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NewSpace時代に向けた通信セキュリティ技術の初期実験に成功


2019年7月10日



国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)

インターステラテクノロジズ株式会社

法政大学



NewSpace時代に向けた通信セキュリティ技術の初期実験に成功



【ポイント】

■ 開発した情報理論的に安全な通信セキュリティ技術が小型宇宙機に適することを宇宙への飛行で実証

■ 小型宇宙機の飛行環境下において情報理論的安全性を民生用電子部品で達成

■ 小型宇宙機の課題である伝送データの保護と飛行の安全確保に寄与



 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)セキュリティ基盤研究室、インターステラテクノロジズ株式会社(IST、代表取締役: 稲川 貴大)及び法政大学(総長: 田中 優子)は、共同で開発した小型衛星・小型ロケット用通信セキュリティ技術の実験回路を、観測ロケット「宇宙品質にシフトMOMO3号機」(以下「MOMO3」)に搭載し、2019年5月4日(土)、宇宙への飛行環境下における動作確認に成功しました。

 本研究の目標は、小型宇宙機の乗っ取り防止による飛行の安全確保と、小型宇宙機から伝送される飛行状況や学術的・商業的価値の高いデータの保護において、適切なセキュリティを確立することです。本実験によって、最高レベルのセキュリティである情報理論的安全性が、民生用電子部品で達成できること、及び小型宇宙機に適していることを実証しました。本成果は、小型宇宙機通信におけるセキュリティ課題の解決に寄与し、NewSpaceと呼ばれる宇宙開発の進展に貢献します。



【背景】

 小型衛星が学術・商用目的で多数打ち上げられるようになり、平成30 年11 月15 日に「人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律」が施行されました。本法律に基づく基準等に関するガイドラインにおいて、人工衛星の打上げ用ロケットの型式認定や飛行許可に当たり、重要なシステム等に関する信号の送受信については適切な暗号化等の措置が求められています。民間事業者が宇宙ビジネスに参入するNewSpace時代に向け、NICT、IST及び法政大学は2018年から共同で、小型宇宙機用通信セキュリティ技術を研究開発しています。

 本研究の目標は、小型宇宙機の乗っ取り防止による飛行の安全確保と、小型宇宙機から伝送される飛行状況や学術的・商業的価値の高いデータの保護において、適切なセキュリティを確立することです。これまでに、最高レベルのセキュリティである情報理論的安全性の実現における二大課題(鍵の事前共有と総量)が、地上局と小型衛星・小型ロケットとの通信においては解決し得ることを見いだし、情報理論的に安全な通信セキュリティ技術の開発と民生用電子部品を用いたプロトタイプ実装、及び地上実験を実施してきました。





【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201907098500-O1-gX5BD67O

今回の飛行環境下の実験に用いたMOMO3



【今回の成果】

 今回の飛行実験の目的は、我々が開発した情報理論的に安全な通信セキュリティ技術が小型宇宙機に適していることを実証することです。

 NICTセキュリティ基盤研究室の吉田真紀主任研究員、ISTの森岡澄夫博士、法政大学の尾花賢教授は、本年5月4日(土)の観測ロケットMOMO3(機体全長9.9 m、全備重量1.1 ton、外径502 mm)の打上げ時に、本開発技術を民生用電子部品で実装した実験回路を機体に搭載し、宇宙への飛行環境下における動作確認に成功しました。飛行条件は、液体燃料ロケットの初段として典型的であり、打上げ後1分で最大動圧点(Max-Q)を超え、最大秒速1.25 km、最大加速度5G、最大高度113.4 kmに到達しました(いずれも概算値)。実際の飛行環境下で、情報理論的安全性という最高レベルのセキュリティを民生用電子部品で達成したことは、世界初です。

 本開発技術は、地上局・小型ロケット・小型衛星の通信におけるセキュリティ関連処理と、通信の同期維持処理から成ります。まず、通信の不安定な状況で通信の齟齬から管制を喪失しないよう、相互確認を最小限にしました。さらに、通信相手が打上げ数分後には音速の数倍以上という速度で移動する状況で、セキュリティ関連処理の遅延によってリアルタイム性が損なわれないように、情報理論的に安全な技術の特長を生かし、計算効率が良く回路規模が小さい方式を設計し、通信の同期維持処理にも応用しました。

 また、本開発技術は、回路コストをMOMO3の機体コストの0.1%未満に抑え、従来の小型衛星と同グレードの民生用電子部品を利用しているため、多様な小型宇宙機への適用が可能です。



【今後の展望】

 今後も、本格的な飛行環境下における、更なる技術検証と技術改良を進め、NewSpace時代の宇宙ビジネスに欠かせない伝送データの保護と飛行の安全確保に貢献します。本成果について、2019年7月23日(火)と24日(水)に高知県高知市で開催される「セキュリティサマーサミット2019」で発表します。



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