認可保育園の保育料は、市町村民税(住民税)額に連動して計算されます。
さらに住民税の額は、年末調整や確定申告の結果(所得税額)に左右されます。
それでは、三段論法式に所得税の節税策を取れば保育料の引き下げになるかと言えば、大筋ではそのとおりですが注意すべき点もあります。
1. ふるさと納税・住宅ローン控除の減税に頼りすぎない
サラリーマンでもポピュラーなこの税金対策ですが、保育料算定やその他社会保障制度の利用においては、この策には大きな落とし穴があります。
保育料の基準になる住民税額ですが、税額控除前の所得割額となります。
税金対策となる控除などには以下があります。
・ 自営業者や不動産経営している人が使える青色申告特別控除
・ 所得から差し引く所得控除(医療費控除、生命保険料控除など)
・ 税額を引き下げる税額控除
住宅ローン控除は住宅ローン年末残高の1%(原則)を税額から差し引く税額控除になります。
ふるさと納税(その他の寄付金控除も含む)は複雑ですが、所得税においては所得控除、住民税においては税額控除の扱いになります。
住宅ローン控除や寄付金を考慮する前の所得割額に基づいて保育料が決まるのですから、これらの節税策は保育料引き下げにならないのです。
医療費控除・iDeCoなど活用を
特に住宅ローン控除を使うと、給与等から差し引かれていた所得税が全額還付になることも多いです。
この場合、生命保険料控除や医療費控除などの所得控除を使わない方もいますが、保育園に入っているお子様のいる世帯では、このような控除も入れておくとよいのです。
医療費控除については、平成29年度からセルフメディケーション税制の開始、「医療費のお知らせ」添付・明細書作成による領収書の添付省略など改正点もありますので、利用の機会は広がるはずです。
(参照 面倒な医療費控除集計をマイナンバーで自動化する構想があります)
また節税策としても注目されているiDeCo(個人型確定拠出年金)は、保育料引き下げだけでなく多くの社会保障制度活用においても役立ちます。
(参照: 確定申告によって自分の受ける社会保障はどう変わってくるのか(3)~申告のやり方が与える影響と対策~)
すまい給付金・高校就学援助金の所得制限と混同しないように
住宅購入の際に活用できる「すまい給付金」は、都道府県民税の所得割額によって金額が変わりますが、この所得割額は税額控除後であり、シミュレーションサイトでもふるさと納税(寄付金控除)の入力項目があります。
高校授業料無償化とも言われる、高等学校等就学援助金に関する所得制限でも同様です。
これらに関してはふるさと納税等の税額控除活用で有利になりますが、混同しないように気をつけてください。
2. 上場株配当の住民税申告で総合課税を選択しない
この他税額控除として代表的なものは、上場株の配当を申告した場合に使える配当控除があります。ただし、上場株の配当に関しては課税方式が
・ 申告分離課税
・ 申告不要制度
の3通りあり、総合課税を選択した場合に利用できます。
課税所得が少なく税率が低い場合は、所得税・住民税額だけを考えると総合課税を選択するとお得なのですが、保育料算定では配当控除は考慮されないので、総合課税を選択しない方がいいのです。
保育料引き下げに限らず、国民健康保険料引き下げや、所得制限付き社会保障制度を利用する場合は、申告不要制度の活用が望ましいとされています。
ただし、上場株式の所得に関しては、所得税と住民税で違う課税方式を選択することも可能です。
所得税は総合課税で申告し、住民税は申告不要制度を活用すれば保育料引き下げにはなります。(別課税方式の詳細は、まだ間に合うかも! 所得税と住民税を「戦略的」に申告して社会保障制度を有利にするを参照してください。)(執筆者:石谷 彰彦)