毎月の給与は、「総支給額」からいろいろなものが引かれ、「振込支給額」が手元に残る金額となります。
引かれるものは社会保険料や所得税などさまざまな項目がありますが、今回は給与明細の振り込み支給額について解説します。
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本来の給与支給の姿
時代に合致していないとの声もありますが、労働基準法上では、給与については原則手渡しとなっています。
ただし、労使合意の元に銀行振り込みが認められるという建付けです。
社会保険料とは
社会保険とは広い意味では労働者に対する保険とされ、健康保険、介護保険、厚生年金保険、労災保険、雇用保険が含まれています。
この中でも最も高額な保険料に位置するのが厚生年金保険料であり、逆に労災保険は給与明細から保険料として天引きされることはありません(会社が全額負担)。
また、介護保険料は40歳以上64歳以下のかたを介護保険第2号被保険者と定義し、健康保険に加入している場合は、健康保険料とあわせて給与天引きされ、65歳以降は原則として年金から控除されることとなります。
健康保険、介護保険、厚生年金保険の特徴として、会社と労働者で折半して払うという特徴があります。
この中で最も高額な厚生年金保険料は料率にすると、給与相当額の18.3%となり、9.15%をそれぞれ会社と労働者で払うということです。
「給与相当額」と記したのは、厳密には、社会保険加入対象者は入社時等に決定される「標準報酬月額」に基づいて保険料額も決定します。
ただし、賞与の場合は、支給額が変動することが一般的で標準賞与額(支給額の千円未満の端数を切り捨て)に対して料率を乗じますので、支給額が増えれば増えるほど保険料も増額することとなります。
他方、給与の場合は予め標準報酬月額と保険料額が紐づいていることからたまたま残業などによって支給額が増えたとしても直ちに保険料が上がるということはありません。
長期的な視点
社会保険(健康保険、介護保険、厚生年金保険)に加入してしまうと手取り額が減ってしまうためにあまり働く時間を増やしたくないという声があります。
もちろん会社としても保険料の半分は負担しなければならないため、人手不足解消と引き換えに人件費が上がることは間違いありません。
しかし、所得税に着目すると、総支給額に対して所得税が決まるのではなく、社会保険料を差し引いた後に所得税額がきまりますので、社会保険に加入することで節税になるというメリットもあります。
また、節税だけでなく、厚生年金は我が国の年金制度の2階部分に位置付けられ、国民年金の上乗せ給付として、現行の法律では65歳以降に老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせて受給することができ、老後の所得保障にもなることから、この部分もメリットと言えるでしょう。
例えば民間保険に加入し、もしもの時の備えるという考え方もありますが、国の制度は強制加入ゆえに逆選択(加入するかしないかを選ぶ)が許されず、「スケールメリット」もあり、法律によって制度が創設されています。
よって、いきなり保障や制度自体がなくなってしまうとういことはほぼありません。
確かに年金制度の場合は、過去に多くの法改正が行われましたが、その際には経過措置が発動されていますので、直ちに損失が発生するということもありません。
一定の保険料の納付は必須
給与は支給されるものだけでなく、引かれるものもあり、あまりにも引かれるものが多いと就労意欲の足枷になるとの声もあります。
確かに雇用保険料を始め、近年保険料は上昇傾向にあります。
ただし、「保険」という制度の構造上、一定の保険料の納付は必須であり、長期的な視点と他のメリットにも着目することで納得感を得ながら働くことができるでしょう。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)
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