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2023年夏のボーナスは「2つの重要な出来事」を基に運用先を決めよう


諸外国の中央銀行はインフレを抑えるため、政策金利(中央銀行が誘導目標にする金利)の引き上げを、2022年初め辺りから続けてきました。

例えばアメリカの中央銀行にあたるFRBは、2022年初めには「0.00~0.25%」だったFF金利の誘導目標レンジを、「5.00~5.25%(2023年5月時点)」まで引き上げしたのです。

一方で日本の中央銀行である日銀は、10年物の国債(元本や利子の支払いを国が行う債券)の金利を一定の範囲内に抑える、YCCという金融政策を実施しています。

つまりアメリカなどの諸外国は金利を引き上げしているのに、日本は金利の上昇を意図的に抑えたので、諸外国と日本の金利差が拡大していったのです。

これを受けて2022年中は急激な円安が進みましたが、財務省が為替介入を実施したり、日銀がYCCの変動幅をプラスマイナス0.25%から0.5%に広げたりしたため、年の後半に円安は落ち着いたのです。

しかし諸外国の中央銀行が政策金利の引き上げを続けても、思ったようにインフレは抑制されず、政策金利の更なる引き上げが必要になりそうなので、ここ最近は再び円安が加速しているのです。

円安ということは外貨高(例えば米ドル高、ユーロ高、豪ドル高)になるため、2023年夏のボーナスの運用先として、外貨建ての金融商品(例えば外貨預金)が注目されるかもしれません

外貨建ての金融商品は金利が高くて魅力的なのですが、円安外貨高から円高外貨安にトレンドが変わると、為替差損が発生して元本割れになる場合があるのです。

また現在は歴史的な円安外貨高になっているため、進みすぎた円安に対する調整が入って、ある程度は円高外貨安に戻っていく可能性があります。

このタイミングを狙って外貨建ての金融商品を購入すると、為替差損による元本割れが発生しにくくなるため、2023年夏のボーナスで購入しないで、もう少し待った方が良いのです。

運用先どうする?

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【重要な出来事1】10年ぶりの日銀総裁の交代

2023年に入ってから金融や経済に大きな影響を与える、2つの重要な出来事がありました。

そのひとつは2023年4月に、約10年に渡って日銀の総裁を務めた黒田東彦氏が退任し、植田和男氏が新総裁に就任したことです。

植田総裁になってからも日銀の金融政策は変更されず、従来の金融政策を続けています。

ただ2023年中や2024年前半辺りに、植田総裁がYCCの変動幅を広げたり、YCCを撤廃したりするのではないかという憶測があるのです。

これが実現した場合には、10年物の国債の金利が上昇する可能性があるため、2023年夏のボーナスでは、この恩恵を受けられる金融商品を購入しておいた方が良いのです。

その代表的なものは個人向け国債の中の、変動10(変動金利型10年満期)ではないかと思います。

個人向け国債には固定3(固定金利型3年満期)や、固定5(固定金利型5年満期)もあるのですが、変動10を選んだ方が良いのです。

この理由として変動10は半年ごとに、適用利率(直近の第160回は0.28%)が見直しされるので、YCCの修正や撤廃によって10年物の国債の金利が上昇した後に、適用利率が上昇する可能性があるからです。

植田総裁がYCCの修正や撤廃を検討しなくても良いくらいに、日本の景気が悪化してデフレに戻っても、変動10には0.05%という最低金利保証があるので、これ以上は適用利率が下がらないのです。

また満期の10年を迎える前に換金した場合、直前2回分の利子相当額が差し引かれるというデメリットがありますが、発行から1年が経過していれば、満期の前でも換金できます

【重要な出来事2】新NISAの創設

値上がりした株式や投資信託を売った時の譲渡益、これらから生じた配当金(分配金)には、原則として20.315%の税金(所得税、住民税、復興特別所得税)が課税されるのです。

しかしつみたてNISAや一般NISAを通じて、株式や投資信託を購入すると、これらの税金が課税されないため、税金として徴収される分を、手元に残しておけるのです。

つみたてNISAで投資できる年間の上限は40万円、非課税期間は最長で20年になるため、累計の非課税投資枠は800万円(40万円×20年)になります。

それに対して一般NISAで投資できる年間の上限は120万円、非課税期間は最長で5年になるため、累計の非課税投資枠は600万円(120万円×5年)になります。

ただ同じ年に両者の制度を併用できないため、つみたてNISAか一般NISAを選択する必要があります。

金融や経済に大きな影響を与える2つ目の重要な出来事としては、つみたてNISAと一般NISAと統合した新NISAが2023年3月に創設され、2024年から開始されることです。

累計の非課税投資枠はつみたてNISAが800万円、一般NISAが600万円になりますが、新NISAは1,800万円に引き上げされました。

また非課税期間はつみたてNISAが20年、一般NISAが5年になりますが、新NISAはこういった制限がなくなります

新NISAの開始によって、つみたてNISAと一般NISAは廃止になりますが、2023年までに投資した分に関しては、引き続き従来のルールが適用されます。

そのうえ2023年までに投資した分は、1,800万円の中に含めなくても良いため、2023年中につみたてNISAか一般NISAを始めれば、1,800万円を超える金額を非課税にできるのです。

こういった点から考えると、新NISAが始まる2024年を待つより、2023年夏のボーナスを受け取った辺りから、つみたてNISAか一般NISAを始めた方が良いと思います。

どの国の株が伸びても対応できる金融商品を購入する

一般的には投資期間が長くなるほど、運用成績が安定しやすくなるだけでなく、元本割れが生じにくくなります。

そのため投資の初心者の方が2023年中にNISAを始めるなら、非課税期間が最長で5年の一般NISAよりも、非課税期間が最長で20年のつみたてNISAの方が良いと思います。

また新NISAが始まった後も、一般NISAを引き続いた成長投資枠より、つみたてNISAを引き続いたつみたて投資枠を、重視した方が良いと思います。

2022年初め辺りまではアメリカ株一強という感じでしたが、ここ最近は日本株が再評価され、将来的にはインド株が伸びるという話があるのです。

こういった点から考えると、つみたてNISAで積立を始めるなら、アメリカ株、日本株、インド株、まだ注目されていない他国の株の、どれが伸びても対応できるような金融商品を、購入しておいた方が良いのです。

それは例えば「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」などの、全世界の株式を投資対象にした、低コストのインデックスファンドになります。

このような全世界株式のインデックスファンドと、前述した変動10を組み合わせると、シンプルな分散投資になります。

例えば積極的に資産を増やしたい方は、全世界株式のインデックスファンドの割合を増やし、安全に運用したい方は変動10の割合を増やすのです。

また配分が決められない方は、「100-年齢」を全世界株式のインデックスファンド、残りを変動10にするという資産配分を、検討してみるのが良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

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