トランプ次期大統領で日本でも意外な影響が…
平成28年11月の米国の大統領選でトランプ氏が勝利し、1月から正式にトランプ大統領が登場します。
「トランプ氏が勝利したら下がる」と言われていた日本の株価も上がり、いろいろな思惑なのか外国為替もドル高傾向です。
ちなみに最近…
日本の住宅ローンがじわりと上昇しています。トランプ次期大統領の政策への期待があり、米国の長期金利が急に上がり、その影響で日本の金利が押し上げられているとのことなのです。
人生の大きな買い物を決める住宅ローンの金利が変わってくるとは、思わぬところでトランプ政権の影響があるのですね。
12月にも米国では利上げしましたが、1月以降も米国の金利が住宅ローンにどうひびくか気になるところです。他にもトランプ政権で日本の生活にどんな影響がありそうかを考えてみましょう。
トランプ次期大統領はどんな政治をするつもり?
最新の米国勢調査局の公表ではオバマ大統領政権下、
「貧困率の低下」
「医療保険の加入率アップ」
の3つで格差是正が確認されたそうなのです。
トランプ次期大統領政権では米国民の生活はどのように変わるのでしょう?
選挙期間中からトランプ次期大統領が公約している主な政策
・ TPP撤退
・ オバマケア一部を残して廃止
・ 米国人の雇用を優先
・ ドットフランク法廃止
・ 米軍基地の維持費を全額相手国に負担
・ 最低賃金を州の裁量で決定
・ 法人税率引き下げ
・ 中間層所得税引き下げ
・ 相続税廃止
・ パリ協定から撤退
・ 中国に知的財産侵害をやめさせる
・ メキシコとの国境に壁を作る
・ 不法移民に厳しく
トランプ次期大統領が言う通りに実行したら、日本人の生活にはどんな影響が?
トランプ次期大統領の政策のうち、日本人の生活に影響を与えそうな政策をどのような影響になるか考えてみましょう。
オバマケア一部存続一部廃止
オバマケアのおかげで医療保険に一切入っていない非加入率が2015年には9.1%にまで低下しました。若い世代の非加入率は2010年に30%と全世代と比べても高かったのです。
トランプ次期大統領は、「オバマケアを廃止する」と言っていたのですが、最近では1部存続すると意見を変えている様子です。
ドット・フランク法廃止
ドット・フランク法とはオバマ現大統領がサブプライム(リーマンショックの元凶)の反省から消費者保護を主にデリバティブの規制などを中心に規制し金融機関を抑え込んだ政策でした。
トランプ次期大統領はドット・フランク法をやめると言っています。
大量の投機資金がヘッジファンドなどを通じて再び国境を超えるかもしれません。日銀の当座預金にある大量の資金が日本の銀行の海外支店を通じて、海外で投機に使われる可能性もあるかもしれません。
という懸念もあるようです。
法人税引き下げ、中間層への所得税減税
法人税・所得税の大規模減税で米国が財政赤字になったら日本へは防衛費負担増を求めてきて、日本が言いなりになれば消費税が10%どころではない大幅増税になるかもしれませんね。
日本に一番影響するのはやはり、米国のTPP不参加?
トランプ次期大統領は1月1月に正式にTPP離脱を表明しています。
の意見も出そうですが、TPP発効には12か国のうち85%以上のGDPを持つ6か国以上の承認が必要というルールです。
GDP合計の60%超のGDPを持つ米国が抜けると他の国が入らない場合、結局ご破算になる可能性が高いのです。
米国では日本との2国間交渉で経済提携を求めてくるので、TPPより強引に米国有利な条件で勧めてくる可能性があるのでは? という意見もあります。
日米保険協議ではどうだった??
日本と米国の2国間交渉と言えば、近年では日米保険協議があります。
「日本と米国における保険に関する措置」が調印された後も交渉は続いてます。
1996年6月までに最終的な内容
・届出制の種目を拡張(16種)
・火災保険・傷害保険・自動車保険における、保険料カルテル保険料率の廃止(損害保険料率の自由化)
・リスク細分型の自動車保険を認める。
・生命保険・損害保険の子会社の第3分野への乗り入れを規制する(これにより業界の劇変に対応する)
特に第3分野(医療保険・がん保険など)乗り入れ規制などは、米国の保険会社が第3分野を独占している状態を変えたくない(米国の保険会社が既得権をそのままにしたい)から、という声がありました。
結局米国の意向を強く反映した協議だったのでは? との意見がありました。それだけ米国の交渉力は強いと言えます。
「ゆうちょ」や「共済」があぶない
合意されたTPP協定の中には「国有企業・指定独占企業」がサービスを行うときも他の参加国の企業にも商業的配慮をするような条文(17条)があります。
これは、
という見方もあります。
米国がTPPに参加しなくても日本との2国間協議で「日米保険協議」のときのように米国の保険会社の利益を考えて、強く商業的配慮を求めてくる可能性もあります。
「掛け金は安いけれど保障がたりない」という意見も多い共済ですが、これで間に合う人も多く、もし共済の掛け金が上がってしまうと不便になるのではないでしょうか?
米国抜きでTPP発効はあり?
TPPの参加予定国
・ 日本
・ 米国
・ カナダ
・ オーストラリア
・ ニュージーランド
・ シンガポール
・ メキシコ
・ チリ
・ ペルー
・ マレーシア
・ ブルネイ
・ ベトナム
の今のところ12か国でしたが、トランプ次期大統領はTPPを離脱すると言っています。
米国抜きでTPP発効ということはできるのでしょうか?
TPP参加予定国の中でも米国が抜けた場合、おおまかに…
「TPP継続の方向で」
・ メキシコ
・ ニュージーランド
「他の選択肢を」
・ ベトナム
・ マレーシア
・ シンガポール
「他の国を入れて交渉」
・ オーストラリア
・ ペルー
というように国によって対応が分かれています。
日本がリーダーとしてまとめられないか…
関税、知的財産権や労働についてもGDPの大きさから日本がリーダーとして各国をまとめて行かれないのでしょうか?
現在のTPPの基準は米国を考慮したルールのため、米国が抜ければ他の国が入る、または他の参加国でルールを練り直すなど、新たに基準ができることもあり得るのでしょう。
TPPがやはりご破算になったら?
「米国の抜けたTPPなんて意味なし!」とGDP4.76兆ドル(12か国GDPの約17.7%)の日本がTPPを辞めるとおそらくTPP発効は無くなり、今後の輸入品はあまり増加しないでしょう。
TPPが無事発効されれば、時間をかけて関税が下がり、参加国からの輸入品は段々と安くなっていきます。
それがTPP発行されなければ現在参加国(オーストラリアなど)からの輸入品(牛肉や豚肉など)は関税が今のままになるので将来的にも安くはならないでしょう。
日本が参加国へ輸出している自動車なども、TPP発効されなければ、高い関税がかけられたままになります。
関税が高いとどのような影響があるか
・ 日本車が参加国であまり売れないかもしれません。
・ インターネット上の電子書籍や音楽コンテンツを購入するときも、国が違えば関税がかけられたままです。参加国の音楽コンテンツを安く購入することはできません。
・ ベトナムで衣料を作ることを計画している企業もあり、現在多い「中国で作られた」衣料より安い衣料を作る可能性もなくなるでしょう。
衣料品にしても牛肉や豚肉、インターネット上の音楽などTPPの対象品目が「今のままでも安い」と感じる人にはTPPを発効しなくても現状維持のままでいいのかも知れませんね。
オバマケア縮小で米国の薬がたくさん入ってくる?
トランプ次期大統領は、米国の公的医療保険オバマケアを縮小すると言っています。それにより米国国内で公的医療保険による利益が縮小し、製薬会社の雇用等が危ぶまれるかもしれません。
日本の医療分野に対してTPPより米国に有利な条件を2国間交渉で求めてくる可能性もあります。
新薬のデータ保護期間変更
TPPでは新薬のデータ保護期間(再審査期間)は8年なので、8年超えるとジェネリック医薬品を出せます。
でも米国では元々新薬のデータ保護期間は12年だったのです、日本との2国間交渉では12年に戻そうとしてくるかも知れません。
米国には製薬会社も多く研究開発も進んでいるので、ジェネリック医薬品までの期間が長くなるのは新しい薬を望む人には不利益になるでしょう。
日本の社会保障や医療保険分野への労働の自由化
TPPでは、自国の社会保障、社会保険、医療保険などはTPP範囲外とされていますが、2国間交渉では日米保険協議の時のように、米国有利な条件を突き付けてくるかも知れません。
日本の社会保障や医療保険分野への労働の自由化を米国ファーストで求めて来たら日本はどうなるでしょうか。
もし米国から協議で要求があった場合
日本が全部受け入れるとは限りませんが、同盟国なので一部は受け入れざるを得ないかもしれません。特に医薬品の分野では影響がありそうに思います。
今より日本の健康保険で使える薬の中に米国の製薬会社のものが増えるかも知れませんね。
始まってみなければわからないトランプ政権。日本でも株価上昇など今のところ恩恵を受けていますが、いい影響が1月も続くことを願っています。(執筆者:拝野 洋子)