「介護保険負担限度額認定証」をご存じですか。
親の介護や配偶者の介護等に「介護保険を使っているけれど、知らない」という方も多いのではないでしょうか。
国の制度は、こちらから「このような制度有りませんか」ときかなければ、なかなか教えてもらえないものです。
そこで、介護保険の自己負担額を減らす「介護保険負担限度額認定証」についてご紹介します。
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介護保険負担限度額認定制度とは
介護保険サービスの自己負担は1~3割ですが、介護保険施設やショートスティを利用した時の食費や居住費は、全額自己負担となります。
すると高額となってしまい、生活がひっ迫する方もいるかもしれません。
介護保険負担限度額認定制度とは、一定の要件を満たす所得の場合、介護保険施設等を利用する際の全額自己負担分である食費や居住費を軽減することができる制度です。
ただし、誰でも申請できるわけではなく、所得と預貯金等の要件があり世帯によって異なります。
【所得の要件】
・ 本人を含む世帯全員が住民税非課税であること
・ 配偶者と世帯分離をしていても、配偶者の所得も合計されます
【預貯金等の要件】
- 配偶者がいる場合は2,000万円以下で、
- 配偶者がいない場合は1,000万円以下になります。
預貯金等には、預貯金はもちろん、現金、有価証券(株式、国債、債券等)、投資信託、金や銀などの貴金属が対象となり、借金や住宅ローンなどの負債は、差し引くことができます。
生命保険や自動車、宝石や腕時計はいくら高価でも対象とはなりません。
介護保険負担限度額認定証の対象サービス
介護施設であればどこでも対象となるのではなく、以下の施設が負担軽減の対象施設となります。
【施設サービス】
・ 特別養護老人ホーム
・ 介護老人保健施設
・ 介護療養型医療施設(2024年3月末で完全廃止)
【ショートスティ】
・ 短期入所療養介護
・ 短期入所生活介護
【その他】
・ 地域密着型介護老人福祉施設(小規模な特別養護老人ホーム)
よく見かける民間の介護施設であるサービス付き高齢者向け住宅、グループホーム、有料老人ホームなどは対象外となります。
対象外ですが、介護施設によっては、安い金額で入居できる施設もあります。
利用者の負担段階・負担限度額
所得や預貯金などの条件によって負担の軽減割合が変わり、これを利用者負担段階といいます。
第1から第4段階あり、数字は大きくなるにしたがって負担が重くなっていきます。
≪画像元:伊東市≫
負担限度額を超えた場合、超過した分は介護保険から支払われます。
例えば第1段階の方が食費でひと月2万円かかった場合は、9,000円で済みます。
上記の表で明らかなように第4段階の利用者は、居住費と食費が軽減されません。
しかし、いくら預貯金があるからといっても高齢者夫婦や年収が低い世帯の場合、配偶者や親が施設に入所したことにより、利用料の支払いで経済的に大変となることがあります。
この場合、特例軽減措置といって、一定の条件に該当すれば入所した施設の居住費と食費について第3段階の負担限度額となります。
申請について
介護保険負担限度額認定の申請は、各市区町村の介護保険を担当する課で行います。
申請書類に必要事項を記入したうえで、必要書類をそろえて本人または家族が申請をします。
準備する書類として以下がありますが、自治体によっては異なることもありますので、事前に確認をするとよいでしょう。
・ 介護保険負担限度額認定申請書
・ 同意書
・ 通帳等の写し(配偶者「有」の場合は、配偶者名義のものも必要)
介護認定証の期間は、8月1日~翌年7月31日までの1年間で、毎年更新が必要です。
ただし、翌年からは自動的に更新の書類が送られてくるので、忘れないで更新をしましょう。
注意したいのは、通帳のコピーは提出したけれど株式については提出しなかったなど、一部を除いた申請です。
後から調べられて不正がわかったときは、負担限度額の3倍分の費用を支払わなければならなくなりますので、正しく申請をしましょう。
住民税非課税世帯の方には大きなメリット
介護保険負担限度額認定証は、申請をして認定されることで、老人保健施設や特別養護老人ホーム、ショートスティでの居住費や食費が軽減されるという制度です。
特に住民税非課税世帯の方には大きなメリットがあります。
老人保健施設や特別養護老人ホームは、よく「民間より安い」と言われますが、居住費や食費の補助があるからです。
しかし、安いためどちらも(特に特別養護老人ホーム)満室が続き順番待ちの状態です。
そのため、やむを得ず民間の介護施設に入居する場合もあるでしょう。
民間の介護施設は高いものから安いものまでさまざまありますので、十分比較検討して選ぶことをおすすめします。(執筆者:特定社会保険労務士、1級FP技能士 菅田 芳恵)
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