幼児教育と聞くと、難関私立小学校を受験させる「お受験ママ」をイメージする人も多いかもしれません。
「あまり小さい時にお金をかけても意味がないのでは?」と幼児教育に懐疑的な意見も多い中、アメリカで
という研究成果が発表されました。
その興味深い研究内容と、幼児期に始めるべき教育の内容についてご紹介します。
幼児教育の大切さを浮き彫りにした「ペリー就学前計画」
1962年から67年にかけて、アメリカで「ペリー就学前計画」という研究が行われました。
経済的に恵まれない3~4歳児に対し、週5日、児童心理の専門家らによる質の高い教育を行うというものです。
その後子どもたちが40歳になるまで追跡調査を行った結果、幼児期にこの研究で教育を受けた人々は、教育を受けなかった人々に比べ、大学に入る率が高く、所得が高く、また犯罪を起こす確率が低いなど、顕著な差がみられました。
ノーベル経済学賞受賞者のジェームズ・ヘックマン教授らは、幼少期に適切な教育を受けることによって養われた学習意欲が、その後の人生にも大きく影響したと考えており、青年期に教育を施すより、幼児期に教育を受けさせたほうが、より少ないコストで教育の効果が期待できるとしています。
またペリー就学前計画の提案者でもあり、研究者でもあったデビッド・ワイカートも、
と語っています。
どんな幼児教育を行うべき?
ということは、小さな時から書き取りや計算を教えた方がいいのでしょうか?
上述したペリー就学前計画において教育を受けた子どもたちのIQ(知能指数)は、6歳時点では教育を受けていない子どもたちより高くなりました。
ところが、8歳前後でほとんどその差はなくなってしまったのです。
つまり、記憶力や学力テストといった「認知能力」の早期教育は、その後の人生にあまり大きな影響を及ぼさなかったと言えます。
ペリー就学前計画では、IQを伸ばすための「認知能力」よりも、「非認知能力」を育てることに重きを置きました。
「非認知能力」とは、
のことです。
研究では、子どもの自発性を尊重した教育を行い、学んだことを復習するよう促し、子どもの家への家庭訪問も熱心に行うことによって、親の意識も変えていきました。
その結果、子どもの「好奇心旺盛でねばり強く課題に取り組める姿勢」といった「非認知能力」が高まり、将来の職業や生活スタイルにまで影響したのではないかと考えられています。
非認知能力を鍛えるには?
では、どのような教育に投資をすれば非認知能力が鍛えられるのでしょうか。
いくつか例をご紹介しましょう。
好奇心を育てる
子どもの好奇心を育むため、子どもが興味を持ったことにはできるだけお金をかけてあげましょう。
例えば、恐竜に興味を持ったら歴史資料館へ足を運んでみる、電車が好きなら実際に電車が走っている場所まで旅行してみる、関連する本や動画を探してあげる、といった方法が考えられます。
視野を広げるため、博物館や科学館などに家族で出かけるのもいいですね。新しい学びに喜びを覚える力は、一生を通じて大きな宝になります。
コツコツと努力を重ねるものに取り組む
ピアノやドリルなど、毎日少しずつ練習を重ねて成果を上げる経験をさせましょう。
地道な努力を続けられることや、途中であきらめたり投げ出したりしないようにする姿勢は、受験や仕事で成功するために必要不可欠なスキルです。
特にピアノは目や耳、両手や足など体のさまざまな機能を複合的に使う必要があるので、脳のトレーニングにも最適という説もあります。
子どもが興味を持っているのであれば、ピアノを習わせてあげるのも、教育投資の面からは効果的かもしれません。
体を動かす
外遊びやスポーツをすることで、「向上心」や「コミュニケーション力」などの非認知能力を鍛えることができます。
もちろん、健康維持や体力アップにも効果的ですから、子どもにはたくさん体を使って遊んで欲しいですね。
幼児教育では読み書きよりも「生きる力」を鍛えよう
幼児教育では「他の子よりも早く読み書きができるようになる」といった面がクロースアップされがちですが、大きくなるにつれそういった「認知能力」の差は消滅していくことが多いようです。
幼児教育にお金をかけるのであれば、文字の読み書きではなく、非認知能力を伸ばせるようなプログラムに投資する方が、より効果的で無駄が少ないと言えます。
子どもにかけられる教育資金には限りがあります。
子どもにどんな人生を歩んで欲しいのか、そのために必要なスキルは何かということをよく考えて、効果的な教育投資をしていきたいですね。(執筆者:青海 光)