慢性呼吸器疾患や糖尿病やがんなどの疾患を持つ新型コロナウイルス感染者は重症化率・死亡率が高くなるため、これらの疾患の予防・改善も対処すべき対策のひとつである。歯周病や口腔細菌はこれらの全身の病気に影響を与えることが明らかになっている。
このほか、インフルエンザやHIVなどの感染症においても、口腔細菌との関連性が指摘されており、歯科治療や日常の歯磨きなどの「口腔健康管理」が新型コロナウイルスに限らず、さまざまな感染症の予防に有効である。
健康寿命延伸のために「口腔健康管理」が重要。
新型コロナウイルス感染症は、新時代の歯科医療環境を構築する「入口戦略」として取り組みたい
口腔の健康は全身の疾患に影響を及ぼし、最近の研究では歯周病が認知症を悪化させるメカニズムが判明したほか、新血管疾患との関係性も指摘されており、「口は健康の入口、病気の入口」と言うことができる。歯科医師は歯だけを治療するのではなく、国民のトータルな健康への貢献することを目指しており、健康寿命延伸のために、がん、心臓疾患などの予防などに加え、口腔健康管理が重要であると考えていただきたい。
新型コロナウイルスをはじめとする感染対策については、歯科大学・歯学部において教育と実践を行うと同時に、歯科医療従事者への法定講習などを通じて院内感染対策の周知を図ることが重要である。新型コロナウイルス感染症への対策は「出口戦略」ではなく、新しい時代の歯科医療環境を構築するための「入口戦略」ととらえ、より高いレベルの予防の習慣と工夫を作り出していきたい。
■講演 2
テーマ : 「私立歯科大学・歯学部における感染対策の現状」
講師 : 日本私立歯科大学協会常務理事
日本私立歯科大学協会附属病院感染対策協議会議長(昭和大学歯学部長)
槇 宏太郎 教授
「私立歯科大学協会附属病院感染対策協議会」を約10年前に発足して感染症対策を強化。
私立歯科大学・歯学部における感染対策教育や、附属病院における感染対策の強化・充実に資するために設置された組織が「私立歯科大学協会附属病院感染対策協議会」である。2011年の設立以来、毎年度、感染対策についての調査を実施するとともに、感染対策協議会を開催して情報共有や意見交換を行っている。
同会の活動により、私立歯科大学・歯学部及び附属病院における感染対策への取り組みは大きく前進しており、2018年度に加盟校を対象に実施した「感染対策強化に関するアンケート調査」の結果からは、新型コロナウイルス感染症が発生する以前から、歯科医療や教育の現場では感染症に対して高い意識を持ち、対策を講じている実態が明らかになっている。
「感染対策強化に関するアンケート調査」
調査対象期間:2018年4月1日~2019年3月31日、対象:私立歯科大学協会加盟校(17校)
学部学生から臨床実習生、臨床研修歯科医まで、歯科医療を学ぶすべてのステージで感染症教育を実施。病院職員に対する講習も複数回実施。
私立歯科大学・歯学部の学部学生に対する「院内感染対策」の講義は、1学年から6学年までの間で実施されており、総講義時間平均は約670分±491.8分であった。微生物学・細菌学、口腔外科などの講義の一環として実施されるほか、院内感染対策委員会のなかで講義が行われている。
臨床実習生と臨床研修歯科医に対しても、「院内感染対策」についての講義がすべての学校で実施され、院内感染対策・ICT(感染対策チーム)や口腔外科などの講座の一環として行われている。
病院職員に対する「院内感染対策講習会」は、年度内に複数回実施されており、その内容は、感染予防の基準となる標準予防策や清掃・滅菌法のほか、抗菌薬の知識習得、災害時の対策、インフルエンザなどのウイルス対策など多岐にわたる。
感染につながる「針刺し・切創」などの事故に対応。抗ウイルス薬投与などの対策により感染を予防
使用済みの医療用針を誤って手指に射してしまったり、スケーラーなどの機器で傷を作るなどの事故は、感染リスクに直結する。当協会でこの問題に取り組んだ結果、私立歯科大学・歯学部附属病院での事故件数は減少傾向となっている。
2018年度に発生した事故の約8割にあたる100件の事例では、汚染源となる可能性のある対象(患者)の把握が行われている。また、17校中16校において、HIV感染の可能性を確認するために受傷後の抗体検査を実施している。粘膜に曝露した事故でも、計9件のうち8件で汚染源の対象の把握が行われている。
事故が起きた際のHIV感染対策として、全体の約半数である7校では抗HIV薬が常備され、常備していない学校でも確保ができるように他施設での保管状態を確認している。また、受傷の際の汚染源が特定できない場合は、感染予防のために6校が抗HIV薬の服用を推奨している。
以上のように、新型コロナウイルスの感染拡大以前から、私立歯科大学・歯学部では感染症対策の教育が行われ、附属病院でも対策がとられているので、患者様には安心して歯科診療を受けていただきたい。
【開催概要】
日 時 : 2020年10月21日(水) 14:00~15:45
主 催 : 一般社団法人 日本私立歯科大学協会
内 容 : <講演1>
テーマ:「ウイルスに対抗する歯科の重要性」
講師 :日本歯科大学附属病院口腔外科 小林 隆太郎 教授
<講演2>
テーマ:私立歯科大学・歯学部における感染対策の現状」
講師 :日本私立歯科大学協会常務理事
日本私立歯科大学協会附属病院感染対策協議会議長(昭和大学歯学部長)
槇 宏太郎 教授
【ご参考】
一般社団法人 日本私立歯科大学協会について
日本私立歯科大学協会は、昭和51年に社団法人として設立しました。歯科界に対する時代の要請に応えられる有用な歯科医師を養成していくため、全国17校の私立歯科大学・歯学部が全て集まりさまざまな活動を展開しています。また、加盟各校では、私立ならではの自主性と自由さを生かして、それぞれに特色を発揮しながら歯科医学教育を推進しています。
日本の歯科医学教育は、明治以来、私立学校から始まったもので、現在も歯科医師の約75%が私立大学の出身者であるなど、加盟校は歯科界に大きな役割を果たしてきました。本協会ではこのような経緯を踏まえながら、今後とも歯科医学教育、研究および歯科医療について積極的に情報提供を進めていきます。
<加盟校>
日本全国の全ての私立歯科大学・歯学部(15大学17歯学部)が加盟しています。
○北海道医療大学歯学部 ○岩手医科大学歯学部 ○奥羽大学歯学部
○明海大学歯学部 ○東京歯科大学 ○昭和大学歯学部
○日本大学歯学部 ○日本大学松戸歯学部 ○日本歯科大学生命歯学部
○日本歯科大学新潟生命歯学部 ○神奈川歯科大学 ○鶴見大学歯学部
○松本歯科大学 ○朝日大学歯学部 ○愛知学院大学歯学部
○大阪歯科大学 ○福岡歯科大学
【所在地等】 〒102-0074 東京都千代田区九段北4-2-9 私学会館別館第二ビル2階
TEL.03-3265-9068 FAX.03-3265-9069
E-mail :jimkyoku@shikadaikyo.or.jp
URL : https://www.shikadaikyo.or.jp
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