国民年金の保険料は60歳まで支払うのに対して、厚生年金は60歳以降も保険料が発生します。
厚生年金の保険料は健康保険料と比べても高額であり、いつまで引かれるのかはおさえておきたい論点です。
今回は厚生年金の保険料について解説します。
厚生年金の保険料はいつまで引かれるのか
日本の法律上、原則として定年年齢は60歳以上であることとされますが、近年は60歳を過ぎても同じ労働条件で働き続けるケースは多くあります。
そうなると、社会保険料の中でも最も高額である厚生年金の保険料は、いつまで引かれるのかという相談が少なくありません。
定年退職後も嘱託職員等として、70歳を超えても働く前提で話を進めると、70歳到達まで支払う必要があります。
理由として、厚生年金は70歳到達をもって加入資格を喪失となっており、資格喪失をもって保険料の支払いがなくなるからです。
他方、年金の受給資格を満たさない等一定の要件を満たす方の場合は、70歳を過ぎても企業で勤めることで、任意で厚生年金保険への加入が可能となるケースがあります(詳細割愛)。
厚生年金保険料の仕組み
国民年金の保険料は、全額を自身で負担することとなります。
国民年金は、企業に属しているわけではない自営業者等が加入対象となるため、至極当然ではあります。
他方、厚生年金の保険料は請求自体も会社に発生し、労使折半となります。
言い換えると、会社と加入者で50%ずつを納めるという理解です。
厚生年金の適用範囲の拡大
原則として健康保険もセットではありますが、適用対象者の拡大が行われています。
具体的には以下のいずれの要件を満たす場合は、定年退職後であっても社会保険の適用対象者となります。
101人以上の事業所であること(2024年10月1日~51人以上)
継続して2か月を超えて雇用見込み
報酬の月額が8万8,000円以上
週の所定労働時間が20時間以上
学生でないこと
すなわち、定年退職後で働く時間が短くなったとしても、上記の5つの要件を満たす場合には、引き続き厚生年金の保険料も引かれるとの理解です。
もちろん、引き続き厚生年金に加入することでメリットもあります。
最もイメージしやすいのは、老後の年金が増額することです。
老後の年金は、
原則として65歳から自身が亡くなる月まで受給でき、
亡くなる月分は理論上自身で受給することは不可能ですので、遺族が未支給年金として受給することとなります。
労働収入がなくなったあとは、不動産収入等の収入源がない場合、年金収入が主たる収入源となることでしょう。
その場合、より長い期間厚生年金に加入することは長い目で見るとメリットとなる点もおさえておくべきです。
他の保険料について
給与明細を開くと、厚生年金保険料の他にも、健康保険料や雇用保険料の項目もあります。
これらの保険料はいつまで引かれるのでしょうか。
まず、健康保険料については75歳以降が後期高齢者医療制度に移行する為、それまで社会保険適用対象となる働き方で継続就労する場合は引かれることとなります。
次に雇用保険料についても、雇用保険適用対象労働者として継続就労する限りは、年齢に関係なく引かれ続けることとなります。
よって理論上は、雇用保険料が最も長く引かれ続けるとの理解です。
もちろん雇用保険についても、
失業時の失業保険や、
介護が必要となった家族に対して休業が必要となった場合に介護休業給付金制度があるなど、
雇用保険ならではの給付制度があるため、そのような状況が訪れた際には家庭と雇用との両立のために積極的な活用が望まれます。
年末調整を通じて所得税額が低くなるというメリットもある
厚生年金の保険料は高額ではあるものの、社会保険料控除として年末調整時に申告することができますので、その分おさめるべき所得税額が低くなるという点もメリットと言えるでしょう。