税金の支払いは少ない方がうれしいですが、働き方の変化などの理由から、昨年よりも税金の支払いが増えてしまうケースがあります。
本記事では、所得税・住民税の支払額が増加する原因を9種類ご紹介します。
1. 給与額が増えた
所得税や住民税は年間の所得金額をベースに計算しますので、会社員や公務員などの給与所得者は、給与が増えることで納税額も多くなります。
給与が増えるケースとしては一般的に、昇進や昇給、残業代の増加などが挙げられます。
所得税と住民税の計算は1月から12月を1年としますので、残業を多くした月が前後したことで年間の給与額が増え、税金が高くなることもあります。
2. 副業収入を得るようになった
ひと昔前まで副業をする敷居は高かったですが、最近ではクラウドサービスなどを利用して簡単に副業が行えるようになっています。
副業による収入を得られれば手元に入るお金が増えますが、所得金額の増加は所得税・住民税の増加につながります。
勤務先で年末調整をしている方の場合、副業による所得金額が20万円以下であれば、所得税の申告は不要になる特例の対象となるため、副業で収入が増えても所得税の支払いは変わらない可能性があります。
一方、住民税には所得税のような申告不要制度は存在しませんので、副業で所得金額が増えたときは、住民税の申告手続きが必要です。
(税務署に所得税の確定申告書を提出する場合については、別途住民税の申告をする必要はありません。)
3. 不動産・株式の売却益が発生した
働き方が昨年と同じであったとしても、突発的な収入が発生したことで納税額が増えることがあり、不動産や株式を売却した場合には、売却益に対して所得税・住民税が課されます。
ただ譲渡所得は給与所得と違い、利益に対して課される税金ですので、売却損失が生じた際に譲渡所得税を納めることにはなりません。
4. 生命保険金が満期になった
生命保険金が満期になった場合、一時金として保険金を受け取ることができますが、満期保険金に対しても税金が課されます。
課税対象となるのは、受け取った保険金から払込保険料や掛金を差し引いた額であるため、保険金よりも支払った保険料等の額が大きければ所得金額は生じません。
また、一括で受け取った満期保険金は一時所得の対象となりますが、一時所得には50万円の特別控除額が用意されていますので、満期保険金による利益が発生したとしても、50万円以下であれば所得税・住民税はかかりません。
5. 個人年金の受け取りが開始した
民間の保険会社で積み立てたお金を年金形式で受け取った場合、雑所得の対象となります。
個人年金は、受け取った年金に応じた払込保険料や掛金を差し引いた額が所得金額となるため、公的年金とは所得金額の計算方法が異なります。
公的年金と個人年金を受け取っている方については、双方を合算して年間の所得金額を算出することになるのでご注意ください。
6. 扶養家族の人数が減った
所得税や住民税には配偶者控除や扶養控除があり、扶養している家族が多いほど控除額が多くなります。
しかし、扶養していた家族が働き始めたなどの理由で扶養から外れた場合、配偶者控除や扶養控除の適用額が減る可能性があります。
家族がアルバイト・パートをしていても、生計を一にする親族の年間の合計所得金額が48万円以下であれば、扶養控除の対象です。
一方、生計を一にしていない家族や、合計所得金額が48万円を超えた家族については、扶養家族の人数としてカウントできません。
7. 医療費控除を適用しなくなった
多額の医療費を支払った年は、医療費控除を適用することで所得税・住民税を減税することができます。
しかし、前年よりも医療費の支払いが少なければ医療費控除額が減る可能性や、医療費控除が適用できなくなる可能性があります。
医療費控除は、原則10万円を差し引いた額が控除対象となるため、医療費の額が10万円以下だと基本的に適用することができません。
また、医療費を10万円以上支払っている場合でも、医療費に対応する保険金等を受け取っているときは、補填された金額を差し引いた額で適否判定を行います。
8. ふるさと納税による寄附額が減少した
ふるさと納税は、寄附した額から2,000円を差し引いた額が原則所得税または住民税から控除されます。
寄附額が減少すれば、所得税・住民税から減税される額が小さくなるため、他の所得・控除が変わらなければ、前年よりも納税額は増加します。
9. 住宅ローン控除の適用期間が終了した
住宅ローン控除は、ローンを組んで自宅を購入した場合に適用できる特例で、住宅ローンの残高に応じて一定割合を所得税から控除できます。
住宅ローンの残高が少なくなれば控除額は小さくなりますし、適用期間が終了すれば控除されていた税額分だけ納税額が増えます。
住宅ローン控除の適用年数は、適用初年度の年分や建物の構造等によって異なるため、特例を適用している方は残存年数に気を付けてください。
令和6年は定額減税で納税額が減る可能性がある
本記事でご紹介したケースに該当する項目が多い方ほど、納税額が増える可能性がありますが、令和6年は定額減税が適用されるので、収入・控除関係に変化がなければ所得税・住民税の総額は減ります。
ただ執筆時点では定額減税は1回だけの措置となっているため、今回減税された分だけ、来年所得税・住民税が増える感覚になるので注意してください。
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