税金の調査といえば「マルサ」のイメージを持つ方もいるかと思いますが、税務署が実施する「税務調査」とマルサが実施する「査察調査」は、調査の種類が違います。
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マルサが担当する税金調査は全体のごく一部ですので、今回は査察調査の概要と、年間で実施される調査件数について解説します。
マルサは税務署には存在しない
マルサは国税査察官の俗称で、査察の頭文字である「サ」を〇で囲ったものをいいます。
マルサの名が一躍有名になった映画「マルサの女」は、主人公が国税局査察部に勤務している作品です。
国税査察官は高額の脱税犯や悪質にごまかしている疑いのある人を強制的に調査し、検察官に告発することを目的とする査察調査(強制調査)を実施します。
一般の税務調査と違い、査察調査は裁判官の許可がないと実施できませんが、調査するのに納税者の同意を得る必要がなく、関係資料を押収することが認められています。
一方、国税査察官が在籍するのは国税庁や国税局にある査察部や査察課であり、税務署にそれらの部署は存在しません。
査察調査の年間実施件数は100件~200件程度
令和4年度の査察調査の着手件数は145件であり、
令和4事務年度に実施された所得税の調査件数63万7,823件に比べると非常に少ない
です。
査察調査は所得税だけでなく、法人税や相続税などの税金に対しても実施されていますので、全体の調査件数で考えると査察調査が行われている割合はとても低いです。
査察調査の件数が少ないのは、
査察調査を担当する国税査察官の人数が限られている点と、
1件当たりの査察調査に多くの時間が費やされていること
が理由として挙げられます。
一般の人が査察調査を受ける確率は低いですが、万が一調査対象となったときの影響は大きいです。
査察調査の告発割合は70%前後
税務調査と査察調査は、申告誤りを指摘された際のペナルティも違います。
一般的な税務調査は本税に加えて、加算税・延滞税を納めることになりますが、査察調査ではこれらのペナルティだけでなく、刑事罰に処される可能性があります。
令和4年度に処理された査察調査139件のうち、103件(74.1%)が検察に告発されており、告発された事案のほとんどは一審判決で有罪が下されています。
令和3年度および4年度の有罪率は100%で、実刑判決が下されたケースもあるなど、査察調査を受けるリスクは極めて高いです。
査察調査を回避するためにやるべきこと
査察調査を回避する手段として最も効果が期待できるのは、
申告期限までに正しい内容の申告書を提出すること
です。
査察調査は年間で実施できる件数が少ないことから、対象者として選定されるのは高額かつ悪質な脱税犯に限られています。
期限内に申告書を提出していれば基本的に査察調査を受けませんし、計算ミスなどをしてしまったとしても、それだけを理由に査察調査は行われません。
ただし、「高額」や「悪質」の判断は国税庁・税局・税務署がしますので、査察調査のリスクを限りなくゼロにするためにも、適正な申告手続きを行うことが大切です。
参照:国税庁「令和4年度査察の概要(pdf)」
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