日本に居住している20歳以上60歳未満のすべての方は、日本の公的年金である国民年金に加入して、原則20歳から60歳までの40年間国民年金保険料を支払う必要があります。
国民年金の被保険者の中でも自営業者や学生や無職の方など国民年金の第1号被保険者は、自分で国民年金保険料を支払わなければなりません。
そのため、働いていない20歳以上の学生の方であっても原則国民年金保険料を支払う必要がありますが、実際には収入がないため払うのが厳しいケースが多いです。
そのような学生のために、国民年金には国民年金保険料の支払いが猶予される、国民年金保険料の学生納付特例制度があります。
今ではこのように20歳以上であれば学生であっても国民年金に加入しなければなりませんが、1991年3月までは学生の国民年金への加入は任意でした。
すなわち、学生が希望をすれば国民年金に加入しなくてもよかったのです。
今回は、学生が国民年金に任意加入だった時代に国民年金に加入せずに、国民年金保険料を払っていないケースについて解説していきます。
学生時代に国民年金が任意加入だった方の老齢基礎年金
国民年金の老齢に対する給付である老齢基礎年金は、保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間を合わせた受給資格期間が10年以上あれば、原則65歳から受給できます。
老齢基礎年金の満額を受給するためには、保険料納付済期間が加入可能年数である40年(480か月)あることが必要です。
令和6年度の老齢基礎年金の満額は、年額81万6,000円(昭和31年4月2日以後生まれの新規裁定者)です。
学生が国民年金に任意加入しなかった期間については、老齢基礎年金の年金額には反映されません。
ただし、その期間は合算対象期間として、受給資格期間に含まれます。
例えば、1991年3月まで大学生だった方で、大学卒業後の22歳から60歳まで会社員で、国民年金の第2号被保険者期間が38年(456か月)だったとします。
この方の老齢基礎年金の受給額は、年額77万5,200円(81万6,000円×456か月÷480か月)です。
すなわち、老齢基礎年金の満額は、受給することができないことになります。
学生時代に国民年金が任意加入で老齢基礎年金が満額受給できない場合
学生時代に国民年金が任意加入で老齢基礎年金が満額受給できない場合には、60歳以降に会社等で働いていなければ満額受給できるまで国民年金の任意加入被保険者になる方法があります。
また、60歳以降も会社等で働いていて厚生年金保険に加入していれば、老齢基礎年金は増やせませんが老齢厚生年金を増やすことで老齢基礎年金の不足部分をカバーすることができます。
老齢厚生年金の受給金額は、以下の計算式で算出できます。
老齢厚生年金額=報酬比例部分+経過的加算+加給年金額
老齢基礎年金の受給額は、20歳~60歳までの国民年金の納付月数や厚生年金保険の納付月数などで算出されます。
しかし、20歳未満や60歳以降の厚生年金保険の被保険者期間は、老齢基礎年金の受給額に反映されません。
そのため、20歳未満や60歳以降に厚生年金保険に加入していた場合には、経過的加算として老齢厚生年金に上乗せして受給することができるのです。
経過的加算額は、以下のA-Bで計算することができます。
A:令和6年度の年の厚生年金保険の定額単価(1,701円)×厚生年金総加入月数(上限480か月)
B :令和6年の老齢基礎年金満額(81万6,000円)×20歳以上60歳未満の厚生年金保険加入月数÷480
不足部分をカバーすることができるかも
このように、今50代半ばくらいの方は学生時代に国民年金が任意加入だったので、その時の国民年金保険料を払っていない方が多いと思います。
しかし、ずっと会社員等の方であれば、現在定年が65歳の会社も多いので、老齢厚生年金を増やすことで老齢基礎年金の不足部分をカバーすることができるかもしれません。