前回のコラム「【不動産投資】法人化するメリットとそのタイミング ポイントは所得税の税率と譲渡所得税」では、税金に焦点を当ててお話ししました。
今回は同じテーマの続編。
引き続き、法人化するメリットや個人と法人の違いについてご説明します。
金融機関の受け止め方の違い
大きな経費が必要になることもある不動産投資。
物件購入などに伴い、その年の収支が赤字になることも珍しくありません。
個人・法人ともに、損失が発生した場合は繰り越すことができるのですが、その期間にも違いがあります。
不動産所得と他の所得の合計が赤字の場合、個人はその損失を3年間しか繰り越すことができない一方、法人の場合は9年間繰り越すことができるのです。
実に3倍もの差があります。そして、個人と法人の間には、減価償却費の扱いにも差があります。
個人の場合
個人の場合は強制償却となり、減価償却費は全額経費として扱われます。
法人の場合
一方、法人における減価償却費の扱いは任意償却。
減価償却費をどの程度経費にするか、法人は任意で決めることができるのです。
減価償却費で所得を調整することが可能に
これらの違いが、融資に影響を与えることも。
不動産所得が赤字でも、強制償却が求められる個人の場合は、減価償却費で所得を調整することができません。
他方、任意償却が認められている法人の場合は、減価償却費で利益を調整することが可能なのです。
つまり、減価償却費を少なくすることで、金融機関に対して利益が出ているように見せることができるというわけです。
法人化における最大のメリット
個人の場合も、配偶者などに給与を支払うことは可能です。
しかし、勤めている人に対しての給与の支払いが認められないなど、さまざまな制約が加わります。
法人が取得した不動産だったらどうでしょう。家賃収入による利益を受けるのは法人です。
家族が法人の役員になれば、法人が得た利益を役員報酬として家族に分配することも可能です。
500万円の利益を上げている法人があるとしましょう。
このうち300万円を、3人の役員に役員報酬として支払うと、法人としての利益は200万円に抑えられます。
このように所得が分散された結果、課税対象額が少なくなるとともに税率も下がり、節税へとつながります。
会社を作るのは意外と簡単!
会社の設立と聞くと仰々しく感じる方も多いでしょうが、合同会社であれば意外に簡単に作れてしまいます。
設立費用は6万円。司法書士に支払う報酬など、諸費用を含めても10万円ほどと、合同会社であれば経済的負担も少なく済みます。
株式会社と比較した大きなデメリットもありません。
敢えて言うならば、会社代表者の肩書が「代表取締役」ではなく「代表社員」と、少々響きが悪い程度。
また、「所有と経営が一体化する」という合同会社の特徴を考えても、個人の資産管理会社には向いていると言えるでしょう。(執筆者:内田 陽一)