わが国の年金制度の1階部分にあたる国民年金は、20歳から60歳までの480か月間にどれだけ保険料を納めたかによって(国民年金制度から支給される)、老齢基礎年金額が決定します。
しかし、20歳と言えば、勉学に主軸を置いていることが多い大学生や専門学生の時期と重なります。
もちろん、昼間や夜間などさまざまな形態はあるものの、このような時期に活用が望まれる保険料の納付特例について解説します。
65歳になって年金の受給資格がない方が年金を受給するにはどうすればよい?
学生納付特例制度とは
20歳になると、国民年金の制度上は「第1号被保険者」となり、保険料を支払うべき対象者となります。
ただし、学生の場合は、今後社会に出ていくための必要な知識や技能を習得する必要性が高い期間であることから、自営業者等の他の「第1号被保険者」よりも保険料の納付が困難であることは想像に難くありません。
そこで、「学生納付特例制度」という制度があり、申請をすることで、在学中の保険料の納付が猶予されます。
学生納付特例制度のよくある誤解
学生納付特例制度はあくまで、老齢基礎年金の「受給資格期間」に反映されるだけであり、年金額が増えると誤解されていることがあります。
原則として65歳から支給開始となる老齢基礎年金は、20歳から60歳までの480か月間の保険料納付等の実績で決まる「フルペンション減額方式」が採用されています。
他の年金受給者目線でも、実質的に支払っていないにも関わらず、支払っているかたと同じ年金が支給されるのは制度の均衡性の観点からも疑問符が生じます。
もちろん、産前産後休業期間中の保険料免除制度は(厚生年金との均衡性との観点からも)免除期間に限り、保険料を支払わなくても保険料を納めた期間と同等の期間として扱われますが、学生納付特例制度については産前産後休業期間中の保険料免除制度とは異なります。
学生納付特例制度を活用することによる他のメリット
「若気の至り」という言葉があるように無茶をしやすい時期ともいえ、不慮の事故や病気によって障害が残ったときに(学生納付特例制度を申請しておくことで)障害基礎年金の受給の可能性が残ります。
障害年金も年金制度の一部であり、障害等級に該当していたとしても、全く保険料を納めていない場合は「保険料納付要件」を満たさず、支給対象外となることがあります。
他方、学生納付特例制度については、言葉を選ばず申し上げると、実質的に滞納期間と同様に保険料の納付はしていません。
ただし、制度上活用できる制度を申請している状態であり、「滞納期間」とはなりません。
学生納付特例制度の要件
学生納付特例を受けようとする年度の「前年の所得」が一定以下の学生が対象となり、家族の所得の多寡は問われません。
具体的な所得基準は「128万円(令和2(2020)年度以前は118万円)+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等」とされ、市区町村の窓口や年金事務所(一部の大学等も含む)でも申請が可能です。
学生納付特例制度を申請後の留意点
学生納付特例制度を申請しても年金額には反映はしませんので、「追納」と言い、10年間であれば学生納付特例制度の適用を受けた期間の保険料を納めることができます。
一般的には大学を卒業し、社会人となり(大学生の頃よりは)金銭的なゆとりが生まれることで、追納をする動きが多いように見受けられます。
年金制度の仕組みや活用法を子世代へ伝えていくことも大切
学生自身が、学生時代から老後の年金生活を見据えて生活しているケースはまれです。
他方、ご自身の子供に対しては医療の発展を契機として、現在よりも平均余命が延びることが予想され、将来困窮した老後生活を送ってくれることを願う親はいないと思われます。
よって、学生納付特例制度と追納制度の仕組みを活用すべく、後世に伝えていくことが望まれます。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)
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