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手術で改善する認知症「特発性正常圧水頭症(iNPH)」


2016年8月24日



ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 メディカル カンパニー



手術で改善する認知症「特発性正常圧水頭症(iNPH)」

アルツハイマー病を併存するiNPHの手術の有用性と診療連携について

~神経内科/脳神経外科の学術大会中継共催セミナーによるコンセンサス~



ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカル カンパニー(本社:東京都千代田区、代表取締役プレジデント:日色 保)は、去る5月20日、第57回日本神経学会学術大会(以下、神経学会)および第36回日本脳神経外科コングレス総会(以下、脳外科コングレス)を中継し、セミナーを共催いたしました。本セミナーは、アルツハイマー病を併存する特発性正常圧 水頭症(Idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus/ 以下、iNPH)の診療コンセンサス形成を促進するきっかけづくりを目的として、開催したものです。

 

高齢者疾患であり、「治療により改善する認知症」ともいわれるiNPHの罹患が疑われる患者さんは、36万人以上と推定されています*1。iNPHは、アルツハイマー病(Alzheimer‘s Disease/ 以下、AD)や、脳梗塞の原因となる心疾患などが併存する場合も少なくありません。



上記のような併存症例、特にAD併存例においては、神経内科と脳神経外科が同時進行で診療するケースが多いにもかかわらず、これまで診療上のコンセンサスは明確ではありませんでした。今回、それぞれの専門医が所属する学会の学術大会・総会を中継し、神経学会からは座長:森 悦朗 先生、演者:数井 裕光 先生、脳外科コングレスからは座長:石川 正恒 先生、演者:村井 尚之 先生より、現時点での診療上のコンセンサスの内容がまとめられました。以下にその概要と、セミナーに参加した医師へのiNPH診療に関するアンケート結果をご紹介します。 





【アルツハイマー病(AD)を併存するiNPH患者の診療に関するコンセンサス】

●ADを併存するiNPH症例への手術適応について

iNPHは、脳の髄液の流れを良くする髄液シャント手術(以下、シャント術)によって、認知症・歩行障害・尿失禁といった症状の改善が期待できる疾患です。これまで、手術効果を確認しづらい他の疾患、特にADを併存する患者さんに対して 手術を実施すべきかについては、明確な指針がありませんでしたが、今回のセミナーで、「AD病理が中等度までの場合は、シャント術の効果が期待できる」という見解が共有されました。



~アンケート結果から~

他の認知症疾患を併存する患者さんへの手術について、9割の医師が有用性を期待

神経内科医・脳外科医ともに「併存例であっても早期であれば手術のメリットがある」の回答が約9割となり、シャント術の有用性に対する期待がうかがえる結果となりました。

※添付画像、あるいは下記URL参照(アンケート結果(1))

 http://goo.gl/443uFg



●診療科間の連携について

認知症を併存する患者さんに対して、円滑かつ的確な治療を行うために、神経内科を含む認知症診療医と脳神経外科医の連携に関するコンセンサス形成が図られました。具体的なポイントは以下の通りです。



(1)iNPH診療連携の初期における手術適応患者の選択

「シャント術により確実に症状改善が得られる典型例」から連携を開始することが、持続的な診療連携のために重要。



(2)手術適応外のケースの診療科間フィードバック

iNPH診療ガイドラインを共通基準とした上で、脳神経外科医へ紹介された患者さんが手術適応外と診断された場合、その理由を神経内科医にフィードバックすることで、診療における精度の向上と今後の連携の円滑化が期待できる。



(3)ご家族へのインフォームドコンセント

手術によって改善する症状だけでなく、術後も残る可能性がある症状や、手術をきっかけとして表面化する可能性のある認知症の行動・心理症状(BPSD: Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)などについてもお伝えしたうえで、ご家族と手術の実施を決めることが重要。



(4)脳神経外科医と神経内科医の術後の連携

術後の両科連携は不可欠であり、役割分担として、脳神経外科医はシャント管理と周辺診療、神経内科医を含む認知症診療医は、症状評価と慢性疾患診療の継続が望まれる。



~アンケート結果から~

神経内科から脳神経外科への紹介後、術後連携やフィードバックによる連携を継続することの重要性が示唆される

手術適応外となる場合が「予想以上にある」と回答した神経内科医は3割、脳神経外科医は5割という結果でした。

また、4割の神経内科医が、「紹介後の患者の状況が分からない」と回答しました。

※添付画像参照(アンケート結果(2)~(4))、あるいは下記URL参照

 http://goo.gl/bYoH2Q (アンケート結果(2))

 http://goo.gl/RRvEiB (アンケート結果(3))

 http://goo.gl/HmbkHl (アンケート結果(4))

 





【iNPH併存例診療における臨床TIPS】

神経学会会場 数井先生と脳外科コングレス会場 村井先生から、iNPH併存例を診療される医師に向けて、臨床現場でヒントとなるポイントをご共有いただきました。



●iNPHとADの鑑別(数井先生ご発表内容より抜粋)

・iNPH群とAD群の比較において、WMS-R*2の 「遅延再生*3」などの記憶に関するスコアが、AD群で有意に低いという報告*4もあり、「遅延再生」は、iNPHとADの鑑別に有用な指標と言えます。

・臨床現場で、ミニメンタルテスト(以下、 MMSE *5 )を実施した際に「遅延再認*6」も確認すると、iNPHとADの鑑別能があがります。

※添付画像、あるいは下記URL参照(表A:iNPH患者12例における記憶能に関する評価)

 http://goo.gl/CLfWf6



●iNPHへのAD併存の鑑別(数井先生ご発表内容より抜粋)

・DESH*7が確認されているケースでは、「遅延再認」のスコアが悪い時に、ADの併存を疑うきっかけにもなります。

※添付画像、あるいは下記URL参照(参考:iNPH患者44例におけるシャント術後の症状改善の有無)

 http://goo.gl/3WsG4I



●タップテスト・シャント術前の、抗凝固薬・抗血小板剤管理について(村井先生ご発表内容より抜粋)

・iNPHは高齢者に多い疾患のため、神経変性疾患だけでなく心血管疾患を併存している場合が少なくありません。術前の抗血栓薬服用薬管理についてiNPH診療上のガイドラインはありませんが、出血した場合の障害が大きいため、シャント術の患者さんは手術時出血高リスク群としてとらえる必要があります。

・現時点ではシャント術の際は、ワルファリンなどの抗凝固薬についてはヘパリン置換することが推奨されますが、適切な休薬と再開が行われれば不要とする意見も最近は多くなっています。抗血小板剤を2剤以上服用されている患者さんにおかれては、個別に血栓リスクを検討する必要がありますので処方医の意見を聞く必要があると思います。

・タップテストの際は、抗血小板剤1剤の服用であれば休薬の必要はないとする意見が多いですが、抗凝固薬は休薬が望ましいと言えます。





<同時中継共催ランチョンセミナー概要>

iNPHの併存例診療のコンセンサス

2016年5月20日(金)12:10-13:10

プログラム1:iNPHの併存例の診療の実際

プログラム2:ディスカッション&コンセンサス 併存例をどうするか?



<第57回日本神経学会学術大会>

会長:梶 龍兒先生 徳島大学大学院医歯薬学研究部臨床神経科学分野

会場:神戸コンベンションセンター

座長:森 悦朗 先生 東北大学大学院医学研究科高次機能障害学

演者:数井 裕光 先生 大阪大学大学院医学系研究科精神医学



<第36回日本脳神経外科コングレス総会>

会長:吉村 紳一先生 兵庫医科大学大学院医学研究科脳神経外科

会場:大阪国際会議場

座長:石川 正恒 先生 済生会音羽病院正常圧水頭症センター

演者:村井 尚之 先生 千葉大学大学院医学研究院脳神経外科



<アンケート概要>

実施機関:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 メディカル カンパニー コッドマン&CMF事業部

アンケート名:「特発性正常圧水頭症(iNPH)の診療に関するアンケート」

対象:中継セミナーに参加された約360名の医師

解析数: 回答者合計234名(日本神経学会学術大会会場151人、日本脳外科コングレス総会会場83人)

実施時期:2016年5月20日



<iNPHについて>

iNPHは頭蓋内に過剰に髄液がたまり、脳が圧迫を受けて歩行障害・認知症・尿失禁などの症状が出る病気で、手術で改善が見込まれる、認知症の原因疾患の一つです。

日本においてiNPHの疑いがある人(iNPH有病率)は、少なくとも高齢者人口の1.1%*8程度とされており、2014年の高齢者人口をベースとすると36万人程度*9とも予想されます。また日本における認知症の人の数は2015(平成27)年の推計で517万人と65歳以上高齢者の約7人に1人、2025年には約700万人になると推計されています*10が、認知症の原因疾患の全体の約5%程度はiNPHによるものであるとも言われています*11。



<コッドマン事業部について>

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカル カンパニーのコッドマン&CMF事業部は、米国ジョンソン・エンド・ジョンソンのデピューシンセスグループの一部門です。コッドマンはマサチューセツ州にて1830年代にThomas Codmanによってアメリカ最古の医療機器会社として設立されました。現在、脳神経外科を中心に展開し、水頭症治療機器、電気手術器械装置などを取り扱っています。





*1 日本正常圧水頭症学会 特発性正常圧水頭症診療ガイドライン作成委員会「特発性正常圧水頭症診療ガイドライン 第2版」iNPH疑いの有病率より算出

*2 ウエクスラー記憶検査 :国際的に使用される総合的な記憶検査

*3 遅延再生: 記憶したものに関して、一定時間保留後に再生すること。

*4 Ogino et al. “Cognitive Impairment in Patients with Idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus” Dement Geriatr Cogn Disord, 2006;21:113-119

*5 ミニメンタルテスト: 1975年に米国で開発された、認知症診断のための質問セット。11の質問で30点満点。24点以上で正常、20点未満で中等度の認知症を疑うような基準となっている。

*6 遅延再認: 記憶したものに関して、選択肢の中から選ぶこと。

*7 「くも膜下腔の不均衡な拡大を伴う水頭症(disproportionately enlarged subarachnoid-space hydrocephalus: DESH)」。「特発性正常圧水頭症診療ガイドライン」では、DESHがある(=高位円蓋部および正中部の脳溝・くも膜下腔の狭小化がみられる)場合、タップテスト(脳脊髄液排除試験)やドレナージテスト(腰部持続脳脊髄液ドレナージ) での症状改善と同等の診断価値がある項目とされている。

*8 2011年日本正常圧水頭症学会「特発性正常圧水頭症診療ガイドライン第2版」

*9 2014年総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者(65歳以上)-敬老の日にちなんで『高齢者の人口』」推計を基に算出

*10 2015年厚生労働省「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン) ~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~の概要 【参考】『認知症の人の将来推計について』」

*11 2009年熊本大学神経精神科専門外来のデータ



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