会社員や年金受給者が所得税を節税するためには、所得控除や税額控除をうまく活用するのがポイントになります。
納税者ごとに適用できる所得控除の種類は違いますが、認知度が高い所得控除でも、節税効果があまり見込めないものもあるので気を付けてください。
本記事では、節税効果が薄い所得控除と、節税効果を得るのが難しい理由について解説します。
所得控除の種類
所得控除は、配偶者控除や寄附金控除など、所得金額から差し引く控除をいいます。
<所得控除の種類>
雑損控除
医療費控除
社会保険料控除
小規模企業共済等掛金控除
生命保険料控除
地震保険料控除
寄附金控除
障害者控除
寡婦控除
ひとり親控除
勤労学生控除
配偶者控除
配偶者特別控除
扶養控除
基礎控除
所得税は、所得金額から所得控除を差し引いた額に税率を乗じて税額を算出しますので、所得控除の合計額が大きいほど、所得税を節税することができます。
要件を満たせば複数の所得控除を重複適用することも可能ですが、各控除の適用要件は個々に違いますので、納税者自身が適用できる所得控除を確認しなければなりません。
所得控除の節税効果は所得金額が多い人ほど高くなる
所得税は累進課税制度が採用されており、税率は5%から45%までの7段階に区分されています。
適用税率が高くなれば納める所得税も多くなりますが、所得控除の節税効果は適用される税率によって変化するため、所得控除の額だけでなく、納税者の所得金額によっても節税効果に差が出ます。
たとえば所得控除10万円を適用する場合、所得税の適用税率が10%の人であれば、節税効果は1万円分(10万円×10%)です。
一方、適用税率45%の人については、所得控除が同じ10万円でも、4.5万円分(10万円×45%)の所得税を節税することができます。
「所得控除で最大〇〇円の節税が可能」と謳われている場合、最も高い税率が適用されていないと、最大まで節税できないことが大半なので気を付けてください。
生命保険料控除を適用するためには保険料の支払いが必要
生命保険料控除は、生命保険料と個人年金保険料、介護医療保険料を支払っている場合に適用できる所得控除です。
最大12万円を差し引くことができる生命保険料控除ですが、適用するためには生命保険等に加入し、保険料を支払っている必要があります。
生命保険等に加入していなければ控除は受けられませんし、支払った保険料がそのまま控除額になるとは限りません。
生命保険料控除の控除額は最大12万円ですが、最大まで控除を受けるためには24万円以上の保険料の支払いを要します。
同じ所得控除である社会保険料控除は、国民年金保険料などとして支払った金額がそのまま控除額となりますので、生命保険料控除の節税効果は社会保険料控除に比べると一段階下がります。
生命保険等に加入している方であれば、生命保険料控除は適用すべき制度ですが、生命保険料控除を適用するために保険に加入するのは本末転倒なので注意してください。
医療費控除は原則10万円を超えないと適用できない
医療費控除は、支払った医療費に応じて適用できる所得控除です。
医療費をそのまま所得控除として差し引くことはできず、所得金額が200万円を超える方については、年間の医療費の総額が10万円を超えていないと医療費を支払っていても、医療費控除を適用することはできません。
毎月8,400円以上の医療費を支払っていないと年間10万円は超えませんし、10万円を差し引いた額が医療費控除額となるため、節税効果は限定的です。
同じ所得控除に寄附金控除がありますが、こちらは2,000円を差し引いた額が控除対象となるため、単純な節税効果は寄付金控除の方が高いです。
実際に多額の医療費を負担した場合には、医療費控除を適用した方がいいですが、医療費控除を適用するために医療費を増やすメリットはありません。
医療費控除よりも節税効果の低い「セルフメディケーション税制」
セルフメディケーション税制は、健康診断等を受けている人が特定一般用医薬品等を購入した場合に適用できる所得控除です。
所得控除となるのは、購入金額から1万2,000円を差し引いた金額で、控除額は最高8万8,000円(購入金額10万円)です。
医療費控除は原則10万円超から所得控除の対象になる制度なのに対し、セルフメディケーション税制は購入金額が1万2,000円を超えれば適用できるため、医療費控除よりも適用するハードルは低いです。
一方で、セルフメディケーション税制の控除額は最大でも8万8,000円と、大きな節税効果は期待できず、医療費控除との併用適用も認められていません。
控除対象になるのは特定一般用医薬品等に限られていることから、日常的に医薬品を購入している人以外は活用しにくい制度となっています。
節税よりも普段の支出を見直した方が節約できる
生命保険料控除や医療費控除のように、支出が発生していないと適用できない所得控除を受けるためだけに支出を増やす意味はありません。
所得控除を適用し、確定申告で納め過ぎた所得税が還付されるのは嬉しいですが、所得控除を適用するために要した支出を抑えた方が手元にはより多くのお金が残ります。
所得控除には配偶者控除や扶養控除など、支出がなくても適用できる控除もありますので、コスパよく節税したい場合は、現状のまま適用できる所得控除があるか確認してください。
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